- 作者: 山口瞳
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1977/10
- メディア: 文庫
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よく覚えてません。読んだのは三刷。
カバー:著者自装 解説:野呂邦暢
タイトルの人のほか、不肖カワバタ、へんくつ山周、高見順、木山捷平、ノラやの人、
について、江分利満氏が書きました、という本。
吉野秀雄 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E9%87%8E%E7%A7%80%E9%9B%84
作者は吉野先生の鎌倉アカデミアに通う傍ら、そこで知り合った女性と、
ギャンブラーとして生きてゆくのでなく、カタギで生きてゆこうと覚悟し、
ハタチそこそこで足を洗おうとし、その生活と先生の先妻死去、
先生の先生の未亡人と先生の再婚、を、オーバーラップさせています。
頁19「小説・吉野秀雄先生」
先生の髭は、若いときに病気のために酒を禁じられ、酒を飲みたいときに気をまぎらわすように髭を撫でるためにたくわえたものだったとうかがったことがある。
山口瞳は俳句でも短歌でも句会で毎回最下位か零点で、ヤケクソになって、
披講でほかの作品をやっつけてたそうです。そしてやめる。
頁36「小説・吉野秀雄先生」
先生は、酒を飲むと、すぐに酔ってしまった。酔ってしまってから、留処とめどなく飲む。強いのか強くないのか、さっぱりわからない。酔うと、先生はどこにでも寝てしまう。先生は、巨大な軟体動物になってしまう。これを動かすのはたいへんだった。
電信柱に巻きついてしまう。これをひっぺがすのは、難事だった。
多感な思春期の娘さんとのちぞえの嫁さんの軋轢について、
しばらく書いていたかと思うと、
頁86「小説・吉野秀雄先生」
長病みの足立たぬわが目の前にあるべきことか長男狂ふ
わが生ももはやこれまでか二階より放火を叫ぶ子の声ぞする
狂ふ子を警察官等抑へ連れ去りぬいかになりゆく子とわれと妻
糖尿とかいろいろあって、永の寝たきりから、死にます。
川端康成のところでは、晩年、ウイスキーを飲む訓練、の推測がありますが、
睡眠薬については記載なしです。江分利満氏はそれをしらなかッたりして。
川端が舟橋聖一の『寝顔』にハマる場面があり、読んでみようかと思いましたが、
何に収録されているのか分かりませんでした。カワバタの嫁さんは、
お好きな人参のナマをぽりぽり噛りながら
台所仕事をされるような明るい気さくな方だった。そうです。
あと、天才的な、金借りて返さず生活する山口瞳の父が、
川端から息子の直木賞をネタに寸借詐欺するくだりも、
エンタメの鑑賞に堪えうる描写で書かれています。
山元周五郎は、頁168、嫌いな役者が樅ノ木は残ったの主役になったとあり、
しかしこの小説は複数回映像化されてるので、誰か分かりませんでした。
横浜の家の跡もすぐ分かるかと思ったら、意外に出てこなかったです。
それぐらいでしょうか。以上です。