『羊頭狗肉 のんだくれ時評65選 SHEEP'S HEAD - DOG MEAT』 (SPA!BOOKS)読了

羊頭狗肉 のんだくれ時評65選

羊頭狗肉 のんだくれ時評65選

ボーツー先生を読もう!シリーズ やっと読み終えた。
アマゾンのケチョンケチョンレビューとヘイト批判などの内容紹介、で、
まあ何も考えず虚心坦懐に読もうと思って読みました。あと3冊は読むつもりです。

福田和也の表紙写真は、何歳くらいのだろう。エイゴタイトル、なんで犬の方は、
"'S"が付いてないのか、英語が分からないので分かりませんでした。
ストーンズのゴーズヘッドスープみたいでいいじゃんアハハ、みたいなノリでつけた、
タイトルだそうです。(頁2:まえ談)そういう感じでは、杉作J太郎とのゲスト対談で、
ハロヲタからAKBファンに乗り換えた理由を語る頁345は面白かったです。
単なるズベ公リスペクトなんですけど。その杉作を、週刊朝日でボーツーと対談した、
林真理子が誰か知らなかったのも面白い。最近朝日が海老名TSUTAYA図書館を、
なぜ?取り上げてるのかと不思議で、市長選*1は確かに11月ですが、
それとは関係なく、頁335で、"ツボちゃん"の人が朝日のセクハラ体質について書いていて、
内縁の妻が朝日なのにいいの、確かにネタ元は京都出身の女性じゃなくて、
本人が編集に出入りしてた時の体験なので、逆に、中からは書き難いことを、
よくぞ書いてくれた、ということなのかなあ、的に、まあ四面楚歌というか、
ABCD包囲網みたいな放談なので、スパって産経なのにヘンな雑誌だよな、
ゴー宣が逃げた後、意識してワザと逃げた後のゴー宣、サピオと被らないように、
それだけを意地でやってるイメージ。と思ってます。これいいのだ、以下。

ボーツー先生も頁28くらいだとすぐネトウヨに転調しそうなアジア理解で、
それが頁400には和漢朗詠集を読もうとしたり、テグ出身者について的確な評を下したり、
その進化のスピードは、さすがアタマのいい知識人だな、と唸らされました。

編集部オススメの角川ソフィア文庫
ふたりが好きな右翼というか保守派論客、福田恆存 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E7%94%B0%E6%81%86%E5%AD%98
下記は頁336参照。福田和彦の一人称は「ワタクシ」ボーツーは「オレ」

頁330
坪内 こないだ朝日新聞が大きな記事にしてたけど、来年6月に故宮博物院が日本に来るんでしょ(中略)台北のほうのヤツ。日本初公開のものもあって、キリギリスみたいなの(翠玉白菜)と、肉片みたいなの(肉形石)が……。
福田 いや、あれはゴミ。

頁321、バカ発見器ツイッターの世紀に、ウォーホルの格言を引いて、
「人は誰でもその生涯で15分だけは有名になれる」
右翼ネタになると勝共連合とかにも話が及ぶ時がある対談で、その逆ネタだと、
頁316も面白かったです。頁278、軽井沢を書いた川口松太郎の作品、読みたいと思い、
タイトル検索しましたが、何が何やらでした。全集めくらんならんのかな。
パヤオ風立ちぬを熱く語ってるあたりの記述。
基本的に世代が等質なので、長塚圭史とボーツーの対談で、
下記のようなやりとりがあると、世代差とかくっきり浮かび上がって、
面白かったです。

頁270
坪内 それはシブいね。
長塚 いやいや、シブいのかな。

年長者の前で自問自答する習慣って、世代差だと思います。

頁265
坪内 本当?三好十郎に注目する若い人がいるの?
長塚 いるんですよ。
坪内 だって、河出書房から昔出てた『三好十郎作品集』でしか読めないんじゃない?
長塚 今、青空文庫で読めるんですよ。

頁259の、きだみのるから三好京三、なだいなだに話が飛ぶ展開は、
まさに対談の真骨頂だと思いました。洲之内徹の本図書館に寄贈したかと思ったら、
まだ家にありました。中森明夫の書評を見て買ったのですが、
中森明夫はこの二人の対談を見て書評を書いたのかもしれない。

洲之内徹文学集成

洲之内徹文学集成

頁204
坪内 トンカツも含めて下町の洋食は花柳界の人が愛用していて、しっかりしたものだからそれなりの値段なわけ。そういう背景を知らないで下町の洋食屋に行くと「高い」と思っちゃうよね。でも、もう花柳界が成立しなくなってきてるから、下町の洋食屋も厳しいよ。

昔、岩本町だったかな、鼠が走るような洋食屋で、大越が野球部イジメでやめた頃、
六大学野球のファンみたいなご主人にそういう話をいろいろ聞かされた、
思い出があります。鼠が走るのに高いなあ、と思い、しかし地上げとかあるから、
頑張って、と思った。頁201、電車の中吊り広告は小林一三が始めたとは、
知りませんでした。頁193、庄司薫村上春樹のことを、頭の悪い僕みたい、
と言ってたのも知りませんでした。面白い。一人称「オレ」のボーツー先生と、
酔うと体育会系気質が出る*2泉麻人の対談は、紙で読むほど和気藹々では、
なかったと推測します。

頁184
泉 爆弾低気圧のひとつのタイプは昔の「台湾坊主」。台湾周辺で発生して、日本付近で急速に発達する低気圧だからそう呼んでたの。
坪内 台湾坊主なの? それは台湾が怒るから呼び方を変えたのかね?
泉 と言われてるけど、別に「坊主」が悪い言葉とも思えないし、それを言ったら「爆弾」ってのもねぇ。

頁457、ここで私も一度食べてみたいです。

頁119
坪内 この対談でオレは何度か言ってるけど、また言うよ。消費税の対象事業者って、前は売り上げ3000万円以上の事業者だったのが、'03年に1000万円以上に引き下げられちゃったでしょ。そうすると、八百屋さんだって肉屋さんだって、売り上げが1000万円を超えると消費税を取られちゃうわけだ。その対象引き下げで、個人商店がバタバタ潰れたんだよ。その上、消費税10%になっちゃったら、普通の個人商店は全部ダメになっちゃうよ。「街を回復しよう」とか「商店街を復活させよう」とか言ってるのに、矛盾してるよね。

2020五輪はイスタンブール、とか、猪瀬都知事誕生からマスゾエまでが全く読めてない、
とか、さぶらごうちさんは耳が聞こえる肯定前の対談とか、いろいろアレですが、
ここはよかった。インボイスとか最近の報道の先取りが出来ている。

頁111
福田 ……。あ、邱永漢も亡くなってたんだ。この人が経営してたレストラン、ホントまずかった。銀座や渋谷に支店があって、本店は台湾なんだけど、本店の味がサイアクだった。台湾が一番まずいって何なんだという。
坪内 でもさ、邱さんの店、渋谷より銀座が好きっていう人が何人かいるよ。小林信彦さんに連れて行ってもらったことがあるけど、渋谷のはダメです、こっち(銀座)は大丈夫ですと言ってたね。
福田 銀座はね、サービスちゃんとしているんですよ。

頁84の、ネットの修正のおそろしさと、陰謀史観の話はごもっとも。
大澤信亮、写真が残念閔子騫。頁271で、2020五輪の演出家は、
ニナガワも浅利慶太もいないので、野田秀樹本命、対抗平田オリザ
大穴松尾スズキ、あと長塚圭史となってましたが、(ませんかね)
平田オリザはないだろうと。野島伸司と同じくらい、ない。
横浜開国博の宮本亜門(大赤字)とか、三谷幸喜とか、クドカンもいるだろうと。
あまちゃんについて熱く語ってるのに、ここは違和感でした。

この本のアマゾンレビューがひどいのは、内容紹介にもある、
福田さんのヘイト叩きの台詞とかが刺激したのかなと最初は思いましたが、
たぶん、地です。そのあたりはたぶん関係ない。
ヘイト叩きは苅部直ゲストの回で編集部が持ち出した話ですが、
頁223、軍務に関わる活動が元で命を落とした慰安婦靖国に祭神として
祭るべきではという苅部さんの主張に対し匿名脅迫状が複数来たそうで、

頁223
苅部(中略)ただそのとき、2ちゃんねるでも叩かれた合間に、保守派論客だった英文学者の中村粲さんが講演記録で同じ主張をされているという書き込みがあって、得をしました(笑)。中村さんが靖国神職に訊いたら、前線では「慰安婦」も軍属に編入された場合があるので、誰がそうかは不明ですが祭神にすでに入っている可能性があると。

この人はふだんは左から批判されるリベラルなんだそうですが、
座標軸って、相手あっての相対的なものですね。以上

だいにっほん、ろりりべしんでけ録

だいにっほん、ろりりべしんでけ録