『泥酔懺悔』読了

泥酔懺悔

泥酔懺悔

眠いので、あとは後報で。
【後報】
Web連載のリレーエッセーに書き下ろしひとつ加えたとの由。
ネットのレビューでは、酒の失敗談が読みたいのに少ないので物足りない、
との評がありました。が、執筆陣は知識人なので、
問題飲酒のその先を見据えているな、と思い、そこは気になりませんでした。
執筆陣のうち、下戸2名。中野翠と中島たい子。
三浦しおんは、下戸の家族とのかかわりを執筆。
ほかにも自己の飲酒歴を幼少期家族関係から掘り起こすエッセーがあり、
院内ミーティングなんのプログラムか、と思いました。
男とのかかわりで酒を描いたのは2名。山崎ナオコーラ大道珠貴
後者はピンで酒場本を書いています。*1
みなさん知識の裏付けがあるな、と思ったのは、例えば下記。

頁172「損だけど」角田光代
 しかしながら、私は酒にかんして弱点がある。
 飲みはじめたら、途中でやめるということができないのである。どうしてもどうしても、できない。それこそ二十年近く、きりのよいところで飲むのをやめようと試みて、できない。逆立ちで歩けないように、できない。とことん飲むしかない。
 そして、とことんへの過程で、記憶がなくなるのである。ある一定量飲むと、その後のことを覚えていない。

(中略)
 一時期、私はこのくよくよがあんまりつらくて、酒を飲むのをやめようかと思ったことがあるくらいだ。もちろん、やめられなかった。
(中略)
 なくすものも多い。友情や信頼をなくしている場合もあるのかもしれないけれど、私の周囲には寛容な人が多いのか、そのことをわざわざ告げられたことは一度もない。私への信用や友情を失った人は、きっとこっそり黙って見捨て去ってくれるのだ。
 なくすものは、もっとはっきりわかる物品である。

最近のWeb連載は検索に引っかからないようになっているので、
もっとはじけてもいいかとは私も思いましたが、自分のことであれば、
そして自営業であるわけなので、そこで神妙になれるスキルが備わっているのだ、と思います。
でなければ、淘汰される。

頁73「ザル女という噂」室井滋
 朝までずっと飲んでいられる。日本酒でも焼酎でも一升飲んでも一応大丈夫です。
「じゃあやっぱり酒豪女じゃん!」という声が聞こえてきそうだが、ここからが少々違ってくる。分かり易くこの先はQアンドA形式で進めることにしよう。
Q あなたは毎晩、お酒を飲みますか?
A いいえ、私は毎晩は飲みません。
Q 自宅で晩酌にビールやワインなども一杯も飲まないのですか?
A はい。お客様がある時は別ですが、普段の生活の中ではほとんど家では飲みません。
Q 本当ですか? 随分イメージと違いますけど…
A 家で飲むのは本当に時々です。それも極めて少量。食事に合わせてディナー気分を味わいたい時だけ。二週間に一度くらいのもんです。
Q 意外ですね。飲みたくならないんですか?
A 家ではちっとも。毎日することが多いので、酔ってられません。
Q スタジオで撮影が終わるや否や自販機に駆けて行って缶ビールを開けてらっしゃる女優さんをお見かけしますが、あなたもそう?
A いいえ。仕事の帰りにスタッフと居酒屋に寄ることはあるけど、仕事場では飲みません。

明らかに久里浜式スクリーニングテストをやったことがある、と思いました。

久里浜医療センター|久里浜式アルコール症スクリーニングテスト
http://www.kurihama-med.jp/alcohol/kast.html
久里浜式アルコール症スクリーニングテスト - e-ヘルスネット - 厚生 ..
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-026.html
誤飲というか、善意による地獄への導きについて。
(この場合の地獄は、誰にも認識できない死後のソレでなく、生きてるうちに陥る生き地獄です)

頁74「ザル女という噂」室井滋
 OL役の私が同僚としこたま飲んでヘベレケに酔っているという夜のシーンを撮影していたのだが、本番になってグラスの中身が変っていた。
 さっきまでノンアルコールの『バービカン』というビール色の飲み物だったのに、何と今度は本物が入っているではないか!?

以下後報。タイムアウト
(2014/3/1)
【後報】

頁77「ザル女という噂」室井滋
Q その、スタッフの女の子もやっぱり誤解してる?
A してる。私を根っからの酒好きと思って、大喜びするはずと思って、サービスしてくれたんですもん。もし私が“クサヤ好き”との情報を得ていれば、彼女、早朝だろうが何だろうが、しっかりクサヤを焼いたはず。そのくらいの勢いがありましたよ。
Q 肝臓が強いのが噂を呼んでる?
A でも、いつもいつも大酒飲んで大丈夫なわけじゃあ。私、「今日酔っちゃおう〜」と思えばシャンパン二杯でいい調子になれちゃいますから。
Q 酔うの?
A 酔いますよ。酔って楽しくなる。でもそれはお酒じゃなくてもなれるんです。ジュースでもお茶でも。だから日常的にずっと飲もうとは思わないんです。
Q アルコールに依存する習慣がないんですね。
A イエス! アルコール依存度は0だと思います。私、明日この世から何かの都合でお酒が無くなっても、禁酒法の時代に戻っても何も困らないですもん。そりゃあ寂しいけどね。

室井さんは健全な酒飲みで、楽しい酒。負の酒は飲みたくないとし、
負の酒を飲む友人から毎晩電話があった時のエピソードを語ります。
上の「クサヤ」は、最初から「ヤ」の字が入っていたのか、気にならないでもないです。
別に酒だけじゃないですね。依存は。そして問題行動は。
アル中だけに行政の支援があるのは、酒税法で賄えるからでしょうか。
なんてくだらないことを考えてしまいます。

頁38 「下戸の悩み」中島たい子
「中島さん、お酒だめですよね。なにか飲みます? ウーロン茶?」
 と聞かれて、昼もろくに食べていなかった私は、さすがにブチッと切れた。ウーロン茶だとぉ?
「んなもん飲まないっ。ごはん! ごはんちょうだい、米つぶのごはんっ!」
 かなり大きな声で返したもんだから、場は一瞬シーンとなった。皆は口々に店員を呼んで、至急、この人に温かいごはんを持ってくるように! と頼んでくれた。私は不機嫌なまま、皆のツマミをかき集め、それをおかずに黙々とごはんを食べ続けた。茶碗が空くと、誰かが速やかに、まるで酒を注ぐように、お代わりを頼んでくれた。後にも先にも、あの時ほど気分が良かった酒の席はない。

(同日)

【後報】

色ざんげ (新潮文庫)

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(2014/3/6)