『So Young 〜過ぎ去りし青春に捧ぐ〜』(原題:致我們終將逝去的青春)劇場鑑賞

公式:http://www.alcine-terran.com/soyoung/
百度百科:http://baike.baidu.com/subview/1152550/7293261.htm
http://images.rednet.cn/articleimage/2013/04/01/1500384061.jpg下記の評を読んでいたので、
少し覚悟して観に行きました。

中国・本の情報館〜東方書店
中国映画のコラム 第1回
俳優から監督へ 水野 衛子
http://www.toho-shoten.co.jp/movie/m201409.html
『So Young』について、私が前半の大学生活を描いた部分は出来がいいけれど、後半が冴えないと正直に言うと、どこがダメか、と真剣に聞いてきた。

個人的には、後半ダレた感じは
しなかったです。寧ろ、前半の、
左のポスターのような、
紋切り型の前世紀末中国に対し、
新幹線の走る当代中国を描かなければ
ならぬ、みたいなヤーリー(圧力鍋)が
あるんだかないんだか、と思いました。
(新幹線は出ませんが、高速道路有)
http://i.imgur.com/4Ezv7Cc.jpg
趙薇自身旦那はシンガポーリアンだし、
旦那からその手の「遅れてるなあ」
的なこと言われるかもなので、
「ねばならぬ」。

在日中国人がNHKかなんか見て、
ぼそっと「なぜ外国のテレビは
中国の遅れた所ばかり
映したがるんだ?」と言うのに
近い心情が、後半を建立した
と思います。

左のポスターくらいキッチュ
描いてほしいということかと。
たぶん。違うかな。ベンシエ
ルオホウダディーファン
ルオホウダディーファン
"甭写落后的地方"

交替でお湯を汲みに行くカイシュイピン、
ホーロー引きの食器、洗濯石鹸。
但しブラウン管テレビやファミコンは、豊かな沿海部の大学だけだった、と思います。
そういう生活スケッチも、コンピュータグラフィックスを使うと、見違えると思いました。

貴州の安順でロケしたそうですが、趙薇の出身地安徽省蕪湖にも似て(黄山に行く途中見た)
みる前は北京を舞台にしたドラマと思っていましたが、
セリフでも、年上の幼馴染に、
"我考上了,我可以到你在的那个城市上大学了"と言っているので、
台北京ではないと分かりました。某都市、です。
ただ、so youngのsuedeがコンサートするのは北京で、
そこだけ北京のシーンなんですね。イエモンのソーヤングだったら上海だったかも。

北京に進学した趙薇がかつてのクラスメートの消息などから夢想した、
地元に進学していたらこうなっていたかもの自分、のドラマのようにも思いました。
あるいは、自身のJK時代を、そのままだと検閲があるので、大学に置き換えた。
(そんなインタビューもあったような)
中国だからJKとは言わないでしょうけれど…女高中生だからNGとでも略すのかな。

山の郵便配達のような美しい田舎のシーンは出さないぜという覚悟を感じました。
少数民族プイ族の女の子が出て来て(クラスメートでいちばん美人で酒飲み)、
国慶節に彼女の田舎に遊びに行く、的なセリフがありながら、
バカの一つ覚えみたく民族衣装着て風雨橋で歌垣みたいなシーンは入れない。
(風雨橋で歌垣はトン族ですが)代りに水族館で海豚と戯れます。
美しい田舎の場面でなく、格差社会中国、コネ社会の苦悩を描きます。
(あくまでライトにですが)描かねばならぬ、だと思いました。
http://i02.cztv.com/hainapic/201304/68/6962596944290321056.jpg
安徽省というのは、三毛に出てくる生大蒜食べる大道芸人とかそんな感じで、
上海のゴミ収集や夜鳴きワンタンの屋台は、出身地を訊くと大概安徽省
そんな時代もあった、というような省です。
この映画に上海色はありませんが、それとは関係ないと思います。
主人公が広東語で歌うのがよかった。流石'90。
香港の張学友とか、昔はようさん日本の歌パクったはった。
それを大陸の子が広東語で覚えて歌ったはったんにゃ、と思います。

「人」をヤンと読んだり、「一生」をヤッサンと読んだり、
二人称が「レイ」だったりするので、広東語と分かりました。そのレベル。

模造記憶としては、よくスナック菓子を食べてますが、
口寂しい時はヒマワリの種だろうと思いました。当時は。

男子寮に女子が入るのはこんなもんだろうと思いますが、
(恥云々は無論あるでしょうが)女子寮に男子侵入はもっとガードがあった、
と思います。

三か所くらい日本語の挿入がありますが、
「オバサン(歐巴桑)」なんて台湾人以外分かるのか、
と思いました。模造記憶ではないか。

英語しか喋ってはいけないイングリッシュコーナーのシーンがあります。
中国の大学には必ずある。
海外公費留学が実力よりコネなのは、日本の国立大学に来る留学生も同じ。
受け入れ側永遠の悩みの種。

主人公を演じた女優さんは、喋り方が監督に似ていると思いました。それが重要。
昔、猟奇的な彼女を見た時、ハングルってこんなにキュートな言語だったのか、
と感動しましたが、この映画の主人公の台詞はいいです。
シナリオがあればほしいけど、原作小説だと同じ節回しの台詞なのか不明。

シャオペイは小北なので、シャオベイと表記したいのですが、
ダメなんかなあ。でも、下記の結論部分は、ちょっと。
やっぱり、日本では日本漢字で読みたい。もうたくとう、とうしょうへい。
中国で日本人の名前日本語読みしてくれない以上、それはそうするしかないです。

http://www.toho-shoten.co.jp/export/sites/default/toho/toho376-mizuno.pdf

そのシャオペイがキレるシーンですが、
いきなりキープクールかよ、と思いました。

キープ・クール [DVD]

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下記の本によると、一人っ子世代の甘やかしもあり、
中国青年のこころの病気率はすごいそうですが…
関係ありませんが、初版とその後の版で、黄文雄の登場シーンが違う気がします。
初版は少し、なさけない感じで、その後修正された気がします。
マンガ中国入門 やっかいな隣人の研究

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  • 作者:黄 文雄
  • 発売日: 2005/08/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
よく酒を飲む映画だと思いました。
日式イジャカヤで徳利と銚子とか、あるんだなあと思いました。今は。
で、中国なら白酒の乾杯地獄というイメージでしたが、それはなかったです。
これもまた模造記憶なのか。
http://www.zt360.cn/UploadFiles/cz/2013/5/2013050712180098246.jpg
公式を開けてしまうとネットの広告がこればかりになってしまい、
不思議だなあ、と思っています。

【後報】
鑑賞前の雑考
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20140913/1410560135
主人公が歌う歌が紅日なのも、男優が台湾だったり韓国で活躍した中国人だったりするのも、
張開の初期の喋り方がチャウシンチーの國語吹替を意識しているようだったりするのも、
しんみり訥々と語るラジオDJも、
こまかい遊びだな、と思いました。中国もまたメタファーの多過ぎる国。
赵薇の趣味ではない気もするので(もう少しシンプルに、竹を割った性格だと思うので)、
監督の名義は赵薇初監督でも、それは話題作りで、フィクサーいるんじゃないか、
とは思いました。とはいえ、さっきもようつべで、
全字幕入りのナントカ法アップロードNO MOREナントカ泥棒見つけたので、
ああこれ削除されるまでにセリフ写せば台本いらんな、と思い、
複製満開の21世紀に中華世界でクリエイターやることの苦労をしのびました。
(2014/9/18)
【後報】
下記の投稿の方の仰る通りです。

映画.com
http://eiga.com/movie/79274/review/0698129/
Yahoo!映画
http://movies.yahoo.co.jp/movie/So+Young%EF%BD%9E%E9%81%8E%E3%81%8E%E5%8E%BB%E3%82%8A%E3%81%97%E9%9D%92%E6%98%A5%E3%81%AB%E6%8D%A7%E3%81%90%EF%BD%9E/347180/review/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%AE%E6%99%82%E4%BB%A3%E8%83%8C%E6%99%AF%E3%82%92%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A8%E5%8E%B3%E3%81%97%E3%81%84/3/?c=2&sort=lrf
この時代と関わって来た日本人は「あるある」感満載で楽しめるが、そうでない人には、映画の中で語られるエピソードが何を意味しているのか解らず、今の時代との対比もできず、

この方の指摘した日中と中欧の「契約」概念の相違に関するエピソードは、
本当にそのとおりなので、
映画の主人公そのままの媚にやられない欧米に学ぶべきと思います。

あと全然関係ないけど、ヴィッキー・チャオのデコっぱち顔を見ると、
この人モンゴルの血を引いてるんじゃないかといつも思う。
モンゴル人と他の黄色人種の外見上の違いはおでこが盛り上がってるかどうかだと、
いつも根拠なく思っているので。以上
(同日)
【後報】

流してしまい説明不足でしたが、上の動画は、大事マンブラザースバンドを歌うシーンで、
主演女優がキレた演技をするため酒を飲んで演じたところ、
監督から、なるべくその手法は使うな、溺れるから、と叱責された、という談話です。
(2014/9/23)
【後報】
映画の主人公は赵薇ではなく、原作小説では、もっとブチ切れて我儘支離滅裂とのことですが、
でも映画を見ると、自分の魅力を自覚的に武器に使うそのうまさは、
中国人女性が第二の性として普遍的に獲得する武器、とも言えますが、
やはり趙薇のそれを連想してしまう、そういう演じ方です。
(2014/10/2)