『スピードボート』読了

スピードボート (1980年)

スピードボート (1980年)

http://ecx.images-amazon.com/images/I/51sNVLpog9L._AA160_.jpg常盤新平村松友視が、
エッセーで紹介してた本。
小説ということでしたが、
スケッチというか、散文です。

私も個人的にこういう
短文を書いて同人誌に
出したことがあり、好きですが、
他人に余韻を残すという点で、
このジャンルでは、山本周五郎
青べか物語』など、すごいのがあるので、
この作品は、うすいというか、
ドライだと思いました。

Speedboat (NYRB Classics) (English Edition)

Speedboat (NYRB Classics) (English Edition)

青べか物語 (新潮文庫)

青べか物語 (新潮文庫)

作者 Wikipedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Renata_Adler

頁15 いま、ここでは…
朝は八時に起きる。この頃は、十一時前に一杯飲むことがとても多くなった。ある面で私は、人生の的を射損じたのだ。

頁69 静かに
私が働き始めたころ、彼は、私をアルコール中毒だと思った。彼はそのことを最終稿を書いている男に話し、その男がまた報道室のスタッフに話し、彼らがそれを文化部のスタッフに話した。アルコール中毒だと評判になるのは、それほど迷惑なことではない。が、できればそんな評判はたたない方がいい。彼が昼食を御一緒に、と言うので、喜んでお伴した。彼はスタンディッシュ・ホーソーン・スミスといい、両親はポーランド出身。私たちはギリシャ料理のレストランに行った。席に坐るなり彼は、私の手をとり、ウィルとは離婚したのかと尋ねた。どう答えてよいかわからないので、彼の仕事のことに話題を向けた。彼はただニタニタするだけだった。そして「何を飲む?」と訊いた。「何もいらないナッシング」と答えようとして、はっとした。ナッシングというのは、アルコール中毒者が囚人護送車の中で呼ばれる名称ではないか。それに、いつもの水割りでもまずいと思って、ウゾを注文した。アルコール中毒者がウゾとは、彼も驚いたことだろう。私は二杯飲んだ。

向こうのアル中は病院や施設でなく刑務所で自助グループにつながることが多いと、
かつてアメリカ人から聞いたことがありますが、そういうことなのかな、と思いました。
それほど迷惑なことではない、というのがあちらの社会の許容度なのか、理解度なのか…

全然どうでもいいことで、アルドゥ、という男性が登場しますが、
中国語の「耳朶」の発音に似てるので、中国系かと思いましたが、説明はありませんでした。
以上