『故都芳艸』読了

今週のお題「犬派? 猫派?」
ええと、後報なんですが、
とりいそぎ、本書の
「雪姑雑録」というエッセーが、
中国の古典文学にみえる
猫についてまとめた文章で、
最古が詩経荘子で、
堅瓠集という書物の逸話、頁78、
金華猫を飼って三年経つとその猫は中宵毎に屋根の上に蹲り、月に対して口を開き月華の精気を吸って怪をなすに至るという話がある。
頁79「毎於中宵蹲踞屋上伸口対月吸其精華久而為怪」など、
今週のお題をかすめてるな
と思い、まず記しておきます。
*1
奥野信太郎著 
須田正一編 
論創社1984年刊
装釘:林佳恵 
キレイな表紙なのですが、画像検索しても出てこないので、
まずここに出したいのですが、いまスキャンが使えないので、
それもあって、以下後報です。では
【後報】
表紙スキャンしました。
頁10王昭君
匈奴の地に於いては単于の妻を閼氏あつしと称した。
あつし、って読むんですね。
頁15北京文学地図の一隅
丁玲『莎菲女士の日記』『阿毛姑娘』徳齢『西太后に侍して』が出て来た後で、

林琴南という人物はちょっと日本などに類をみない不思議な人物である。外国語を一語も知らないでよくこれほど大量の世界文学の飜訳をやってのけたものである。もちろんそれには魏易という英語に堪能な助手がいたとはいえ、英・独・仏・露・米等の西洋文学から、日本文学にいたるまで、林琴南の訳した小説の範囲は、少し大げさにいえば地球上の東西いたるところに及んでいる。またその訳がいわゆる桐城派の古文で、すこぶる格調の高い漢文であったから、たとえば日本の徳富蘆花の不如帰のごときは原文よりはるかに立派な文章になっている。彼は文学革命以前の、いうならば文明開化の功労者であって、文学革命に従った当時の青年たちも、多かれ少なかれまず彼の飜訳によって外国文学に接したものであったということは周作人の告白によっても察知することができる。その林琴南が白話に反対して古文を提唱した有名な論争も、今となってははなはだ愛嬌に富んだ昔語りとなった。

こういうネタが出てくるのがよかったです。文学の中身がちがう。
頁18「中国の酒」
白酒は純良な焼酎に属し特にその強烈なものは焼刀子と呼ばれている。
知りませんでした。
たとえばエメラルドのように美しいいろをした菌蔯は、白酒を唐辛子と苦蓬で加工したものであり、またさながらジンのような茴香酒は茴香で味をつけたものであるといったように、
いろいろあったんですね。竹の酒やオカピくらいしか知りませんでした。

頁49「王次回とその作品」
僕本狂人、生れて恨事多し
なぜかアーネスト・ドーソンという人の詩を紹介してるのですが、
酒滓に汚れたる唇と懶き眼さては尋常よのつねすぎて酒の香は狂えるこころばえ、白薔薇そうびの清らにもまして心動すあやしさよ、説きて聞かせずや我君
訳によって詩の印象って、すごく変わると思いました。
妓に幽怨、疴を抱いて客に対する者有り。悲みて之を賦す

頁159に、日中エロ文学比較として、中国の『杏花天』日本の『かんそ軍談』
ふたつが出てきますが、前者は駒田信二先生の本が検索で出ますが、
後者がまったく検索で出て来ず、なんだったかなあ、山田風太郎忍法帖で、
弓削の道鏡とナントカ皇后のカントカの場面の淫書をきむすめに読ませる場面が
あるのですが、ああいう日本の本格好色文学って、どういうところに、
DB化されてるのか、されてないと、ディープラーニング型AIに学習させられない、
それは人類の大いなる損失ではないかと、実はあまり思ってないのですが、
DBはあったほうがよいと、やっぱり思いました。以上