『美酒楽酔飲めば天国』読了

美酒楽酔飲めば天国

美酒楽酔飲めば天国

すいません、眠いので後報にします。
【後報】
世界の盟主名酒事典はおおむかし新宿の酒屋でバイトしていた頃、
バイト先に置いてあったのを店番がてら読んだことがあります。
チャーチルが絶賛したというアルメニアンコニャックなんかがちゃんと載っていて、
ページを開いてふーんと思ったりしていた。
世界の名酒事典 2015年版

世界の名酒事典 2015年版

世界の名酒事典 2014年版

世界の名酒事典 2014年版

検索CD-ROM付き 世界の名酒事典 2008-09年版

検索CD-ROM付き 世界の名酒事典 2008-09年版

公式:http://meishu.kodansha.co.jp/
FB:https://ja-jp.facebook.com/meishujiten
改めて検索してみると、検索用にCD-ROM付けてみたり、
スマホアプリ化してみたり、ツイッターからFBまで持ってみたり、
伸縮自在に動いてる感じでした。21世紀のコトテンは大変だと思います。
アルメニアンコニャックもついでに検索。

アララト (ブランデー) Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%A9%E3%83%88_(%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%BC)
Wikipediaに公式のリンクがあり、
お酒のサイトだから自己申告による年齢確認を経て入るのですが、
国・地域をまず選択させるのが不思議で、
国ごとの飲酒可能年齢のテーブルなんか作ってメンテ出来るのか疑問でした。
生年はともかく月日まで入れさせるのもなんかアレだなあと思い、
最初に回教国を選択して遊んでみたら、以後テキトーな生年の入力が受け付けられず、
国をアメリカやフランス、日本にしても同様で、入れなくなってしまいました。
時間を置いて再度、国名を正直に選択したら入れましたので、
IPアドレスで国・地域の判別でもしてるのかしらん、と思いました。
いずれにせよ、誕生日まで入れさせるのは、あまり好ましくないと思います。

次は、目次を写すところから続けます。
(2014/10/20)
【後報】
講談社サイトにもアマゾンにも目次がないので、筆写します。打ち込みは筆写とは言わないか。
で、バラバラに記載されている初出年をミックスします。

序章 『世界の名酒事典』とその時代―すべては洋酒への憧れから始まった 山本 博
第一章 美酒を語る―座談の名手、今夜もパワー全開
世界の酒について 阿川弘之+開高 健(一九八〇年版所収)
酒の中にこそ真実がある 丸谷才一小田島雄志+和田 誠(一九八六/八七年版所収)
第二章 酔いを楽しむ―名酒にまさる芳醇滋味のエッセイ
甘口馬鹿 埴生雄高(一九八七年版所収)
うすけぼ 田村隆一(一九九三年版所収)
からみ酒に真あり 遠藤周作(一九九五年刊所収)
味・色・形の博覧会 阿刀田 高(一九九七年版所収)
蘊蓄男 北方謙三(一九九八年版所収)
第三章 現在を飲む―情報多発信、疾駆する酒・ワイン
今宵ムートンを語りムートンに酔う 吉行淳之介堂本尚郎+山本 博(一九八二/三年版所収)
ワイン元年、ニッポン 山本 博(一九九九年版所収)
レア、カルト、超高級ワイン偏愛講座 葉山考太郎(二〇〇〇四年版所収)
第四章 蘊蓄に酔う―遊び・ユーモア・歴史が育む美酒
カクテル・エイジ夜話 海野 弘(一九九一年版所収)
初級ビール学入門 赤瀬川原平(一九八九年版所収)
雑談 中国の酒 陳 舜臣(一九八二/三年版所収)
第五章 酒界を論じる―酒文化を思想として語る試み
酒書彷徨 麻井宇介(一九八九年刊所収)
我らの「飲みよう」はいかに変わったか 麻井宇介(一九九六年版所収)
昭和・平成「洋酒史年表」

まず、ダジャレがよかったです。

頁52
小田島 ぼくは落語に出てくる酒でいちばん好きなのは、都々逸で「お酒飲む人花なら蕾、今日も咲け(酒)咲け明日も酒」って、あれはきれいだね(笑)。

頁60
丸谷 戸坂さんはなかなか才能があるんですね。ほら、奥さんの何十歳かの誕生日のお祝いにシャレを一つ贈り物にして、「老婆(ローマ)は一日にしてならず」って(笑)、誕生日の贈り物として実にしゃれてるでしょう。
小田島 南悠子さんという宝塚の、今はもう教えてる人なんだけど、この人の四十歳の誕生日に「四十にしてマドモアゼル(惑わず)」ってね。これもやっぱり傑作だろうなあ。

頁66
小田島 昭和二十七年にまだぼくが英文科の学生だったときに、ある友人が戦争中のコニャックを見つけた。日本製で「皇国の興廃この一戦にあり」、あの「皇国」という名前のコニャックが出てきた。で、コニャック・パーティーやろうっていうから、行こうっていったら、そばにいた女子学生が「おめでとうございます」って言うんだ。「何が?」っていったら、婚約パーティーと間違えてた(笑)。

頁81
小田島 酒乱というのがあるでしょう。こういうやつにかぎってふだんは非常に人がいいんで、「酒乱(知らぬ)が仏」という(笑)。
丸谷 ノーベル賞くらいの出来だよ、今のは(笑)。
小田島 ところがほんとにそのよかったやつが、ちょっと入って酒乱になると、もうしょうがないから「酒乱がほっとけ(仏)」(笑)。
丸谷 前のほうがよかったな(笑)。前のがノーベル賞、あとのが芥川賞クラスだ(笑)。

タモリのエピソードもよかった。

頁68
和田 タモリが酔っぱらってテレビに出たことがあって、それを批難する投書がいっぱい来た。
小田島 というのがあったね。
和田 タモリが、「こういう投書がいっぱい来たけれども」と言って、カメラに向かって「シラフでテレビを見るな」って言った(笑)。これはちょっと傑作だった。
小田島 うーん、うまいね。
丸山 いいなあ、テレビってそんなもんだろう(笑)。

この話も興味深かったです。

頁80
小田島 ぼくが最初にイギリスに行ったときに、日本人の酔っぱらいと向こうのアル中というのはこうもちがうのかと思ったのは、パブで飲んでたら明らかにアル中のじいさんが入ってきて、ツカツカとバーテンのとこに行って「ビア」カネ出さないんだ。そうするとバーテンが「ノー」。そしたらこう見回して、カウンターだけじゃなくてテーブルもいくつかあるパブで、前の客が帰ったあとそのままになってる。で、店はバーテンしかいない。そしたら黙って皿とかコップとか運んで、ふきん持っていってテーブルふいて、それをバーテンは黙ってるわけね。それが終ったところでまたカウンターで「ビア」、黙って一杯飲ませるわけ。「サンキュー」って出ていく。毎日あれやってると思うのね。日本だったら「今日もよろしく」とかいって、最初から片づけ始めてはじまると思うんだけれども、これはイギリス人だなあと思った(笑)。

小田島さんばかり。次は狐狸庵先生。

頁108
 友人のフランス人、G・ネラン神父は、
「日本人は、酒の席でなければ真実を語れない」
と云っていたが、なるほどと感心している。

次は海野弘

頁190
 最初の電気冷蔵庫は一九一三年にシカゴでつくられ、一九二〇年代に一般の家庭に入っていった。いつでも冷たいものが家庭で飲めるという快適な生活は、飲食のスタイルも大きく変える。ホーム・バーによるカクテルがはやってくるのである。

アパートの鍵貸しますなどのアメリカ映画に出てくる冷蔵庫を見て、
1960年の日本というと冷蔵庫どこまで普及してたかな、と思ったことがあります。
その後、冷やさない常温コーラを愛飲するカナダ人に出会って、
また別のカルチャーショックを受けましたが…

ビールは、前世紀ですから地ビールなんてなくて、メーカーの力が強いので、
あまりうまく書けないのじゃないかと思っていて、だから編集者も、考えて、
歯に衣着せぬ老人力を選んだのだと思いますが、ビール工場見学という、
或る意味提灯記事パブ記事の呪縛から逃れることが難しいテーマを振られ、
そこで天才がもがくとこうなるだろうみたいな文章でした。

頁196
 そのようなビールであるから、そのおいしさを百とすると、八〇くらいまでがシチュエーションの力だと思う。つまり環境というか、イキオイというか、高い気温、喉の渇き、肉体疲労、仕事の一段落、楽しい仲間、がっしりしたテーブル、持ちやすいグラス、心地よい質感、そしてその中味の液体の適度な冷やされ方、と揃ったところでグーッと飲めば、もうそれだけで八〇パーセントは間違いなくうまい。
 残るのは二〇パーセント。そのくらいがビール本体の固有の味に関わる問題ではないのだろうか。
 そこがウイスキーやワインなどと違うところだ。ウイスキーであればそのおいしさの八〇パーセントぐらいまでがウイスキー本体の品質に関わるもので、グラスや氷や気温などのシチュエーションの役割は二〇パーセントぐらいのものではないか。

この本の冒頭の対談は阿川弘之開高健ですが、ぶっちゃけ開高健がかなり傍若無人で、
十歳年長の阿川にかなりぞんざいな口をきいており、酒のせいなのかなんなのか、
しかも阿川が兵役で滞在していた中国絡みでしつこいので辟易しまして、
何が大兄だハングルのヒョンのつもりか漢語使うなら
「兄」でなく「哥」使うくらいしてくれ、と思いながら読んだのですが、
本の後ろのほうに陳大人が寄稿していて、これでバランスが取れてほっとしました。
大人は、酒の詩は、曹操の短歌行を挙げています。
北京語

広東語(どこがどこだか、ネイティヴに聞かないとさっぱりです)

何以解憂 惟有杜康
何を以てか憂いを解かん、惟だ杜康有るのみ

直球で「酒」と書いた詩でなく、「杜康」で攻めてきた。

Yahoo!知恵袋 唯有杜康 (唯だ杜康有るのみ)これはどんな意味か教えたください。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1058398010

頁212
 酒については、日本人と中国人というよりは、民族をこえた個人差のほうが大きい。中国に酔っ払いはすくないというが、泥酔を許さない社会習慣があるので、酔っ払うと人目を避け、裏道を通って帰ったりするので、すくないようにみえるだけである。日本では酒のうえということで、ちょっとした不始末は許される傾向があった。中国では、酒に酔って不始末をするような人間は信用できないといささかきびしい目で見られるのだ。

最後のウスケ先生の二つのエッセイは、後者は『酒・戦後・青春』*1と重なる部分も多いですが、
前者の酒書彷徨は、タイトルにおじぬ凄いエッセイでした。邦人だけでも、
山本千代喜、脇村義太郎、十和田一郎、坂口謹一郎青木正兒、鯖田豊之、
池本喜三夫、谷泰、増田四郎、飯沼二郎、中尾佐助
角山栄、浅尾勝美、長有坂芙美子、藤田本太郎、
洋書だと、Alfred Barnard http://en.wikipedia.org/wiki/Alfred_Barnard,
André Simon http://en.wikipedia.org/wiki/Andr%C3%A9_Simon_(wine),
George Saintsbury http://en.wikipedia.org/wiki/George_Saintsbury,
パスツールのÉtudes sur le vin, ses maladies, causes qui les provoquent, procédés nouveaux pour le conserver et pour le vieillir (1873),
https://archive.org/details/tudessurlevins00past
Jean Antoine Chaptal http://fr.wikipedia.org/wiki/Jean-Antoine_Chaptal,
Wikipediaに項目のないJ.A.Nettletonという人の
"The Manufacture of Whisky & Plain Spirit (1913) ",
Hugh Johnson http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3_(%E8%A9%95%E8%AB%96%E5%AE%B6),
Pamela Vandyke Price
Wikipediaに項目なし(削除?)
http://www.theguardian.com/lifeandstyle/2014/feb/04/pamela-vandyke-price,
etc. etc.
Wikipediaに項目のない方もたくさん、たくさん登場し、渉猟の果てに作者が実感した、
構築された伽藍、歴史の積み上げに思いを馳せることが出来るようになっています。
ひさびさにボディのある酒の本を読んだ気がしました。
装丁も、いま祖父江慎むかし和田誠をしみじみ思い返せるいい表紙で、
こういう似顔絵っていいよな、と改めて思います。
タッチは似せれても、似顔の特徴の掴み方、
本人の嫌な特徴のはずでも本人に嫌がらせない掴み方、までは余人の追随を許さない。
(2014/10/21)