『まほろ駅前多田便利軒』 (文春文庫)読了

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

町田がモデルということで、一度読んでおきたかった本。
でも、直木賞受賞してるとは知りませんでした。

「バスターミナル。横中バスの定期券発券所近く」(頁211)などはすぐ分かりましたし、
アムステルダムで会った日本人で、飾り窓をいっしょに冷やかした人が、
何故か早朝そこを歩いているのにでっくわしたことあったなあ、
などなど思い出しました。
でも、コーヒーの殿堂アポロンなどは全然ぴんと来ませんでした。

食べログ【閉店】コーヒーの殿堂 プリンス
http://tabelog.com/tokyo/A1327/A132701/13060443/

三浦しをんさん原作「まほろ駅前多田便利軒」映画化−瑛太さんら町田でロケ
http://machida.keizai.biz/headline/704/

高原書店でアルバイトをしてたとは、知りませんでした。

便利屋さんがなんでもハンズで仕入れるシーンは、
昔のハンズは確かになんでもあったけど、割高だから、
建具屋さんや左官屋さんが利用する街の金物屋のほうがいいのに、
と思いました。でもそういう腕があるのに、建具屋などで一本立ちせず、
ともすれば、仕事がいいかげ…とみられがちな便利屋でやってるのは、
何故なんだろう、とも思いました。

多田さんの過去の話は、ああ、やはりそっちへ行くのか、行くんだな、と思いながら読みました。
悲しかったです。中途半端な善意は、いつも地獄への道を舗装する。
ほかに思いついたことがあれば後報で。そういえば、行天はぎょうてんラーメンですが、
多田さんの多田はどこから来た多田なんだろう。と思いました。

【後報】

頁60
 まほろ市は東京の南西部に、神奈川に突きだすような形で存在する。東京の区部から遊びにきた友人は、まほろ市に都知事選のポスターが貼ってあるのを見て、「まほろって東京だったのか!」と驚く。地方に住む祖母は、何度言い聞かせても、「神奈川県まほろ市中町一丁目23 多田便利軒様」という宛名で手紙を送ってくる。
 まほろ市の縁をなぞるように、国道16号とJR八王子線が走っている。私鉄箱根急行線は、まほろ市を縦断して都心部へとのびている。まほろ市民は、これらを「ヤンキー輸送路」と呼ぶ。
 まほろの夜は、ヤンキーであふれる。
 東京と神奈川の周縁部に住むヤンキーたちは、「東京に遊びに行くべ」と言って、16号を盗んだバイクで疾走し、あるいは、八王子線や箱根急行略してハコキューに大挙して乗りこみ、一路まほろを目指す。まほろ市民は、「16号は六本木につながっている。ハコキューは下北沢を通る。まほろで妥協しないで、もうちょっと先まで行ってくれればいいものを」と思っている。

郊外ヤンキーが東京に行くと称してまほろを目指す、はウソ。
まほろのヤンキー(鶴川とかの)に、多くの善良な神奈川県民が悩まされている、
が正しい。江の島に来なくていいですよまったく。
ただし、129沿いと横浜の重量バイク愛好家たちは別かな。
ここで書かれてる「16号」は、六本木に通じているのなら、246のことだと思われます。
16号は六本木に通じてないでしょう。

ただ、現実の横浜線沿線の大学や、小田急多摩川以西相模川以東の学生は、
コンパというと、何故か町田に集まるようなので、それはうざいかも。

で、この小説にも、今で言うJKが登場し、
往年の国士舘サッカー部事件や、
悪の教典のロケ地が野津田高校だったことなど思い出しますが、
この小説では、まだそれはマイルドに、ソフトに描かれます。
学割の効くピンサロが地元名士たちの間で大問題になった話などは描かれません。
私は機会あるごとに書きますが、郄村薫推理小説断筆の契機となった、
八王子スーパー射殺事件を想起させる話もないです。
(2014/7/17)