- 作者: 田中光二
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2004/02/20
- メディア: 新書
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新書サイズのノヴェルズですが、パラフィン紙に包まれた古本。
足利学校*1に行った折、その近くの古本屋で買った本です。
中に購入時のレシートが挟まっていて、さいたま県草加市で買われた本でした。
『黄土の奔流』*2光文社文庫解説が著者で、家に田中光二の小説ないかと探したら、
この本が出てきて、ぱらぱらめくってそのまま一度挫折しましたが、昨日漸く読み終えました。
お話としては、小松左京のこちらニッポン…*3の選択的中国ヴァージョンで、
中国から人が消えたらどうなるか?というイフ小説です。
マリー・セレスト号*4とか、インカだかマヤの村とか、ゲーム*5のような消失なので、
だいたいというか、まあ、人類以上の高次の存在というか、宇宙人とか未来人みたいな、
新井英樹のスカッターにも出てくる賢人会議みたいな、なんかそんなのの仕業です。
あっしまった今のネタバレだった。ミステリー・サークル*6が多数出現し、
北京五輪の成功が確約されてない頃、GDP世界二位がまだ夢だった頃、
中国人の平均層が車に乗るようになったら、中流生活を享受するようになったら、
化石燃料や世界の資源は枯渇するのではないか、汚染や農産物は多大な影響をではないか、
という潜在的不安を背景にした小説だったと言えます。そういう不安は解消されたわけでなく、
現在進行形だからみんな目をそらしてるだけのような気もしますが…
直視したところでどうにも出来ないものは見ない、ということでしょうか。
で、中国から中国人が消えたら世界は何をしますか、というと、
この小説では、他国は空白地中国を分割占領しようと、どっと雪崩込みます。
インドとか、雲南から成都重慶を目指して進攻しますが、
インドが領土と主張してるのに中国が実効支配してるのは、アクサイチンとかの、
ヒマラヤからカシミールにかけての地域なので、そっちはどうなら、と思いました。
天然鉱物埋蔵資源とかもあるわけだし、そっち行っても別に可じゃん、みたいな。
頁71、米国華僑/華人の大立役者たちが全員潮州語を話す(そっち出身)とか、
頁77、実在の日系参謀総長シンセキ*7の名を出して、この小説世界では、
日系人が米軍でもっと上位のプレゼンスを獲得しているとしてたり。
頁85、揚子江にはヤンツーチャンとルビを振り、
黄浦江にはホワンプージアンとルビを振ったり、
頁170、この映画紹介してたり、
頁244、地球上の時限爆弾たる中国人、
頁248
さすがの北朝鮮も、火器をもって中国領内に入れば、“なにものか”からペナルティを受ける……消滅してしまうことを、いままでの他国の経験から学習していたからである。
だから火器をもたなくても強い軍団、すなわち第八特殊軍団を送り込んだ。
これは、一九個ある北朝鮮軍の軍団における秘密兵器と行っていい。(ママ)
肉体を武器として徹底的に鍛えあげた軍団で、その数二万人。
素手でレンガを割り、あるゆる格闘技に心得がある。(ママ)ひとりで五人の韓国軍兵士を相手にできるといわれている。
三〇キロの装備をせおい、一日五〇キロ移動できるといわれる。また一週間飲まず食わずで活動できるともいわれている。すべての感情を殺し戦闘だけに専念するよう条件付けられている。まさにすさまじい人間凶器だった。
その戦闘力の高さは、一九九六年九月に起きた韓国東海岸における北朝鮮潜水艦座礁事件で立証された。
潜水艦乗組員二六名はすべて自決したが、乗っていた一五名の特殊部隊員は山中に逃げてゲリラ戦をくりひろげた。
韓国軍は一個師団! を出してこれを狩り出そうとしたが、多数の死者を出し、ようやく一ヵ月かけて全員を殺した。いや、ひとり行方不明のままだが、おそらく山中で自決したのだろう。
おそらくかれらは各国特殊部隊のなかでも最強だと考えてもいいだろう。
旧ソ連のスペツナズやイギリスのSAS,アメリカのシールズ、グリーン・ベレーなども有名だが、鍛え方がちがう。
映画レッドファミリーの感想*8でも書きましたが、北朝鮮の徒手空拳兵力を過大視すれば、
対抗戦力配備のための予算取りに有利になるからこうした情報を流布するのか、と、
めんくらいながら読みました。
で、無人大陸中国ですが、香港返還後なので香港無人になりますが、台湾は無傷で、
一部香港が行政的に一国二制度の半独立の存在なので傷ついてない描写もあり、
でもそれは返還を忘れてついまだ英国領だと思い込んで書いた箇所と分かってしまい、
そして、チベットやウイグル、外蒙古内蒙古はいっさい書かれてません。
中国大陸に含むか否かで、考えるのがめんどくさかったのだと思います。
問題点がシンプルに整理されなくなる。んだもんで、五六の民族がどうなったか、不明。
南寧も無人のくだりがあるので、少なくとも広西チワン族の漢族同様消失は、確定。
チベットやウイグルに触れられないなら、消失は本土十三省だけの設定にすればいいのに、
と思いますが、それだと満洲は人消えない。まったくなあ、と思いました。以上
*1: http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/site/ashikagagakko/
*2:読書感想 http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20140913/1410612107
*3:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%93%E3%81%A1%E3%82%89%E3%83%8B%E3%83%83%E3%83%9D%E3%83%B3%E2%80%A6
*4:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%88%E5%8F%B7#.E5.BE.8C.E4.B8.96.E3.81.AB.E3.81.8A.E3.81.91.E3.82.8B.E8.84.9A.E8.89.B2.E3.83.BB.E9.83.BD.E5.B8.82.E4.BC.9D.E8.AA.AC
*5:http://www.gamer.ne.jp/news/201508110001/
*6:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AB#.E8.A3.BD.E4.BD.9C.E8.80.85.E3.81.AE.E5.91.8A.E7.99.BD
*7:この講座でも名前が出ました→http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20150927/1443336675
*8:http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20150528/1432828663