『黒岩重吾長編小説全集15 花園への咆哮 北満病棟記』読了

どの巻も表紙は同じなので、アマゾンの検索結果URLを貼ります。
http://www.amazon.co.jp/s/?ie=UTF8&keywords=%E9%BB%92%E5%B2%A9%E9%87%8D%E5%90%BE+%E9%95%B7%E7%B7%A8%E5%B0%8F%E8%AA%AC&tag=googhydr-22&index=aps&jp-ad-ap=0&hvadid=23738045911&hvpos=1t1&hvexid=&hvnetw=g&hvrand=5943606656826459974&hvpone=&hvptwo=&hvqmt=b&hvdev=c&ref=pd_sl_2zy26p0ge1_b
光文社サイトに、全集の紹介ページでもあれば、
そのURLを貼ってオワリでしたが、なかったので。

デビュー作『北満病棟記』を読みたかったので借りました。
解説の尾崎ホッキ秀樹によると、
週刊朝日の読者投稿入選作3つのうちの一つだったとか。
ほかの二つが、事実をキロクとして後世に伝えたい、残しておきたい、
という衝動からの投稿だったのに対し、本作はプロ志向というか、
記録でなく、作品として残しておきたい意図で書かれたということです。
なので、内容はフィクションだと作者は後述している由。

軍隊生活での要領の実践として、結核感染者の痰を自分のとすりかえ、
レントゲンも鉛筆の粉末を入れた紙袋を胸につけて撮影し、
まんまと病院暮らしにありついたはいいが、劣悪な環境に愛想を尽かし、
また、本文ではあまり具体的に書かれていませんが、
当然患者との同居生活でホントに感染したらどうしようとの不安もあったはずで、
そういうところをはあとふる売国奴と突っ込まれたら誰だってイヤなので、
それでフィクションと声高に吹聴して回った、気がします。

美人看護婦はズーレーというか百合なのかと思ったら、
八路に逃亡してしまうし(インテリのひとつのパターン)、
別室のガタイのいい患者は、新人同居者の食糧はガメるわコキ使うわ、
はては同居者のオカマを掘るわで、昔ドヤで見た手配師を彷彿としました。
法の秩序なぞなんとも思わない奴が禁治産環境に身を置くとそうなる???

で、ホッキさんによると、この体験は『病葉の踊り』、
さらにはソ満国境からの脱出に至る『裸の背徳者』に継承されるとのことなので、
そちらも読まんならんのかと、ちょっとげんなりしました。
黒岩重吾の小説自伝は、これで打ち止めにしたかったので…

この本のメインは『花園への咆哮』で、ページのほとんどはそれですが、
こちらは商社を舞台にして、左遷管理職が、職業婦人や後妻候補の出戻り、
JKやJCの娘、バーのマダムなどに囲まれながら、
虚々実々の企業活動や再出世のエサの中を泳いでゆく話で、
そのままマンガのプロットにしてジャンプの新連載プレゼンにかけても、
勝ち抜けるよな気がするお話でした。

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

山田風太郎とかもすごく構成を練った上で小説にして発表してるし、
むかしの娯楽大衆小説家の、「これでメシ食う」執念はすごいと思います。
今は、その執念をかけて発表した小説誌を誰が読むねん、の世界だから。
難しいなあ。『花園の咆哮』も、クライマックス、
部下を道具としてしか見ない上司に反発して青臭い行動に出た主人公は、
バレて仲間に裏切られ退職に追い込まれ、しかも懲戒扱いで退職金もらえなくなりそうで、
一体どうなるのかと、ちゃんと山場盛り上げてゆきます。
素晴らしいですね。以上
【後報】
頁149に羌という中国人が出てきますが、姜ではないのかと思いました。
(2015/5/1)