- 作者: 中野重治
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五勺 =
90.19500 ミリリットル
一合五勺という熟語はどういう意味ですか? - 国語 - 教えて!goo
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/5328823.html
一升の1/10が一合、一合の1/10が一勺です。
坂口安吾 二合五勺に関する愛国的考察 - 青空文庫
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講談社文芸文庫の著者目録には、
戦前、警察に製本中押収された際一冊だけ押収を逃れた本が
戦後発刊の詩集の底本になったとあります。初めて知りました。
岩波文庫版もその流れなのかどうか、記憶にないです。
- 作者: 中野重治
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2002/09/18
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逆にいえば、邪宗門とか、小説は、開いても没頭せず、閉じていた。
なぜだかは分かりません。中国関係の文章はちょこちょこ読んでいた気がします。
で、この本は、「酒」というキーワードでひっかかっただけなので、
普通に読み始め、読み終えました。
配給のお酒、といっても戦後、新憲法制定祝いの特配のお酒を90ml飲んでくだをまく
普段は温厚であろう市井のインテリ、という話です。戦後間もない頃なので当然左巻き。
頁13
もともと僕は酒好きではなかった。学生時代君らと飲んでも格別うまいとも思わず、酒が飲みたいともさほど思わなかった。いまは飲みたい。じつに酒が飲みたい。
頁14
酒は飲むとも飲まれるなというのの反対、飲まれたいという欲望だ。教師生活、戦争生活、最初の妻の死、再婚、大きくなる子供たち、玉木の死と、よし子の、出もどりでなく、何というか、肩も腰も石をみたようになり、そして一ぱいの酒が飲みたい。訴えようのない、年齢からもくる全く日常的散文的ないぶせさ、とかく一ぱい飲んで、とかく寝てしまいたい。酒飲みには別の飲み方があるか知れぬが、僕はそうだ。職責(?)がら国民酒場の行列には立たぬが、ああして並んで、恥も外聞も忘れたように待っている人生の敗残者といった人たちに面をそむけて僕は同情する。
酒毒に捉まるのにウヨもサヨも関係ない、と思いつつ、
それでも所謂ロマンチストwであるところの、
おカツの人たちの、酒に甘い思考について、想いを馳せずにいられませんでした。
山口瞳も書いていた気がしますが、
それまで飲酒喫煙の習慣がなかった人間が、配給があったために、
習慣化する、という話を裏付ける小説のようにも思います。
また、人間、中年を過ぎると、それまでの年輪の澱が溜まって来て、
そこに酒があると(限度を超えて、或は恒常的に)手を伸ばしたりする、
(酒害を知らないか、軽視しているがゆえに)と思いました。
下記はそれとは違いますが、うなづいた部分。
頁38
何よりもあれを止めてくれ。圧迫されたとか。拷問されたとか。虐殺されたとか。それはほんとうだ。僕でさえ見聞きした。しかし君自身は生きているのだことを忘れないでくれ。生きている人よ、虐殺された人をかつぐな。生きていること、生きのびられたことをよろこべよ。
頁38
このことを考えてみてくれ。たくさんのわる気のない青年が、こちらから拷問し、暴行し、虐殺しさえしたのだということを。
頁39
彼らは、殺されなかったということそれ一つでいま生きているのだ。たくさんの人が殺されるのを見てきた。たくさんの仲間の死骸を捨ててきた。場合いかんでは殺しさえして生きのびてきたのだ。そのことを知り、しかも彼らには、彼らを正しく支える精神の柱が与えられていなかったのだこのことをよく知ってくれ。
頁39
死者をおそったそのものに君自身がどう対したかをしらべずには決して死者を誇るな。
そのとおりと思いました。
堺雅人の『リーガル・ハイ』に出てくる人権派弁護士は、
カップ酒を好んでいましたが、なんとなくそれを思い出しました。
短編集なのでほかの小説もありますが、
戦後にはなったが農地改革前のいなかの奉公にでもでるしかない子ども、
兵役中の話、戦後のインテリ
(頁155 さすがに図書館関係には、アメション*1種属は全く見られなかった)、
などの雑多な話でした。
『萩のもんかきや』は、萩には家紋を布類に手書きで書きつける商売がまだあって、
戦後職業婦人が在宅でそれをしているのを主人公が見た、という話。
萩は、萩焼きみたいに、武士が商業に広く進出してまた保護もされ市場競争にも勝ち、
わざと刀で斬り込みを入れて士農工商の士と工の違いを出したのかなんだか忘れましたが、
そういう「刀傷」が特徴と、修学旅行で習いましたが、
Wikipediaの萩焼に全く刀傷の説明がなくて笑いました。黒歴史でしょうかw
あの頃は新渡戸稲造が五千円札になるとは想像も出来なかった。
高杉晋作との絡みは忘れましたが、
戊辰戦争の勝ち組でありながら戦後待遇の不満から萩の乱、
という歴史を想起しつつ世界戦争敗戦後の萩の小説を読んだ、という感じです。
以上