『なれる! SE7 目からうろこの?客先常駐術』(電撃文庫)読了

http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4048868535/ref=dp_top_cm_cr_acr_txt?ie=UTF8&showViewpoints=1
ラノベの価値を認めてほしい若者と対話するために、どういうラノベを読めばいいのか、
という命題があり、わたしが悩んでるわけじゃないが悩んでいる人がおり、
ドラッガー女子高生マネージャーだけ読めばいいのか)
たまたま何かからこの本をAmazonが紹介してきて、レビューを読むと、
かなり現実によくあることらしいので読んでみました。
ラノベって、偏見持ってたけど、地に足のついた話も書けるのか、
なら、人生で大切なことは全部ラノベに教わったような口をきく若者や、
いやそんなこと言った覚えはありませんよラノベしか読まないのは事実ですが、
みたいな若者がいたとして、
(たぶん週刊アスキーも読むから、ラノベしか読まないということはない)
彼らを理解できるかもしれない、と、思いました。ウソです。

で、IT関連で絶望工場並みのルポルタージュはいくらでも書けそうなのに知らないし、
ラノベで初めて業界の暗部を手に取って読むことが出来たのでよかったです。
いくつかは知ったはなしであり、いくつかは初めて知るはなしのように思いました。
私も、この小説の、大濠という人なみの知識で、たくさんの大濠のような人たちと、
侃々諤々のやりとりを繰り返してきたような気がします。
ファシリティーは、一番実業に近いし、目に見えて分かりやすい部分が多いので、
下記のようなウナギ会話はあまりしなくて済むところがよかったので、
もう少し関わっていきたかったのですが、ゼネラリストは、無理さ。

頁146


「今日のテスト……この絵でいうと、どこからどこに通信する感じですか?」
「んー?」
 大濠がメモを覗き込んだ。眉根を寄せしかめっつらになる。
「この真ん中の四角がファイアウォールです。ホスト名はext-fw-01、上側のインタフェースが外方向で……多分他の業者さんに繋がってるんじゃないでしょうか。で下が内側、それぞれ先にあるサブネット……アドレス情報を記載してあるんですけど」
「………」
 工兵の説明に、だが大濠は渋い顔のままだった。しばらくして大きく首を傾ける。
「ホスト名とかサブネット情報とか言われても……よく分からないですねぇ。もっと全体図みたいなものがあれば答えられるかもしれませんけど」
「あるんですか?全体図」
「大崎に戻れば」
「………」
 怒っちゃだめかなぁ。だめなんだろうなぁ。
 工兵は忍耐強く質問を続けた。
「じゃあせめて通信元と通信先のアドレスだけ情報もらえませんか?IPさえ分かればファイアウォールのルーティング設定を探れるんで」
「アドレス……も分かりませんね」
「何なら分かりますか?」
 食い下がる工兵に大濠は口元をへの字に折り曲げてみせた。
「いや、アタシそんなややこしいことお願いしてるつもりないんですけど。アプリが通信してる時にネットワークでエラー出てないか確認してもらいたいだけですよ。それにそんな細かい情報必要なんですか?」

大濠さんも、かつては地方国立大理系ゼミを優秀な成績で卒業してたりしたのかなあ。
それとも、企業スポーツの選手かなにかから引退して頑張ってる人なのかなあ。
このラノベの読者は、みんな数百人月のデスマーチが現在進行形とかのセリフが普通に理解出来るんだなあ。
この小説は、ラノベでなくても書ける小説と思いましたが、ラノベで書かれてよかったと思いました。陰鬱さがライト。
初めてラノベ、というか電撃文庫を読んだ感想です。
むかしの朝日ソノラマ文庫や集英社コバルト文庫ラノベでいいのかな。
角川スニーカー文庫ガンダムの富野監督の小説読んだけど、ラノベなのか。

あと、結末についてですが、単なるIT大企業と、ITゼネコン普通のゼネコンひっくるめて面倒みてるコングロマリットとでは、また抗争や派閥も違う気がします。本文中でも、単なる利潤追求型IT企業と、「政治」を優先させるタイプのスケールの大きい組織複合体を分けて説明していますが、やっぱそうだよ。