- 作者: 阿部なを
- 出版社/メーカー: 鎌倉書房
- 発売日: 1985/05
- メディア: 単行本
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- 作者: 阿部なを
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/05/01
- メディア: 文庫
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鎌倉書房の本は、作品社の酒エッセーアンソロジーの参考文献でもよく出てくるので、
読まんならんと思ってましたが、この本が最初に読んだ本になります。
作者は厳しく伝統を仕込まれた方ですが、アーティストだからか、戦争耐乏生活を凌いだからか、
非常に柔らかい考え方も出来る人で、頁47で、稗と米を半々で炊くひえめし(胡麻と醤油、
松の実で味付け)を紹介するところなど、ぶっとんでしまいました。
冷めたら喉を通らないと聞いている稗を、料理に昇華させることに執念を燃やすなんて、
シンジラレナイ〜です。
- 出版社/メーカー: 長谷製陶(Nagatani Seitou)
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糸底の横にあいている二つの穴に金串を通して器ごと火にかざして、
味噌を焼くようになっているそうです。
頁123で、大根葉と魚のアラ肉の炒め煮を、
お互い捨てられるべき運命のもの同士の、暖かい味わいが出ます。
と、書くところなど、ぞくぞくします。そのセンスあっての今日の料理出演なのだと納得。
頁138
人形づくりが料理を始めたのですから、けっしてプロになるなぞと思ってもおりません。自分のおもむくままのものをつくりたいという人形づくりの精神を断ち切って、料理に切り替わったとは思いませんでした。一人の人間の感性が形をかえて生きるのだと、私は自分にいい聞かせていたのです。そう思わねば悲しかったからでしょうか……。
花を食べるということもごく自然のことでした。
花の美しい色が見過ごせず、畑をつくっていますと、芽出しから花が咲き、実るまでの間をみんな食べてやるのが楽しいことでした。
頁141
私は食用菊の産地生まれでしたので、花を食べるということはごく自然なことでした。菊の大輪をいただいた時も、あまりの見事さに日数がたっても捨てられずに、食べました。花弁が袋状になっているせいか、煮減りせず、べたつかず、歯ざわりもよくておいしかったのです。
孫も手が掛からなくなって、独り食卓を囲む、寂しい、けれど自由な心境を綴って、
了としていますが、この強さに圧倒されて本を閉じました。