- 作者: 阿来,山口守
- 出版社/メーカー: 勉誠出版
- 発売日: 2012/04/16
- メディア: 単行本
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いつか続刊出来ればいいのですが。勿体ない。
頁412 解説 山口 守
なお、最後に特記しておかなければならないことがふたつある。ひとつは、チベット人、チベット族という呼称についてである。これは作品翻訳や評論のための便宜的な呼称であって、政治的に何かを主張したいわけでも、本質主義的な概念規定を意図しているわけでもない。こうしたチベットの問題はチベットの人々が自らの自由意思によって決めるのが当然である。もうひとつは、本書の人名・地名表記についてである。チベット社会を描いた物語であり、また非漢族の漢語文学という特性もあるので、原則として漢字では表記しなかった。
ひとつめ、聞いた覚えがあります。
あるおめでたい席で、湖南省の日本語教師が、
「族」は国内民族、「人」は独立民族を指す呼称なので、
チベタンに関してはチベット族と呼ぶのが正しく、チベット人と呼ぶのは誤り、と、
居並ぶ日本人チベット人を絶句させる珍説を展開、
チベット人と漢族が日本語で大口論という、
おめでたい席台無しのKY事件があったと聞きました。
結構それに類した話があるんでしょうかね。
日本語でエスニシティーに対し「族」って本来使わない、が正解だと思います。
異言語からの翻訳で、漢族とか、ナバホ族とか、ヨルバ族とかの時だけ使う。
元の言語の漢字とかトライブという単語とかに引き摺られる感じ。
朝鮮人と言わず朝鮮族と言うと中国国内居住の朝鮮人を指したりしますが、
これは、ちゃんと翻訳せず中国語の言い回しをそのまま横着して使ってるだけ。
中央アジア在住の朝鮮人をカレイツイと書いても注釈付けないと伝わりませんが、
厄介なことに漢字は意味が通じるから、そのまま書いたりしちゃうんですよね。
ふたつめに関連して、この本では、漢族の人名表記がピンインのカタカナなので不満です。
薄熙来にボーシーライとルビ振る朝日新聞みたい。
でも朝日新聞も周恩来はしゅうおんらいと読ませる。
改革開放以降読ませ方を変えてるようで、さらに言えば、新しい人でも、
王毅みたいに、
昔からのルール(漢字文化圏の人名はそれぞれの発音で読んでよい)が分かってる人は、
従来通り、おうき。ワンイーじゃない。
楊逸みたいな新中国人はそのルールを知らないから、自分で、ヤンイーと読んで、
と主張して、日本人がそれに合わせるということになる。よういつでええねん。ホンマは。
朱建榮や孔健は知ってて、モーバンフは知らんわけやろ。そのルール。
毛丹青になると、この名前知ってる日本人はたいがいチャイ語かじったぁるから、
もうたんせいでもマオダンチンでも全然違和感なくなってまう。
日韓の場合は、韓国は日本の人名地名を日本語読みしてるのに、
日本は韓国の人名地名をハングル読みしてなかったので、
向こうから申し入れがあって日本でも李承晩をイ・スンマンとか、
朴正熙をパクチョンヒとかハングル読みするようになったのですが、
日中の場合は、中国は日本の人名地名を中国語読みしてますから、
日本も中国の人名地名は日本語読みでいいと思いますよ。
英字新聞の中国関連のスペルで悩むのは、いっしょでしょ。
成都をせいとと読んでもチョンツーと読んでも、CHENGDUの表記で面食らうのはいっしょ。
ペキンベイジンダブリンリベリア♪
脱線しましたが、この本、老魏(ラオウェイ)という人が出てくるのですが、
「老」を訳さずそのまま使ってるのは、ちょっとよく分からないと思いました。
魏さん、と日本語にしたらダメなんだろか。
で、作者の別の小説のタイトルを、『塵おさまりて後』と、
日本語にちゃんと訳してますが、原題そのままですでに訳されてるわけですから、
それそのまま使えばいいのに、とも思いました。
- 作者: 阿来,西海枝裕美,西海枝美和
- 出版社/メーカー: 近代文芸社
- 発売日: 2004/02
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で、今検索するまで、季刊中国現代小説第Ⅰ巻第21号通巻21号の『松茸(磨姑)』を、
この作家の作品と思い込んでました。なんでだろ。阿城という別作家だった。
どちらも牧田英二訳だからごっちゃにしたのかなあ。
ザシダワとは、さすがに混同しませんでしたが。
阿城のほかの小説が読みたいです。誤解が直ったので、そう思います。
『空山』の内容は、莫言とかもよくやる、叙事詩です。以上。付け加えることはない。
この作家の父親が回族だって初めて知りました。
このへんから省境越えて青海省に行くと、
1950年代は頻々と中共に対する回族の蜂起があったんですよね。
そういうのもいつか書ける日が来ればいいんじゃない、と思いました。
温泉は中国語でウェンチェン。