- 作者: ジュール・ルナール,岸田國士,Jules Renard
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1973/07/01
- メディア: 文庫
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岸田国士じしんは「ルナアル」と記しています。
でもアマゾンの人のおかげで、英文読みでは「レナード」扱いだと分かりました。朝。
『酔っぱらい読本』*1の誰かのワインエッセーにこの本が出て来たので読みましたが、
ワイン全然関係ありませんでした。題名しか知らない状態で箔付けに使ったのかな。
シャトー・ラフィット・ロートシルトのロートシュルトはロスチャイルドのことだ、
なんて文章でこの本を登場されても、全然関係ないものは関係ない。
徳富蘆花の『みみずのたはごと』*2みたいだな、
と思いながら前半読みました。
あるいは、田山花袋の『田舎教師』の田園、羽生とか行田とか加須とか。
あるいは、ギッシングのエッセー、いや、ギッシングはこういうの書いてないか。
ギッシングが書いているのは、南イタリアにはマラリアがあるとか、そういうことだったはず。
前半はそういう農村スケッチなのですが、後半はよく分からない散文になって、
中野重治くらいしかそういう散文詩は読んだことがないので、
だからワインはどこなんだと困惑しながら読み終わってしまいました。
頁52
裏の畑で仕事をして汗をかいているので、ぶどう酒を一杯持って行ってやると、それを受け取りはするが、まず、水を一杯くれと言う。彼は喉のかわきを水でとめる。それから、楽しみにぶどう酒に口をつける。
この本の質素な農民は生水をよく飲みます。エビアンとかでない生水。
それが井戸水なのか川の水なのかは書いてない。
昔、引越しバイトで、谷あいの農家でトラックが入れず、
リヤカーで車の入れる道まで家財道具をピストン輸送したことがありますが、
その引越し家族の戸主が、咽喉が乾いたろうと言って、
焼酎の水割り梅入りをいきなり持ってきて閉口したのを思い出します。
しかしこれ、金持ちは生まれつき金持ちで、
貧乏人とは遺伝子レベル?で違うと信じてる農民(頁36)とか、
いつの時代かと思いました。
十九世紀末、おフランスの、日本が坂の上の雲だった頃のエッセーなんですね。
(というか、どちらかというと八か国連軍、蒼穹の昴の前の日清戦争の頃)
まことに小さな国が開化期を迎えようとしている――のはどうでもいいのですが、
当時のフランスは革命起こして起こして、
パリコミューンのあとの第ナントカ共和政ですから、
そんな農民まだいるのかよ、ウソだろ、と、眉唾でした。ふしぎだなあ。
でも、そういう観察を熟成させて、
ピエール・ブルデューの文化資本みたいな考え方が出てきたのかもしれない。
そういうもので、因果は巡るのでしょう。
文化資本
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E5%8C%96%E8%B3%87%E6%9C%AC