『独裁者と小さな孫』(原題:The President)劇場鑑賞

公式:http://dokusaisha.jp/

映画評を読んで観たくてたまらなくなり、予定をひとつ潰して今日観た映画。
どうも、映画評は、褒め殺しか、あるいは歯切れが悪かったのかもしれない、
と、事後、思い返すにそんな気がしてきます。かわいい白人子役という飛び道具…
都内上映館2館どちらも千円とか千百円とかの割引デーでしたので、
どちらで見るか迷いましたが、人材派遣会社を冠さないほうの映画館で見ました。
リ・ポンウと小さなマゴ。満席でした。最前列左端で観たので、けっこう首疲れました。
あの位置だと、けっこうスクリーンが、ナナメに見えるもんなんですね。

来週の祝日見てもよかったのですが、電話をかける際すでにタイトルを間違えていて、
「大統領と小さなお針子」とか、「大統領と理髪師」とか、「デートリャンとケーセッキ」とか、
蒋介石ゾントンとDAIGO」とか混乱して来たので、今日観れてよかったです。
映画のセリフでも、大統領はプリンキベとかなんとか呼ばれていたようないないような。
インテリ政治犯(釈放)だけ、ディクタトルだかなんだかとゆっていた。
グルジ…ジョージア語は分からないです。最初、ペルシャ語じゃないし、ロシア語みたいな、
こりゃナニ語だべと思いながら観て、「が〜まるちょば*1がそのままセリフで出てきて、
エンドロールの役者、スタッフの苗字が全部、
スターリンのグル…ジョージア名ジュガシュビリの末尾「〜ビリ」と、
シュワルナゼの「〜ゼ」ばかりだったので、
オープニングでグルジアジョージア国営映画社名が出てたな、と合点し、
セリフはぐrジョージア語だと分かりました。亡命イラン人監督がジョージア語に堪能とも、
思われないので、押井守が撮ったポーランド映画と、同じと思います。
映画というハコの中で、役者のナショナリティーや言語は自由に入れ替えて演出可能。

本作品監督の
モフセン・マフマルバフ監督より
サインを頂戴しました!

でも押井守はマフマルバフと違い、欧州文化資本が少ないので、これほど自然じゃなかった。
私もロシアの劇場でクロークにコートを預けなければならないよ、と注意されて、
なぜミリタリーコートも預けなければならないのか、日本でそういう修養を積んでいれば、
そういう階層に生まれていれば、と悔しがった想い出があります。
その一方で、京都で下足番を見て、こういう仕事について一生を終えるのもいいな、
でも自分はすぐ人間関係で堪えられなくなって逃げだすのではないか、
それにしてもお寺さんなんかで、神職でもないのに毎日落葉掃きと焚き火の話ばかり、
息抜きの喫茶店でコーヒー飲みもって話さはるお人らは、どういう資格なんにゃろ、
どこかの政財界の祇園の隠し子とかなんかな、と思ったりしました。そちらの文化資本もない。

マフマルバフ 日本語版Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%95%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%95%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%95
同 英語版Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Mohsen_Makhmalbaf

なぜ日本語版には2005年から亡命生活を送っていることが書かれてないのか不思議ですが、
公式の監督インタビューにはきちんと書いてあります。で、私はこの映画で、まず、
孫の姉たちが車内でチャドルをかぶっていないので、まあ家族だしな、でも、
沿道の市民に手を振ってるし、欧化されたイラン人て感じかな、と思い、
トイレのあと紙でなく水を使う文化とか、葬儀ではチャドルをかぶる場面とか、
そういうもろもろを重ね合わせて、これはレザー・シャー・パフレヴィー*2じゃないのか、
と思いました。ウィキを見ると、監督自身、欧化されたパーレビ朝を、
パリ亡命中のホメイニ師の指示で打倒に動いた若き革命分子の一人だったわけで、
その辺の苦い経験(と現在の物差しで過去を計ってしまっている)がこの映画だと。

そうやって見ると、一番衝撃的で、かつあるあるっぽい花嫁行列の場面は、
そも一般人が銃を持つの当たり前のアフガンなんかじゃありえない場面で、
(自動車運転するなら、未婚女子連れて運転するなら、当然銃は携帯必須で応戦上等)
ナゴルノ・カラバフチェチェン・イングーシならどうだろう、
旧ユーゴやウクライナだと、確かに群盗化した民兵に対し、民間人まで銃所持対抗はない、
こういうことはあったかもな、だから文明の退行云々か、中途半端はよくないんだな、
と思いました。あと金持ちが英語で偽装難民レッスンする場面は、一部爆笑かと。

Welcome To your film.

何がどう「ようこそ」なのか分かりませんが、私の映画として観るなら、海岸の場面は、
米第七艦隊が登場してうまくオチがつく、というのが、日本人の安心だと思います。
それが衝撃の結末なのかと思った。地中海だと、第五艦隊かな。以上

【後報】
おまけ

http://dic.pixiv.net/a/%E7%AE%B1%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%A0
(同日)
【後報】
連合軍到着でオチがつく映画といえば、旅芸人の記録の前半だったと思いますが、
英国のギリシャ上陸は、ヤルタでチャーチルが、欧州のかたちを鰐に喩えて、
最も弱い下腹部(ギリシャ)を叩くことで単なる正面作戦するより独逸を消耗させる、
と主張したと勉強しました。まあそれは詭弁で、チャーチルの本音は、赤軍の突出を抑えて、
戦後、従来の既得権益がゼロになりそうだった英国が、少しでも地政学的にとっておきたい、
とする欲望のあらわれであったと。ただ、スターリンは、ヤルタの線引きを愚直に守り、
戦後東欧が連鎖赤化したのに対し、共産党が強かったにもかかわらずギリシャと伊国には、
手を伸ばさなかった、ということです。読書感想が書けていない『昨日の旅』*3だと、
スペインに手を出して火傷した経験が尾を引いているような気もします。
(2015/12/17)