『銀座八邦亭』読了

読んだのはハードカバーです。

銀座八邦亭 (文春文庫)

銀座八邦亭 (文春文庫)

作者 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E7%94%B0%E8%AA%A0%E5%90%BE

『銀座 名バーテンダー物語』*1に出てくる小説。短編集でした。
表題作に若き日の古川緑郎氏がモデルの人物が登場しています。
お客の四組も入れば満員になるが、出前で食っていけてる洋食屋なんてのは、
もう成立しないんだろうなあ、と思いました。
前世紀だったら成立するのかといえばそんなことはなく、
終戦時、お店は焼け残っていたが、再開することなく、店の人は何処かへ消えた、
とあります。命脈は、もはや尽きていたようである(頁26)と。
主人公の、出前持ちの孤児を残して。

上記洋食屋の長男が、酒乱として設定されています。
次の作品は、作者の長兄と、草野球で助っ人やってる人物が、
酒に溺れている人間として語られています。
長兄なので、大きいにいやの略で、オキニ。
やさしくすれば、すぐにつけ込もうとするオキニの手口に、どれだけ悩まされたことか。(頁79)
助っ人の人は、マンシュウに行くと言って物語から消えますが、
長兄は病室の床でも最後まで上記のように依存ゲームを他者に仕掛けて、息絶えます。
次の話は、噺家と谷町の話で、アル中は出てきません。
オキニと同じ略し方で、おめかけさんが、おめかと略されています。
次の話は、寸借詐欺の話ですが、やはり酒で態度が変わる男が出てきます。
その次は魚河岸を中心とした話で、酒でお店をひらく間隔があき、
ある日死ぬラーメン屋が出てきます。
その次の話は、処女作から直木賞受賞までの作者の日々で、漢詩の戯訳

頁193
 酒人某出扇索書 菅茶山
一杯人吞酒
三杯酒吞人
不知是誰語
我輩可書紳
 一杯 酒はのむがいい
 三杯 酒にのまれるな
 誰がいったか忘れたが
 胸におぼえの二日酔い

日記

頁194
十一月六日 終日雨
漢詩戯訳稿 オ蔵ニスル
午後 酒

頁197
昭和五十九年一月一日
酒一滴モ吞マズ越年
何ヲ書クノカ

などの記述があります。酒に関する記述は全体の一部なのですが、
どうしても私はそこを見つけてしまうようで、上記の感想となりました。以上