『日本文学全集66 現代名作集4 埴谷雄高/安部公房/中村真一郎/藤枝静男他』(筑摩書房)読了

出版社公式やWikipediaに項目のある日本文学全集とは違うみたいです。
日本の古本屋検索結果
https://www.kosho.or.jp/products/detail.php?transactionid=284dcb1b25d4309c0dd5354b884dbb533f843bb9&mode=&pageno=&search_pageno=&product_id=1607368&reset_baseinfo_id=&baseinfo_id=&product_class_id=&quantity=1&from_mode=&search_facet_publisher=&search_word=%E5%AE%89%E9%83%A8+%E4%B8%80%E9%83%8E&search_name=&search_name_matchtype=like&search_author=&search_author_matchtype=like&search_publisher=&search_publisher_matchtype=like&search_isbn=&search_published_year_min=&search_published_year_max=&search_comment4=&search_comment4_matchtype=like&search_book_flg=&search_price_min=&search_price_max=&search_only_has_stock=1&search_orderby=score&search_sorttype=asc&search_page_max=20&search_image_disp=&search_orderby_navi=score&search_sorttype_navi=asc&search_page_max_navi=20&search_image_disp_navi=&transactionid=284dcb1b25d4309c0dd5354b884dbb533f843bb9
別に三浦しおんや
高原書店
義理があるわけじゃ
ないですが。
CiNiやO-PACでうまく
出てこなかったので。

台湾カルチャーミーティングの
レジュメにあった、
台湾を描いた日本語文学の、
埴谷雄高『虚空』が
収録されてたので借りた本。
しかし、読みでがありました。

解説:奥野健男
<収録作品>
埴谷雄高「虚空」
阿部公房「時の崖」
中村眞一觔「恋の重荷」

藤枝靜男「欣求浄土
森茉莉「気違いマリア」
小沼丹「汽船」
小島信夫「返照」
井上光翎「眼の皮膚」
三浦朱門セミラミスの園」
近藤啓太觔「赤いパンツ」
曾野綾子「海の御墓」
石原愼太觔「完全な遊戯」
城山三觔「メイド・イン・ジャパン」
有吉佐和子「海鳴り」
開高健「パニック」
深澤七觔「南京小僧」
北杜夫霊媒のいる町」
小川國夫「枯木」
なだ・いなだ「帽子を…」
倉橋由美子パルタイ
星新一「ボッコちゃん」
瀬戶內翎美「あふれるもの」

水上勉「蜘蛛飼い」
河野多惠子「幼児狩り」
三浦哲觔「初夜」
山口瞳「昭和の日本人」
池田得太觔「家畜小屋」
山川方夫「最初の秋」
永山一觔「皮癬蛼の唄」

解説の奥野健男がイコール編者で、
下記も収録したかったが削ったとの由。
長谷川四郎「鶴」
大西巨人「精神の氷点」
真鍋呉夫「天命」
富士正晴「贋久坂葉子伝」
西野辰吉「米系日人」
小林勝「軍用露語教程」
金達寿「朴達の裁判」
田中澄江「犬と猫のはなし」
五味康裕「喪神」
菊村到硫黄島

宇野鴻一郎「光りの飢え」
泉大八「アクチュアルな女」
佐木隆三「ジャンケンポン協定」
桂芳久「いらくさの蔭に」
田久保英夫「解禁」
坂上弘「動物」
竹西寛子「儀式」
高橋和己「散華」
吉村昭「少女架刑」
小松左京「影の重なる時」
辻邦正「見知らぬ町にて」
丸谷才一「にぎやかな街で」
五木寛之「さらばモスクワ愚連隊」
野坂昭如アメリカひじき」
等、をつけているので、
まだまだあったようです。
読む方の身になって考えろ。
そんなに詰め込むな。
みたいな。ゆとり0年。

「虚空」は、とりたててなんということもない、はんにゃの名前がなければ、
旧制中高生の習作みたいな作品ですが、死霊の途中で書いたというから、
すごいのかな。台湾の山でなく、阿蘇山でも於茂登岳でも成立する気がします。
他の作品は、阿部公房としてこの作品はさほど、とか、恋の重荷面白いな、とか、
欣求浄土は既読なのですが、こんな面白かった作品との記憶がないです、とか、

頁59
 章がスイッチを消して黙っていると、この若い友人が、自分の感心したというピンク映画を見ることを勧めてくれた。三本立ての最後の番組みで「性の放浪」というのがそれだと云うので、早速映画館に電話をかけて上映時間を確かめておいてから夕食後しばらくして出かけた。しかし実際には定刻に十分ばかりおくれたせいで、館の前の電燈は半分消されていて切符売りは居なかった。章がしかたなしになかへ入って行くと、角刈りの男が菓子売場のケースに白布をかけていた。
「もう駄目か」
「いいです」
 彼が料金の二百円を渡すと百円返してよこした。

(中略)
 章は真中あたりの席に坐り、禿隠しの鳥打帽をぬいで煙草に火をつけて画面に見入った。
(中略)
 真面目な映画だ、と章は思った。

森茉莉も既読でしたが、煩瑣で過剰な文を読み飛ばしていたので、下記失念してました。

頁70
ここのところは永井荷風の気ちがいが遺伝している、という複雑さである。外の音の強弱につれて、寝台を弾く音もいらゝしくなったり、弱まったりするのも、荷風と同じである。(マリアに荷風の遺伝はおかしいが、荷風が自分の部屋でいきだおれて死んだ時、彼が死ぬや否や、彼の空気分解した脳細胞の中の悪い要素が風に乗って、市川本八幡から世田谷淡島に飛来し、それがマリアの頭にとり憑いた、ということも科学的にはともかくとして、情緒的には有り得るのだ)

野田秀樹がミシマについて同じようなこと書いてた気がします。
汽船面白い、小島信夫はなんかすいませんいいです、井上光晴大変ですね、
三浦朱門特になし、近藤啓太郎面白い、曽野綾子面白い、石原慎太郎は現代ではアレだ、
高村薫断筆と同じです。現実が作家の想像を凌駕して幾星霜、いまさら露悪もないだろう、と。
城山三郎既読かな?有吉佐和子いっしゅん西園寺公望の興津坐漁荘を連想しましたが、
尾羽打ち枯らした貧窮ではないので、ちがうかなと。パニック既読。深沢七郎この人にしては。
北杜夫面白い、本アンソロジー唯一の飲酒小説。小川国夫特になし。なだいなだ特になし。
パルタイ、初めて読みました。お噂はかねがね…で、よかったです。こんな機会でもないと、
読まなかった。ボッコちゃん既読ですが、ひさかたぶりに読んで新鮮。瀬戸内晴美
石童丸物語の当該場面検索しましたが、うまい絵がない。水上勉特になし河野多恵子既読。
三浦哲郎この巻でいちばんよかった。これくらい甘い話がいいです。山口瞳既読。以下後報

台湾カルチャーミーティング出席感想
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20160425/1461529991

【後報】
山口瞳は今読み返して、
全社員、とくに江分利みたいな途中入社の給料があがって、どうやら暮らせるようになったことは、すべて偶然にすぎない。
と言われると、いいなあ、そういう偶然、と思います。
池田得太郎は三篇しか小説を発表せず、その後杳として行方がしれないとのことでしたが、
検索したら、1972年から再度作品を発表し、1976年にまた消えたそうです。

池田得太郎
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%A0%E7%94%B0%E5%BE%97%E5%A4%AA%E9%83%8E

山川方夫、嫁さんが、「何よ、腕力じゃ負けないわよ!」と啖呵を切るのがおかしかったです。
ガラスの兎並みに、二宮が空襲を受ける。
永山一郎、享年29歳教師生活のかたわら作品を発表していたとのことで、
しかし私は死刑囚の人と混同してました。以上
(2016/6/25)