- 作者: 南條竹則
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/04/15
- メディア: 新書
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人生の残された時間とか、自分の生涯賃金とか、独居老人とか、
いろいろ明確になってくるお年頃の方が、
こころの矜持を保つために、まあ、書物、歴史を友として余生を過ごす。
という決意と宣言の書です。
現世の友人とカラオケや回転寿司に行くだけでは物足りない、だめ。
先人の例を引きつつ進んでゆく本です。
心を病んで発作を起こす姉の世話をしながら独身の生涯を歩んだチャールズ・ラム。
戦国の貧乏公家ながら信長秀吉を精神的に超越した源氏物語注釈家九条稙道。
無神論者ヒューム。
頁143
時代に取り残された人間は悲しい。
新時代に順応して生きろなどといわれても、虎は鼬にはなれない。鶴は雀にはなれない。貴族は武士にも平民にもなれない。そんなものになったら、もう自分は自分ではない。自分が自分でなくなるくらいなら、死んでしまった方が世話がないが、死ぬこともままならぬので、オメオメと生き恥をさらしている。
この人は、自分が逆だと考えたことはないのだろう。
鼬もまた、虎にはなれない。虎は鼬を食うが、鼬が虎を食うことは出来ない。
霊魂の不滅についてのヒュームの説明を作者が訳した箇所。
不滅などということがもしあるのなら、万人が不滅でなければならない。だが、人類の大部分は、ろくすっぽ知的能力を持ち合わせていない。十時になるとジンでへべれけに酔っ払う担ぎ人夫も不滅でなければならない。あらゆる時代のクズどもが保存されねばならず、そういう数限りない連中を収容するのに、新しい宇宙を創造しなければならなくなる。
悪人正機とか嫌いなんかこの人、て感じの文。
こういうの読むと、
この人が赤羽とか立石とかの大衆呑み屋に詳しくなる方向にならなかったのは、
それなりの必然、なんかベクトルとか空気が合わなかったんだな、と思います。
でも、浮世床の孔糞先生みたいなポジション、
長屋の貧乏知識人もまた楽しいってことは、
たぶんお分かりになられてると思います。改めておしまい。