- 作者: 火野葦平
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1982/03/01
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
http://www.bunshun.co.jp/book/80akutagawa/
神奈川近代文学館に中里恒子の原稿が展示してあり、それを見て、
読んでみたくなって借りたのがこの本でした。けっこう読むのに時間かかりました。
火野葦平『糞尿譚』
これを書いてから三十路の招集。現地にて受賞を知る。
本書は杭の杭州からの受賞コメントを収録。
そして、長い十五年戦争、この人から失われた感性、暴力的にもぎ取られた繊細な何か、
があったのだろうと思いました。ここにある、酒で身代潰した地主自営業の楽天が、
何処に進んだのか。
中山義秀『厚物咲』
蛭子さんの奥さんお亡くなりになった後のエピソード思い出しました。
中里恒子『乗合馬車』『日光室』
セリフのカギカッコ閉じる前に句点打たず、読点打つマイルールの由来が知りたいです。
頁99、結婚十三年記念をレース婚と呼ぶとは知りませんでした。
http://wedding.gnavi.co.jp/howto/9652/
長谷健『あさくさの子供』
魔少女のくだりは、山田詠美の小説を思い出しました。
でも、山田詠美の主人公小学生は貧乏でなかった筈。
手に負えないガキには、金竜小学校に転校させると脅す場面があり、
金竜小学校は実在しますが、特に検索でその理由は出ませんでした。
この頃は浅草が突出した歓楽の街、ほかでは見られない、児童の登下校時に、
へんなオッサンがよってくるヤバい街と描写されてますが、
今はマス、全国津々浦々なので、日本は豊かになったと思いました。
頁178、螽斯に「おうと」とルビを振っていて、何の虫か分からなかったので、
検索しましたら、キリギリスとかイナゴでした。そして、読みは「しゅうし」
https://kotobank.jp/word/%E8%9E%BD%E6%96%AF-526789
「おうと」の由来は分かりません。なんだろう。
戦前の浅草に、貧困欠食児童のため公費で昼食を出す制度手続きがあって、
この小説の親はそれを恥として断り抜き、児童が腹減らしてて、
週一の日ノ丸弁当デーにその子が嬉々として、普段コソコソ食べる弁当を、
楽しく教室内で使う場面が印象的でした。下記は盗癖児童の学級会。
頁185
国のためですもの。まあいいよ、その心掛けはいいよ、でもあんまり急にいっても駄目、病気の人にいくら薬が利くからって、一ぺんに一リットルも二リットルものませたら大変なことになる位分かるでしょ、それと同じだよ、国のために今日から悪いことは止しなさい、と、みんなが寄ってたかって、どんなに口を酸っぱくしていいきかせても駄目、みんながいつも緩い心で、星子さんとも遊んであげなさい、
半田義之『鶏騒動』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E7%94%B0%E7%BE%A9%E4%B9%8B
作者自裁の地が町田の山崎団地で、本書は番地まで明記してますが、
今と同じ棟のナンバーかどうか分かりません。町田ことばらんど開館時、
記念展に作者の名前も見えましたが、作者単体の特別展示企画は未です。
頁311
婆さんは人の幸福を見て、自分も惠まれた心になるということを初めて経験した。
私の祖先も、「だっぺ」でなく「だんべ」と、そこの部分は違いますが、
だいたいこんな、おーよ、とかいう喋り方をしました。
白系ロシア人との奇妙な交流で、よい小説です。
寒川光太郎『密獵者』
これはカッチリはまった小説なので、特にないです。強いていうなら、
せりふがカギカッコでなく、マルカッコ→()の理由が知りたいです。
この本には各回の選評や、選外一覧、受賞のことばが載っており、
密猟者の第十回はキムサリャン*1が候補作で、
その次、十一回が該当者なしで、ないYO、と、淡々と各選者が記しているのが、
面白かったです。そういうこともあるのか。以上