『マンガがあるじゃないか わたしをつくったこの一冊』 (14歳の世渡り術) 読了

高野秀行を検索したら出てきた本。書評集というのは、対象が未読の場合、
読みたくなるので、読まないようにしてて、だからダヴィンチも読まない、
ボーツー先生と福田和也の対談集『不謹慎』もまだ手をつけない、
そうやっておとなしく暮してますが、これはマンガなので、
なんとかなるだろうと、ついうっかり読みました。あ〜あ。評者29人。
カバーイラスト:ヤマザキマリ デザイン:高木善彦

カバー折り返し〜Message〜
『先生や親は教えてくれない いざ広大なマンガの世界へ 人生がそこにある』

なぜ二重鍵括弧。
(1)

白エリと青エリ 1

白エリと青エリ 1

評者:木皿泉
労働に関する価値観と絡められたマンガとの由。
従来のワーキングマンガとしてシマコー、働きマン槇村さとるを挙げ、
それに対しこのマンガは、タイトルからしてホワイトカラーブルーカラーとのこと。
未読なので、書店在庫検索した上で、さっきアマゾンに注文しました。

(2)
エースをねらえ!
評者:光浦靖子
仕事と出産育児、仕事と結婚恋愛、古くは部活・勉強と恋愛。
女はいつだって「両立」を求められ、苦しんできたとあり、
そこへの解が宗方コーチの言葉として次々登場とのことで、
バシバシと引用されることばひとつひとつが胸を打ちます。
ルポ『消えた漫画家』で考察された作者と父親のグルイズムとか宗教とか、
そういうことはいったん棚上げして、宗方コーチの言葉に
魂を震えさせてみては如何でしょうか、との評者の思いが伝わります。

「男なら女の成長をさまたげるような愛し方はするな!」

「女がひとつの道なり仕事なりをつらぬこうとしたとき(中略)
 女であることをこえなければならない」

「恋をしてもおぼれるな
 一気にもえあがりもえつきるような恋はけっしてするな!」

「わすれるなよ
 テニスで挫折すれば恋にもやぶれるぞ
 女に価値があれば男はまつ
 またせるだけの女になれ」

「だれも女は女ゆえの悩み弱みを持って女ゆえに苦しみ
 そこで血を流しきる
 だがおまえはまだその先へすすまねばならないのだ
 女ゆえの悩み弱みをこえなければならないのだ」

評者はこのマンガを読んで元気をもらう自分に苦笑して、
20も年下の高校生の女の子に励まされる大人もどうかと思いますが、
と書いてますが、絶対選ばれし女として、このまんがを読んでると思いました。

(3)
河童の三平
評者:ヤマザキマリ
イタリア留学中、同様の邦人留学生から勧められた漫画との由。
正直、そんなすごい漫画かなあ、と思いますが、私もかなり忘れてます。
現在では貸本版とかいろいろ復刻され、河童の三平とだけ言われても、
どれ? みたくなってるのですが、評者はあまり気にしてなくて、
そういうツッコミ嫌い、男ってまったく… と返すタイプのような気がします。
イタリアの農業万博を取材する評者をテレビで見た時の印象で、
なんとなくそう思う。
いちおう、ちくま文庫とあるので、ちくま文庫河童の三平です。

(4)
HUNTER×HUNTER
評者:坂東巳之助
あんまり読んでないし、まだ当分ちゃんと読むつもりはない漫画です。
幻影旅団は分かるのですが、評者の心に残るという、ジャイロとゲンスルーは、
全然誰なら状態です。

(5)
さいとう・たかをが1963年、
小学館のボーイズライフに連載した『007』シリーズ
評者:みなもと太郎
復刻されてるそうです。*1007はたんなるダシで、
みなもと太郎が語りたかったのは漫画史。ストーリー漫画、
大長編漫画は海外にもなくて、手塚治虫ライオンキングジャングル大帝』で、
初めて連載でのそれを試みた。1950年連載開始で、完結迄五年。
単行本がすべて出揃ったのが17年後の1967年!!!
さいとうたかをの劇画運動をこの後語ってますが、メインはここかと。
頁44、どんなジャンルも、その始まりは一人の人間の努力です。
原来如此,彼此,彼此。なんちて。

(6)
『ダンドリくん』*2
評者:吉川浩満
懐かしの週刊アクション黄金期漫画。久住昌之によると、泉晴紀は、
日清カップヌードルの具の数の増減などに非常に細かいそうで(当時)、
滋賀県の工場で働いてた人が、あれは熟練工が、ベルトコンベアーで流れてくる、
ひとカップひとカップ、手でマニュアルどおり決められた数をぱらぱら、
つまんで振って落としてる、と言っていて、ホントかよと思った覚えがあります。
評と関係ないこと書きました。

(7)
動物のお医者さん
評者:荻原規子
実は私は忘却シリーズもペパミントスパイも当時全巻持っていて、
動物のお医者さんでブレイクした作者を、眩しく見送った覚えがあります。
評と関係ないこと書きました。

(8)
学研の学習まんが『埼玉県のひみつ』
評者:辛酸なめ子
こういう立ち位置で仕事をする人がひとりぐらい本書に混ざっていてもいい、的な。
未読なのでアマゾン見ましたら、学研のサイトで無料で読めるとレビューがあり、
あらあら親切ね、とウェブでさっき読みましたが、字がかすれて辛かったです。

(9)
赤ちゃんと僕
評者:オカリナ(おかずクラブ)
ましろの音の作者の赤朴は、今さら説明不要な気もします。
それより、評者は現役の漫画読みなので、ほかのマンガも熱く語っていて、
団地ともお』『封神演義』『烈火の炎』『キングダム』は分かりましたが、
それ以外にも、下記を列記してくれてるので、とりあえずその辺のブッコフ探します。

汝なやむことなかれ (1) (マーガレットコミックス (3169))

汝なやむことなかれ (1) (マーガレットコミックス (3169))

否、下記。
透明なゆりかご(1) (KC KISS)

透明なゆりかご(1) (KC KISS)

これは唯一書店の在庫検索に引っかかったのですが、
なぜかアマゾンに注文しました。すいません。(10)
火の鳥 鳳凰編』
評者:中野京子
誰かが書かねばいけない手塚治虫。図書館にもあるだろうし。
頁148に神保町の漫画専門古書店が登場しますが、
そこのオススメと同じ朝日ソノラマの大判。同感です。
あと、評者を、中島京子に空目しました。すいません。

ここで吉祥寺の、アメコミなんかも充実してる新刊書店の紹介があります。

(11)
自虐の詩
評者:中条省平
ヒロインが幼少時耐えきれなくなるとゲロ吐く描写忘れてました。
評者、堤幸彦映画は、どんな感想か知りたい気もします。
あんな簡単に解毒出来るか。

(12)
風雲児たち
評者:佐渡島庸平
評者は元編集者で、このマンガは、初代ワンピース担当から勧められたとか。
吉田松陰が印象的だったとの由。他の印象的キャラとして上げた人物の中に、
田沼意次がいて、ちょうど田沼が連載で出てた頃、私は立ち読みしてました。
坂口尚『石の花』が、ドブロヴニクの風の前あたりで、
どこかから風は吹いてくる予感がする、と、被拷問者がそれでも語り、
違う、秩序を作るのは力による虹だ、とナチスが断罪する場面読んで、
絵が凄いと思ったのを思い出します。評と関係ないことですが。

(13)
『ロスト ハウス』
評者:香山リカ
御三家で出てくるのはここの大島弓子のみ。私は毎日が夏休みのほうが好きです。
金子修介の映画もよかったし。

(14)
アドルフに告ぐ
評者:春風亭一之輔
ゲットーに送られるユダヤ人芸術家の名前がユーリ・ノルシュテインだったりとか、
絶対に手塚はどこかで不真面目ポイント入れてくる、そういう紡ぎ手なのだ、
と、今でも思っています。次々銃殺される中で、女性が、なんとかバンザイ、
とか叫んでみたり。そういう演劇性も絶対に捨てられない。
評者はまじめに語ってるのですが、私はそんな感じです。
海行かば 水漬く屍 山行かば 草生す屍のコマの絵が印象的でした。

(15)
日出処の天子
評者:サンキュータツオ
このマンガの面白さを語る上で、同様に面白いとしている、
君に届け』『アオハライド』ふたつとも知らないので、
読もうかと思いました。でもたくさん巻が出てるから、
漫喫でも行かないと無理でしょう。で、たぶん行かない。

で、私は、山岸涼子の漫画の中で、これは読んでません。理由はない。

(16)
ちびまる子ちゃん
評者:ヨシダナギ
下記のようなキャラが出てくる少女漫画があり、なんとかなることに、
作者は救済をみたそうです。自分の。

フリフリの服を着たブス。
語尾がおかしいブサイク。
鼻水を垂らした陽気なアホ。
すぐ泣いちゃう礼儀正しい女の子。

私は、『つる姫じゃ〜っ』とか読んでたので、少女漫画のぶさいくは、
そりゃあるさ、と思っていたので、気づきませんでした。
さくらももこが、エッセイマンガばかり投稿して、フィクションも読んでみたい、
と編集者に言われながら結局エッセイマンガでデビュー、これでブレイク、
というかたくなな個性を持っていたことは、よく覚えています。
彼女に先行した岡田(米須)あーみんは素晴らしかった。
そして彼女のあとがNANAの人。

(17)
うしおととら
評者:細谷佳正
恥ずかしいくらいにストレート、同感です。

(18)
赤塚不二夫『ギャグゲリラ』
評者:長尾謙一郎
『情熱のペンギンごはん』や谷岡ヤスジを交えて話してくれるので、
赤塚論だけだと食傷気味の人にもついていけると思います。

情熱のペンギンごはん (1980年)

情熱のペンギンごはん (1980年)

(19)
釣りキチ三平
評者:佐藤克文
評者はこのマンガで水産学の道に入ったとか。
その評者の眼から見ても、このマンガの科学的記載は、
一箇所しか間違いがないそうです。全65巻。1973年から10年間の連載。
それで現代から見て一ヶ所きりって、とんでもないセンスだと思いました。

(20)
とらドラ!
評者:宮田俊哉(Kis-My-Ft2)
読んだことないので、今度ブッコフで探してみます。
アマゾンレビューを見ると、原作のラノベまで進まないと、
損するみたいな感じですが、とてもとても。あとアニメとゲームもあるとか。

ここで神保町の漫画専門古書店の話。

(21)
滝田ゆう『寺島町奇譚』
評者:永江朗
『墨東綺譚』から辿り着いたとの由。

(22)
プロゴルファー猿
評者:高野秀行
評者は小学生の頃、この漫画の模倣をして遊んでいたそうです。
そんな奴がいたとは思わなかった。
手製のゴルフクラブで、野山を勝手にコースに見立て、
ゴルフ練習場に落ちてたボールで、冒険狙いのショット連発で。
ありえない。

(23)
人間交差点 Human Scramble』
評者:水島裕
原作者が、教師びんびん物語の脚本を書いていたとは知りませんでした。
評者は声優として大御所なので、わこうどへひとこと、も添えています。
そこが???でした。漫画評と関係ない、若者言葉への注意だったので。

(24)
平田弘史三十三間堂外伝』
評者:西智子
評者は現代マンガ図書館のスタッフ。内記から、明大になったんですね。

頁176
 最近は婚活ばやりで、先日、私の大学二年生の知り合いが、なんとサークルをやめてすでに婚活を始めていると聞きました。就職する気がないから早く始めているのかというとそうではなく、彼女は就職もする、でもその後結婚できなければ老後の生活が厳しいからといって、婚活を今から始めている。武士の世界と同じくらい大変そうです。いっそ、婚活も、平田弘史の作品のように「狂ったか!」と言われるほどに情熱を燃やすことができれば……。

んなアホな。と思いました。14歳でこれ読む読者がもしいたら、
何を感じるでしょうね。そんな情熱はストーカーになるのがオチとか思うだろか。

(25)
グラップラー刃牙
評者:飲茶
わたくし事ですが、「刃牙」が一発変換出来て、驚いています。
評者は、この漫画が、「強さのインフレ」を、哲学によって超克したと、
高く評価しています。「強さとはそも何か?」に話をスリかえ…
アレすることで、インフレの前提条件を突き崩しているわけです。
私は、強さ=オーガじゃないでしょうか、とヘソ曲りに考える春の夜。

(26)
のび太の恐竜
評者:大橋智之
いましろたかしの映画主演の、もう、俺ハエでいいやの人?ではなく、
恐竜研究の学芸員。評者は恐竜漫画だったら何でも読んでそうですが、
岸大武觔、所十三、あとコレのほかは、私には思いつきません。

(27)
銀の匙 Silver Spoon
評者:奥平邦彦
評者は八軒くんのお兄さんに感情移入してるようですが、
私なぞはそうやって世間を渡っていけなくなって、
残念閔子騫としか言えぬ、です。

(28)
花男
評者:蒼井ブルー
すいませんが、これを薦める奴がいるとは思わなかった。
ピンポンなら分かりますが。
根本敬の『天然』を思い出すので…

(29)
『幕張』
評者:宇野常寛
評は「稲中」と本作を対比させる構成で、ホモソーシャル宇宙の謎に迫る。
やっぱりネット、SNSがこういう世界を破壊したんじゃいか、と思いました。

以上

*1:

*2:

ダンドリくん (上) (ちくま文庫)

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ダンドリくん (下) (ちくま文庫)

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