『あん』劇場鑑賞


公式⇒http://an-movie.com/
アベノミクスと戦うデフレTopValue商品でお馴染みイオン皇国のイオンシネマは、
毎週月曜はハッピーマンデー映画1,100円、毎月一日の映画の日と同額料金なので、
見てきました。というか、6/5朝日新聞夕刊で、映画評論家秦早穂子*1が、

永瀬正敏は誰が演じているかと思うほど、自己を抑制し、酒で身を持ち崩した過去から這い上がろうとする男を映し出す。

と評していて、KANOの長瀬永瀬の演技良かったし(泥酔も)、
じゃ見るかと見たのですが、別に過去酒で問題を起こしたわけでなく、
現在進行形で連続飲酒にハマリつつある展開で、なんだよコレ、ソフトボールかよ、
と思い、なぜか救済と恢復が唐突に最後訪れ、釈然としなかったです。
映画批評のストーリー紹介がアレだった。やられた。もう。
彼の劇中に起こる喪失感と捉われは、老女の死によって昇華されるものでは到底ないと、
映画だけ見ると思うのですが、小説だと違うのかなあ。
そこを除くと、永瀬正敏の演技は非常によくて、後半髪が伸びて、
酒が抜けきらない顔が実によかった。これが例えば古田新太だったら、
ある意味予想がつきすぎて、
古田新太の演じる中年」という観客のインプリが鑑賞の邪魔をすると思いました。
関根勤初監督作品*2を観ようと思ってますが、
主演温水の中年男性映画なので、やはりそのきらいがあります。
話をあんに戻すと、トヨエツでも浅野忠信でもちゃんと演技したと思いますが、
プロデューサーが永瀬をつかいたかったのだろうなと思いました。

私はドリアン助川は読まずぎらいで、何も読んだことがなかったので、
原作読もうかと思いました。いちおう詩を朗読する人だということは知っていて、
音読には意味があると私も思うのですが、なんか真剣チョベリ場しゃべり場十代みたいのが、
こっぱずかしい、殻を破れない小心者で生きてきたものですから、
アクティブなリーダー的存在を直視出来ない。うわっ眩しい的な。

樹木希林、予備知識なしで映画観れたなら、不思議ちゃんの老女、
森ガールの老女、森茉莉とか金井美恵子ってこんな感じかなあ、
と登場シーンで思ったに違いないのですが、悲しいことに予備知識があったので、
レプラってベンハーくらいしか知らないけど、あと、
神保町の古書店で知人が北条民雄*3全集即買いした時、
「そもそもどういう病気なん?感染するのんけ?なおるのん?」
と質問して相手が左翼インテリなのに答えられなかった想い出があり、
この映画で正しい知識が学べるかと思いましたが、
その点ではアレでした。しかし現代は検索の時代、
人類第四の発明検索がありますので、劇場を出たらスマホで、
スマホがなければ私のようにパソウコンで、レプラコーンを検索すればいいわけで、
いまはマーズですが、SARSの時は本当に原因が不明で感染病でしたので、
どうしたらいいのかほんとうにこわかったですが、
(香港からじりじり、太平天国進撃と同じルートで大陸に蔓延していった)
この病気に関しては検索さえすればいいのになぜか今するまでしませんでした。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%B3%E7%97%85

現代では早期発見で治るし、感染もしない、というかヒトからヒトへは感染しないと。

監督の映画は、多分のみながら観たことあると思うのですが、
忘れてました。プロダクション所属みたいなJC三匹の撮り方が、
男性監督だと、ストライキ起こされそうなくらい率直で、
どうやってカゲ口とかさせないようまとめたのだろうと思いました。
登場人物の髪の毛が伸びるのも、よかったです。
あと、役者の配置とカメラの位置取りも独特で、面白かったです。
絵コンテとかはたして切ってるんでしょうか。カット割りがすごい直感的。
内田春菊の初期マンガ、水物語なんかで、台詞の改行が全然文節単位でなくて、
フキダシにおさめればいいんだろ、読めればどこで改行してもいいじゃん、
みたいな全然違う考え方で書かれたセリフにカルチャーギャップを覚えましたが、
同質の眩暈を感じました。同時に複数のカメラ回すとか、
何回も別位置にカメラ構えてリテイクして、編集で神業みせるような真似は、
予算がいくらあっても足りないので絶対出来ないと思うのですが、
ならどうやってカットとカットを計算してつないでいったのか、
不思議と思いました。風景なら出来ても、会話のつなぎ、間が面白い。
ここでこうカット切り替えてこのセリフ話すのか、的な。
風で木々がざわめくなどの描写は、
ホウシャオシエン*4にも共通しますが、
候孝賢が小津へのオマージュ等でやってるのに対し、
カワセ監督は計算づくで、意味を込めて木々のざわめきを撮っていて、
ペットボトルの風車がチェリオなのも意味があるのだろうと思いました。

あと、イオンシネマの映画ですが、西武線沿線で西友も映っていて(当然)、
確かにツツミ一族が健在なら、この映画好んだろうな、と思い、
イオンはよいことをした、と、思いました。

自省録 (岩波文庫)

自省録 (岩波文庫)

ソフトボールは出ません。以上

*1:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%A6%E6%97%A9%E7%A9%82%E5%AD%90

*2:http://souon-movie.com/

*3:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%9D%A1%E6%B0%91%E9%9B%84

*4:私は漢人名は日本語の文章の枠内では日本語の音読みすべきと思っていますが、台湾語の映画を撮り乍ら外省人の出自である候監督に関しては、この北京語読み、國語読みが何故かしっくりくると思っています