『玉蘭荘の金曜日―台湾に生きる日本人妻たちの戦後50年』読了

玉蘭荘の金曜日―台湾に生きる日本人妻たちの戦後50年

玉蘭荘の金曜日―台湾に生きる日本人妻たちの戦後50年

神保町で、ゾッキ本というか、ワゴンセールで買った本です。
アマゾンレビューが文字化けしてて、読めないのが残念。

韓国のそれは、上坂冬子さんが慶州ナザレ園という本を書いて、
それが中公文庫にもなってますし、むくげの会とかもあるですが、
台湾の同様なまとめが、こうやって本になってるのは、
よいことだと思いました。本文中に両者の比較はありません。

慶州ナザレ園 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%85%B6%E5%B7%9E%E3%83%8A%E3%82%B6%E3%83%AC%E5%9C%92

日本文化の取扱いの違いもありますが、台湾の場合、
日本で結ばれるか現地で結ばれるか、以外に、
外省人と結ばれて国共内戦の敗北によって台湾に逃れた日本人妻、
という存在があることが大きな違いと思いました。
そうした大きなワクのガイドラインの紹介の比重が高く、
個々のオーラルヒストリーについては、作者と取材対象の、
距離が近すぎることもあったでしょうか、筆が鈍ってる気がします。
書かない選択をしたと思う。同様に、タイトルにもなった、
玉蘭荘が軸としてはそんなに強くない。フォルモッサ全土に散らばった、
各地の邦人妻探訪も入れたいし、台湾戦後簡史も入れたいし、
う〜ん、と作者がヒゲをよじりながら書いた感じ。ヒゲがあるのか知りませんが。
頁101、戦後数年後、根をあげた日本人妻複数が台湾丈夫から逃げて集団帰国したが、
彼女たちは実家にも帰りたがらず、仮施設が親善団体によって作られた。
原住民と結婚した日本人妻を探す場面の前段階で、
沖縄と台湾の交流、沖縄妻を探そうとする場面が書かれてましたが、
沖縄人は台湾で現地警吏などを務めたりして、憎まれ役というか、
中間的存在になってたので、なかなかセンシティヴなところで、
描けるのかと思いました。結局描いてないかったです。
庄司總一という三田文学の人の『陳夫人』という小説を出してますが、
邱永漢の女の国籍は出てきません。台湾文学研究者と邱のやりとりが有名だからか。
戦後華人と結婚して来台して日本食レストランやってる女性は出てきます。
頁174、アメリカ移住本省人が呼び寄せた日本語世代の親たちが、
日本語話者の互助会親睦会を、例えば加州で作っている箇所は、
よかったです。頁98、一年準備、二年反攻、三年掃討、四年成功。
頁113、古寧頭大戦、八・二三砲戦。ここまで書くなら、大陳島失陥も、是非。
出版社公式 http://tendensha.co.jp/asia/asia139.html
http://tendensha.co.jp/photo/139.JPG
もっといろんな人がこの題材に挑むかというと、寡聞にして知らない。
そんな世界です。直木賞作家は流の次にこのテーマに挑まないかな。以上