『霊峰の血』(上)(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)読了

霊峰の血(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

霊峰の血(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

霊峰の血(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

霊峰の血(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

やっと読み終わった。前二作よりは早く読めたんですが。

(1)
前二作はランクルチャーター取材旅行、この作品は徒歩のトレッキング取材旅行。
そういう違いがあるような気がします。
主人公はクルマの運転ができないのですが、前二作は荷台や助手席、本作は徒歩。
そのせいでかなり読みやすかった。

(2)
前作から少し思っていましたが、作者は宮崎駿病かも。
活発な十代少女とオッサンの組み合わせが今回も繰り返されましたよ。
前作の、砂漠の嵐の中カザフ少女がトラック運転して主人公助手席シーンよりマシですが。

(3)
一作目で鳥葬従事カースト?二作目でチベット遊牧民ドクパと来て、
本作ではゴロクが出てきます。
あの、西川一三*1木村肥佐生*2にも出てくる、ゴロクです。果洛
アムドとカムの間で、なんか一段低く扱われている、ゴロ。
ゴロ出すんなら、ゴロに商品を供給してるサラール族商人ネットワークも出してほしかったな。
ボン教徒も最初ちらっと出るんですが、作者がその後忘れたみたいで設定立ち消え。
あと、青海省ということで、民国時代に移住してかなりチベットに同化した漢族も出てきます。
上記ふたりの本だと、民国時代の漢族は金鉱掘りに連れてこられて脱走した人たちですが、
そればっかりでもないでしょうということで、その設定はなし。

(4)
この話は、ラサまで鉄道が通じる前の話です。
でも、毛語録山積みのシーンとかは、ファックスのある設定の時代なんで、時代錯誤だよな。

(5)
人民解放軍駐屯地“温泉”が出てきますが、温泉は玉樹ルートの町で、
本作のゴルムド−ラサルートに同名の地名あるのかな?と思いました。
あるのかもしれないが、鉄道路線図のある今の地図を見て調べる気にならない。

(6)
http://www.eliotpattison.com/inspector.html
このシリーズではアメリカではあと4作出ていて、ボン教や主人公の息子、
ナバホインディアンとチベットの共通点など、いろんなテーマで続いてるみたいです。
でも、日本では本作で打ち止めみたい。
よっぽど売れなかったのか、
次作のナバホインディアンとチベットの共通点つうテーマが???すぎたのか…
とりあえず、もし次作以降も出すなら、
草思社で抄訳にして、ソリッドに贅肉をそぎ落として訳してほしい、と思いました。

第一作感想:http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20121112/1352731547
第二作感想:http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20121208/1354900522

*1:

秘境西域八年の潜行 抄 (中公文庫BIBLIO)

秘境西域八年の潜行 抄 (中公文庫BIBLIO)

*2:

チベット潜行十年 (中公文庫)

チベット潜行十年 (中公文庫)

チベット偽装の十年

チベット偽装の十年