『昭和キャバレー秘史』 (文春文庫 PLUS)読了

昭和キャバレー秘史 (文春文庫 PLUS)

昭和キャバレー秘史 (文春文庫 PLUS)

作者のWikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E5%AF%8C%E5%A4%AA%E9%83%8E
銀座の本を読んでると、参考文献としてちょいちょい出てくるので、読んでみた本。
どうもキャバレーという形態には全く縁がなく、
街を歩いていてもまず見かけないので、読んでも分からないまま終わりました。
戦前のカフェが戦後キャバレーやアルサロになって、
キャバレーはダンスホールがあることが条件なのに、大衆キャバレーというものが出てきたと。
そこまではなんとか分かりました。スナックやクラブ、ラウンジとは違うと。
で、はっきりとは書いてませんが、競合店舗としてピンサロが出てくるので、
やはりキャバレーは、抜きを忌避するタイプの水商売なんだな、と思いました。
キャバクラは出てきませんが、ホステスが月給制じゃないってとこが違うのかな。
むかしのアルサロみたいな。ただしアルサロはピンサロとニアイコール視、
混同されるだろうから、キャバクラという名称が新たに定着したのかと。
作者は、銀座ハリウッド開店時、驚く勿れ世界の三バカと銘打って、
万里の長城
戦艦大和
銀座ハリウッド

この三つを並べたそうです。(頁201)確かに固定給の女の子を三百人とか百五十人とか
置いてるわけだから、大企業というか、大鑑巨砲主義というか、
のちのキャバクラ、さらにはガールズバーと、
少ない坪数少ない経費でより利潤を挙げようという、
コスト主義からは出て来ない店舗形態がキャバレーなのかな、と思いました。
嗚呼!!花の応援団 1 (ホームコミックス)

嗚呼!!花の応援団 1 (ホームコミックス)

私がキャバレーで思い出すのは、青田赤道が酔って店内で性器を露出する場面や、読まなくなった後なのですが、めぞん一刻で伍代くんが勤める託児所付の店とか、
そういうものです。この本が、そういう漠然とした私の理解を補完してくれたわけでもなく、
例えば力道山のリキパレスは譲渡後のことしか出て来ないとか、
現在あちこちでまだ見かけるUK首都と同名のチェーンも出て来ないとか、
いろいろ欲求不満になる本でした。社交タイムスという業界紙の鏑木啓輔という人の遺稿が、
かなりの部分元になっているようなので、作者(とその前名の近衛千代麿)が
三人称で登場するのはそのせいかと納得しました。
汪精衛のコックだった蔡世金、歌舞伎町を作った台湾華僑林以文、同じく洪仁榮など、
華人の名前がよく出てくるのはなんとなくうなづけました。
キャバレーには、あまりがっついてない、悠揚迫らざるイメージがあります。
他に中華関連の記述は、RAAの本部が当初銀座七丁目の中華料理「幸楽」にあった(頁89)、
武蔵小山商店街は珍しい商店街そっくりの満蒙開拓団で、ほとんど荒野に骨を埋めた(頁42)、
あと、中華じゃないけど、花形敬に斬られた白系ロシア人“百軒店のジム”(頁165)。
胡桃沢耕史清水正二郎名義のころに、お寺の坊さんでキャバレー経営者の、
鈴木直平という人物を本に書いたそうですが、(頁130)検索しても分かりませんでした。
あと、昭和三十四年に全焼した新宿角筈のダイフクと言う店は、
「軍隊キャバレー」だったそうですが(頁152)、それってなんだろう、と思いました。