『牛を屠る』 (双葉文庫)読了

牛を屠る (双葉文庫)

牛を屠る (双葉文庫)

大竹聡さんの本*1で紹介されてた本。
屠殺業云々より、ひとりの青年の、父親に関連した幼少時の環境(う〜ん、学研)、
卒業後、モラトリアムの猶予はないのだけれど、されど何をして、
どうやって食べてゆくか不透明な日々、そして、
スペシャリストとして覚醒するまで、に焦点があうように読みました。
恐らくオータケの人もそう読んだのではないかと。

現在ではこの仕事も就労時間めいっぱい拘束される、流れ作業中心だそうですが、
そうなる前の、終われば半どんで上がり、食事は弁当配給、風呂もお茶もある、
生活を活写したノンフです。時間の切り売りでない仕事は、よいと思います。
農業や酪農も、大地やお天気、いきものに四六時中縛られる仕事ですが、
やりようによってはこうなれたらいいなあ、と思いました。
ゴルフによく行く人もいるので、そういう人は出来てるのでしょうが…

関係ないが、読んでてふと思ったのが、最近の建築現場は、
必ず仮設トイレがありますが、あの🚻が普及する前は、どうしてたっけ、です。
近隣のお宅のトイレをお借りしてたのか、公衆便所まで走ったのか…
で、冬になると、手も洗わず帰宅する若い衆の姿を思い起こします。
恐らく以前は土禁だった、自分の持ち込み車に、作業着で乗り込んで、
疲れた身体で、顔も拭かず、帰宅する。

本書にもO-157騒動や狂牛病の話が登場し、それとともに進められた、
ドラスティックな工程改革について触れられています。

紹介にあるとおり、確かに力強い本です。それが伝わってきました。以上

【後報】
いま、はてブ見たら、ブレンディの過去のウェブ限定動画が話題になってて、

http://b.hatena.ne.jp/entry/mistclast.hatenablog.com/entry/2015/10/03/163446

作者の屠畜場の特色として、ほかに比べ、和牛よりホルスタインの率が高いこと、
そうすると、牛のおっぱいが場内に溜まってしまうので、台車で拾って回る場面があり、
それを読んだ直後にこういうニュースに引っかかると、シンクロニシティって、
気持ち悪いなあ、と改めて思います。
(同日)
【後報】
著者の月給は手取りで二十五万くらいだったとあります。
現在は介護保険があるから、もう二万くらい少ないんじゃないかと思いますが、
それでも、私のように手取り十七万の人から見ると、
けっこうよい給与に見えてしまいます。現在のこの仕事が、
これだけの給与をもらえるか分かりませんが(流れ作業ということだと)、
こうした労働形態がもうない、ということは少し残念です。
(2015/10/4)