へんな名前のパブのミステリーシリーズ
第六弾。
http://www.closedpubs.co.uk/lancashire/oldham_helppoorstruggler.html
訳者あとがきによると、"struggle"の訳語に苦労したあげく、「悶える」にしたそうです。
私もいま検索して、「悶える」でなく「もがく」ではないかと思いましたが、
「もがく」だと口語的すぎるのかな。作品の背景にある思想として、
旧約聖書の、アブラハムが我が子をいけにえとして山に連れて行く箇所がある、
そうですが、まるでぴんと来ませんでした。前作のエルサレム・インにしろ、
啓典の民の骨肉に沁み込んだ何かを、理解するのはたやすくないです。
また、訳者は、アメリカの雑誌記者が、作者がイギリスの古いパブの名前を
使い尽してしまわないよう祈ってる記事を引き合いに出していますが、
それより先に極東の漢字仮名入り混じり文の膠着言語国で、
邦訳が打ち切られてしまうとは予測出来ていたでしょうか。あり得る話だけれど、
天が落ちてくるのを心配していても仕方ない、といったおももちだったのではないか、
と思います。カバーの煽り文句によると、今回の舞台は、
バスカヴィル家の犬の舞台と同じダートムアで、しかし本文には、ホームズ云々の記述は、
ありません。(あるのかもしれないが、私には分かりませんでした)
モリー・シンガーという女性の裕福な生活費がどこから出ているのか、
隠れ酒、ブレーキのかからない飲酒になりかけの状態(頁93,103)なのに、
なぜ美しいのか、また犯人の導入部の犯罪動機はなんだったのか、など、
読み終えても、分からぬままでした。本の構成は、初期作品に比べ、
章立ても細かく整理区分され、ラスト一気にジェットコースターという、
スピルバーグ&ルーカスのアメリカならでは、おしなべてそれ、になってますが、
それだけに分からぬ点が分からぬまま、昔気質のデカがジュークボックスを粉砕して、
湿った歌謡曲の息の根を止めて劇終だったのは、少しさびしいです。
そういえば、ハードボイルド・デカなのに、パブでは自家製シードルばかり飲むのも、
不思議でした。以上、どっとはらい
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表紙はいつものごとく和田誠。何かに基づいた絵のはずですが、
原題で画像検索して類した画像が何も出て来ないと、お手上げです。
エルサレム・インと異なり、旧約聖書の絵でなく、明確に中世イギリス人ですよね…
本文中の富豪貴族アッシュクロフト家はポーランドが元祖とのことでしたが、
全然関係ないでしょうね。この絵と。
(2015/4/8)