『さよなら的レボリューション 再見阿良 (ツァイチェンアリャン)』読了

さよなら的レボリューション 再見阿良 (ツァイチェンアリャン)

さよなら的レボリューション 再見阿良 (ツァイチェンアリャン)

直木賞作家の中国関係を読もうかと思って読んだ本の二冊目。
近所の本屋に受賞作と並んで平積みされてましたが、图书馆で借りて読みました。

一冊目読書感想
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20150802/1438466930
作者 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E5%B1%B1%E5%BD%B0%E8%89%AF

ぱっとページをめくっただけで、一冊目よりは大人になったな、と思いました。
主人公の一人称が「俺」から「僕」になったからそう思うわけですが、
一冊目は、あとがきの作者の一人称も「俺」だったんですね。

頁99
「で、仲のよかった友達が……あ、そいつ、ホストやってたんですけど、自分の彼女の親友に麻薬売りつけてたのがバレて刺し殺されちゃったんですよ」言い知れない不安に駆られ、僕はどんどん言葉をかぶせた。「それで俺もこのまんまじゃ、やべえなって感じで。上海で車売ってる友達がいるんですよ。いっしょにやらないかって誘われてて。これからはやっぱり中国でしょ?その友達、こないだ四川から上海まで盗まれた車を運転して帰ってきたんですけど……」
「痛ぇな、おまえ」
「え?」
「友達が、友達が、って言うやつの話はよ、聞いてていたたまれなくなっちゃうんだよな」

これ、まんま一冊目あとがきの作者じゃないかと。あにきがツレが、大哥大哥。
多分似たような、類する経験が作者にあったのだと思います。

あらすじはアマゾンでもどこでもクリックすればいいとして、
最初、最初のヒロインの陸安娜は譚璐美*1かなと思いましたが、
どう考えても違うので、なぜそう思ってしまったか、ナゾです。

頁102に、「塚」という漢字の中国語読みがジョンとなってますが、
これも私は何故か違う音で覚えていて、中国には塚という字はないので、
"冢"を当てているところまで覚えてて、しかもジョンティエンインショウ(中田英寿)の
所属チームとして、けっこう会話したりした想い出もあるのに、
なんで間違って覚えてるんだろうと顔が赤くなりました。

塚の意味 - 中国語辞書 - Weblio日中中日辞典
http://cjjc.weblio.jp/content/%E5%A1%9A

で、主人公がひきこもり時代自室でリフティングばかりしていて、連続何百回とか、
ヒールとかリフトとかなんとかかんとか、相当なテクをもっているとするくだりは、
ひょっと、やはりそれに打ち込んだ人を、思い出して、なんか、重ねてしまいました。

頁132の大男人主義、私は大男子主義と覚えてました。
中国語を学び始めて二、三年なのにネイティヴと意思の疎通が出来過ぎる、
きらいがありますが、作者の分身と考えれば、それくらいの会話は出来るでしょうし、
本当にスジのいい人はどんどんどこまでも行くので、アリかもしれないと思います。

で、二人目の年上の女の子とか、短期留学とか、どこのてなもんや商社だよ、
と思いながら、あーラプソディーラプソディーと読みました。

中国てなもんや商社 (文春文庫)

中国てなもんや商社 (文春文庫)

頁55
「俺はなんで阿良なの?」
「だって、香港映画に出てくる人のいいチンピラみたいなんだもん、いや?」

プロジェクトAとかに出てくる、張嘉年(ケニー・チャン)、太保を連想します。

プロジェクトA 出演 Wikipedia ここの、三ツ矢雄二の声の「ひょうきん」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88A#.E5.87.BA.E6.BC.94

この役者さんは、非情城市で、台湾語上海語が通じないので、
広東語かませた際の通訳をした地回りの役が印象的で、
便所で「ポッカー/仆街」と言ったら、次のカットでもう背後から背中刺されて、
逃げるもまた背中刺されて絶命するという、とんでもないシーンでした。

非情城市 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%82%B2%E6%83%85%E5%9F%8E%E5%B8%82#.E3.82.AD.E3.83.A3.E3.82.B9.E3.83.88

思うのですが、この場面転換の鮮やかさは、さいよういち監督の、
十階のモスキートで、内田裕也が、婦人警官を、「きみ、ちょっと」
と呼びかけてからの場面転換と似てると思っていて、共通のオマージュ元があるのか、
崔監督からの影響なのか、ぜんっぜん関係ない偶然なのか、気になってます。

で、黄土高原に入ると、いきなり主人公はリービ英雄になります。
てなもんや商社から青天白日満地紅旗の聞こえない部屋へ、華麗なる転身。
リービ英雄は、日本語作家ですが、その著作のとおり、
國語教育バリバリの台湾で幼少期を過ごし、母親は、農民舎あたりのチャイナガールに、
夫を取られるのではないかという潜在的不安をいつも抱えて生きていたとあり、
作者とはまったく違う境遇乍ら、ボーダーとかマージナルとか持ち出すと、
あら不思議共通する属性があるような気がする、しとです。

リービ英雄 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%93%E8%8B%B1%E9%9B%84

我的中国 (岩波現代文庫)

我的中国 (岩波現代文庫)

ほんとにね、この、ヤオドンとかで地元ローカルの古老と対話するあたりは、
たき火の火がはぜる音が聞こえてくるような、リービの言霊が乗り移った感満載です。

父親の勤務されていた西南学院大学と作中の大学との関わりとかしりませんが、
作者は大人になって、肩の力を抜いて、前へ進んで行ってるんだなあ、
と思います。この後に書いた、直木賞受賞作を読むのが、楽しみです。以上