『カップヌードルをぶっつぶせ! - 創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀』読了

ハードカバーを読みました。
なんとなく、図書館のお酒の本の棚を見に行って、隣の食品の棚にあった本。
カップヌードルCMとメイキングが収められたDVDが付いていたそうですが、
図書館では中央公論新社に確認の上、DVD貸出は出来ないとしていました。
いちおう出版年を見ると、百福さんの台湾の娘さん騒動*1のあとですが、
一切触れてません。でも図書館にあったの二刷りだったので、よく売れたんだなと。

著者
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E8%97%A4%E5%AE%8F%E5%9F%BA

池田出身で、慶応大学に入るまで一貫して附属の池田小中高と通っていたみたいですが、
たくまの事件に関する記述はないです。
創業者は異能の人で二代目は普通の人、創業と守成、どちらが難しいかというと、
どちらも難しい、という本です。これもロクに触れてませんが、
長男が社長をリタイアして後を継いだ次男、ですから、形式的には三代目か。
二代目が短期政権だったから、なかったことにして、著者二代目でいいのかもしれませんが。
創業者のチキンラーメンカップヌードルに対し、UFOどん兵衛ラ王行列のできるシリーズ具多、
というところに目を奪われてはいけなくて、
チキンラーメンが2003年にナマタマゴがうまく乗っかるくぼみをつけたこと、
(CMどおりにタマゴが乗らないとの視聴者の声から、
 ブランドマネージャーが当時存命だった百福にまで根回しして改良GO)
などの記事に着目しました。この、ブランドマネージャーというのが幹部候補として
おのおの製品開発にしのぎを削り、別のブランドマネージャーの製品を改良したりした、
というのが面白かったです。
で、各地区の営業トップの頭越しに開発(BM)が取引先とやりとりしたり、
営業トップは自分の判断で特定のBMの出した製品を置かなかったり、カオスw
関西で長らくカップヌードルのチリトマトが売られていなかった理由は、
こういうところにあったのかな、と思いました。それは書いてませんが。

ただ、開発が寝技能力のある営業を中抜きにして顧客と直接やり合うと、
開発費がいくらかかるのか分からない夢みたいな製品をえんえん作ったり、
(勿論顧客が買える値段になるはずもないので顧客は買わないし、
 それに対し顧客に放言責任はないが、開発は近視眼になってそれが見えない)
こころないコンシューマーのひとことで簡単にナイーブな設計者のこころが折れたりしますが、
あんまそこは書いてなかったです。
机上の空論商品はちゃんと社内プレゼンで一蹴できる健全な社風なのかな。
後者に関しては、下記があった。

頁112
 変人は特化した技術や技能を持っているが、人を束ねて組織をマネージメントする仕事には向かない。そこで変人であっても、とくに高い技能を持った人たちの将来の道として「マイスター制度」を作った。役員や執行役員にはなれないが、マイスターに認定されると、専門分野で後輩の指導に当たり、技術を伝承すると同時に、処遇面でも優遇措置が取られる。年齢を重ねて多少変人としての切れ味が悪くなってきたからといって、使い捨てるようなことは絶対しない。

私の職場にもマイスター制度ありますけど、ちょっと違うかな。
幹部予備の段階の人が、褒賞を順番にもらうシステムにしかなってなくて、
欠点と長所が同居する人のモチベ保持の助けとしては機能してない。
マイスター推薦には、結局職場の人間関係、
「和」の中にいれる人が暗黙の条件になってるかな。しょうがないですね。
どんな制度も運用次第。

グローカリゼーションの説明とか、その中で、頁225で、キムチラーメンの、
農心の辛ラミョンについて、
いろいろ研究してみたが、この味わいをわれわれ日本人が再現するのは大変難しい
と言っていて、へえと思いました。
でも、その代わり、蒙古タンメンセブンイレブン限定で定番商品になってますよね。
http://img.7netshopping.jp/bks/images/i3/00336604.jpg
http://www.7netshopping.jp/food/detail/-/accd/2110150323/

著者が、社長になった当初、創業者に対抗するため、瀬島龍三の勉強会、
「草萌会」に通うという展開が、またよかったです。
危機管理の心構えくらいしか学ばなかったようですが、
瀬島龍三の名前のインパクトで父親の権力に対抗し、
父親も間接的に瀬島の教えにライバル心を燃やしたというのがすごいと思った。
「おわりに」で著者が謝辞を述べた相手のなかには、
三菱商事伊藤忠のお歴々が鎮座しています。

以上、おしまい
【後報】
ユーフォー大盛りは円盤型の容器を捨てて四角くしています。
今回のペヤング騒動の機に乗じて、大盛り二つ分の横長の容器に、
大盛りの麺と調味料を二つ入れた、超弩級大盛りを適正価格で売れば、
ペヤング難民は名を捨てて実利につく多数と、潔く餓死する検事の少数派に分かれますので、
商機と思うのですが、さて、やらないのかなあ。やらないか。
それだけペヤングの超大盛りのコスパは他社の追随を許さなかった。
悪名を乗りこえ、はやく復活してほしいです。

(2015/2/5)