『夫の悪夢』読了

*昨日から、私のはてなダイアリーの"font-style:italic;"が反応しておらず、
 引用部分のフォント分けが効かなく、ナナメの字も普通と同じに見えています。
 ⇒IEで見るとちゃんとナナメになっているので、
  グーグルクロームの表示の問題かもしれません。翌日。

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夫の悪夢 (文春文庫)

夫の悪夢 (文春文庫)

読んだのは、ハボタンの上に天使の消しゴムみたいな写真の表紙の単行本です。
カバー写真:安井進 装丁:大久保明
2010年4月25日初版
「ミセス」平成19〜21連載にほかのエッセー、書下ろしを加えた本。

文庫本の表紙は米国カーメルの写真館で開拓民にコスプレした写真との由。

単行本頁7に、
1987年に渡英したときの私のパスポート写真。どこの国に行っても、入国審査官がこの写真を見るや笑い出した。
という母子四人の写真があって、男の子のオカッパやふくよかさがゴイスーなので、
こっちを表紙にすればよかったのにと思いましたが、
国家の品格が写ってたほうが売れるだろうし、
こどものどれかが反対したのかもしれないな、と思いました。

諏訪で下記講演のポスター見て、何か読もうかと検索して、借りた本。

信濃毎日新聞-2017/02/05
「諏訪女性の意志の強さ見た」 藤原ていさんしのぶ
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170206/KT170205SJI090004000.php

なんとなくタイトルを見て、岡田英弘『妻も敵なり』を思い出しました。
右曲り括りで。でもこのマダム国家の品格は、宮脇淳子ほど旦那に思想面で、
シンクロしてない気はしました。経済面で運命共同体ではあるけれども、
思想面で「あんた、やんなはれ」背中を推して火打石カチカチではなさそう。

頁20
「武士、武士と言うけれど、所詮、足軽でしょ。そう偉そうに言わないでよ」と、私は腹の中に溜まっていたものを吐き出すかのように言った。「そうだ、足軽だ。馬も与えられない身分だから、馬の横を槍や刀を持ってひたすら歩く。だから藤原家は代々、足が強いのだ。そう、お前の言うとおり足軽の子としてしっかり鍛えなければならないのだ」と、夫は私の言葉に自説の正しさを再確認したかのようにうなずきながら言った。私が何を言ってもまったく無駄であった。

嫁さんの実家は鎌倉ですから、諏訪高島藩もいいけど、いいです。
ここ読んでて、こんなに気張るのは、ヤッコのように圭角を立てて気張るのは、
生産活動にまるで従事せず(除く内職)、国防のプロであるはずが、黒船来航では、
たった四杯で夜も眠れず、となるほど役立たずで、かといってナマムギテロルを、
礼讃しては国家の品格に逆行するし、明治以降の日本軍の強さは、
當然国民皆兵の結果ですし、それは奇兵隊なんかも同様、百姓に銃を持たせた成果、
武士がどうこうしたアレではない、という事実を受け止めたからこそ、
国家の品格みたいなことを声高に言わざるを得なかったんだな、と思いました。

著者の祖母は会津なので、震災や八重の櫻以前に、
逆臣会津の明治以降舐めて来た苦杯について言及する箇所があります。
私は、会津若松聯隊が、まるで懲罰のように、常に危険な最前線に送られていたことを、
何かで読んでぞっとしなかったことを思い出しました。

頁67「健康のためなら死んでもいい」という使い古されたジョークを、
国家の品格が口にする場面があります。これを読んで、
憂国忌のミシマが、文春砲の取材に対し、日頃のボディビル等について、
「健全な肉体に不健康な魂は宿る」と、これも人口に膾炙したことわざを、
かなりどうでもいい感じにテキトーにもじったジョークで答えた逸話を、
思い出しました。別に両者に共通点や似たところがあるわけではないですが。

下記は、夫婦京都旅行でパンピーに見つかって、「これが愚妻です」
と紹介されたことに腹を立てた筆者の詰問に、妻と紹介しなければ、
不倫相手と誤解されてマスコミにミスリークされるかもしれない、
と抗弁する数学者とのやりとりの、論点がずれてゆくくだりです。

頁73
 確かに夫は、労働者のようにたくましい手を持つ私と違い、箸と鉛筆くらいしか持ったことがないお思われるほど細長くて綺麗な指をしている。しかしその繊細な指からは想像もできないほど、手先が不器用なのである。驚異のフィンガーテクニックなどと言って意味深に笑うけれども、とんでもない。第一、靴紐を結ぶのがやっと、といった調子なのだから。

すごくガッシリした人に見えるのですが、意外でした。眉ももみあげも太いし。

藤原正彦 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%8E%9F%E6%AD%A3%E5%BD%A6
Wikipediaに画像はありませんが、まあ探せるだろうので。

頁80、数学者英国留学時から家族ぐるみで交流してるイギリス人の、
オタクの息子が十七歳の夏、日本ホームステイするくだりでは、
ヒカルの碁』に啓発されてイゴを始めたとあり、その四年後、
オックスフォードを卒業して来日したその子は、『オバタリアン』を、
来日そうそう買い込んだとあります。これ、時系列おかしくないかと思いました。
それか、その子は、日本の四コマ漫画の系譜を、
何か壮大なライフワークにしようとしてるのか。女には向かない職業、
というサラ・パレツキーとほぼ同名の四コマをいしいひさいちが書いていて。
ヒカルの碁の四年後にオバタリアンて、そうでなければ説明がつかないだろう。
どうゆうふうにマンガ読みとして深化したのか。ネ暗トピアとか、
岩谷テンホーとか買いまくったのかなあ。

夫の虚像を壊しまんた、てへ💛みたく、作者はあとがきで書いてますが、
一片の悔いもないようで、不安とか焦りとか一切書いてません。
この夫婦に闇はないのか。いいなあ、と思いました。以上