『贈る物語 Terror』読了

贈る物語 Terror みんな怖い話が大好き (光文社文庫)

贈る物語 Terror みんな怖い話が大好き (光文社文庫)

読んだのは単行本。コニーが『混沌ホテル』*1序であげた、
シャーリー・ジャクスン『くじ』所収。なので、読みました。
既存のアンソロジーに収められている話、
比較的入手可能なアンソロジーの作品を集め、それらを、
有名なはなしだけども読んだことない人、一生縁がないかもの人にも、
天下の宮部みゆきの名前で読ませてしまい、
芋づる式に元アンソロジーまで読ませてしまへ、的な企画みたいです。
それくらい宮部みゆきの名前はゴイスーと思います。
図書館の人も、私に、へー宮部みゆきこんな本も書いてるんだ、
みたいな感じでしたので、いやいやこれは「編」でござます、
と、説明したりしました。クリスマス刊行とのことで、
随所にメリクリ的な文章があります。この贈る物語は三部作で、
ほかに綾辻行人編 "Mystery" 、瀬名秀明編 "Wonder" がありますが、
文庫化されたのは二冊です。売れた売れないの問題なのか、
版権の問題なのかは分かりません。有名な作品ばかりのはずですが、
私はサルの手と、のど切り農場しか知りませんでした。我害羞。
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334741433
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334741631
光文社公式に、セットリストがないのは残念です。なんで書かないかな。

<収録作品と感想>
猿の手』W・W・ジェイコブズ 平井呈一
"The Monkey's Paw" by William Wymark Jacobs
 ⇒知人がむかし同人誌に書いた猿の手2を思い出しました。あれはよかった。
『幽霊ゴーストハント』H・R・ウェイクフィールド 吉川昌一訳
"Ghost Hunt" by Herbert Russell Wakefield
 ⇒私がホラーを読まないのは、こういう幽霊が怖いからです。
  https://books.google.co.jp/books?id=uVCeBAAAQBAJ&lpg=PT65&dq=Herbert%20Russell%20Wakefield%20Ghost%20hunt&hl=ja&pg=PT65#v=onepage&q=Herbert%20Russell%20Wakefield%20Ghost%20hunt&f=false
『オレンジは苦悩、ブルーは狂気』デイヴィッド・マレル 浅倉久志
"Orange is for Anguish, Blue is for Insanity" by David Morrell
 ⇒ランボーの原作を書いた人だそうで、だからか、
  最後の決死の緩解、こんなに苦しい"One day at a time"はないな、
  しかし、主人公の、生きねば、という思いに打たれます。 
人狼フレデリック・マリヤット 宇野利泰訳
"The White Wolf of the Hartz Mountains" by Frederick Marryat
 ⇒スマトラまで流浪する東欧出身のデラシネ、正しい妹萌え
  隠れ家が闖入者によって一瞬にして脱出不能な煉獄に転化する瞬間。
  等々、よく出来てるな〜と思いました。
『獲物』ピーター・フレミング 吉川昌一訳
" " by Peter Fleming
 ⇒これの原題が分からず、あれこれやってるうちに草稿消してまいました。
  1976年のトクマ「一ダースの戦慄」というアンソロジーから採ったそうなので、
  そっちを見れば分かるかしれません。
☆ここで、巻頭言は実はゲームから来てるんだよん、
 ゲームザデイナーって、実は読書家なんだよん、
 というコラムがあります。ぼくドラえもんです。
『羊飼いの息子』リチャード・ミドルトン 南條竹則
"Shepherd’s Boy" by Richard Barham Middleton

http://www.bookrags.com/ebooks/11045/41.html#gsc.tab=0
And shepherd he used to come down here and have his glass, for he took it then like you or me. He’s blue ribbon now.
“It was one night when the mists were out on the hills, and maybe shepherd had had a glass too much, or maybe he got a bit lost in the smoke. But when he went up there to bring them home, he starts driving them into the pit as straight as could be.

 ⇒青字が、邦訳で「禁酒党ブルーリボン」と訳されている単語です。
『のど斬り農場』J・D・ベリスフォード 平井呈一
"Cut-throat Farm" by John Davys Beresford
 ⇒主人公の時間軸にあわせて世界がカタストロフィを迎える展開が、
  ふつうに不思議でした。最初に読んだ幼少期。
  食べ尽したらこの主人どうするんだろうと思ったので。
デトロイトにゆかりのない車』ジョー・R・ランズデール 野村芳夫
"Not from Detroit" by Joe Richard Lansdale
 ⇒逆襲してしまうので、痛快な、健康的な作品。
  しかし、個人の方の翻訳まとめサイトは本当にすごい。
  これの原題もぱっと出てきた。
『橋は別にして』ロバート・L・フィッシュ 伊藤典夫
"The Bridge That Went Nowhere" by Robert Lloyd Fish
 ⇒落語の頭山みたいな話だなと思いましたが、杞憂のほうが近いんでしょうか。
『淋しい場所』オーガスト・ダーレス 永井淳
"The Lonesome Place" by August Derleth
 ⇒このお話のマクラで、編者は、男の子と女の子とで、
  近寄ってはいけないと教えられる場所のレベルの違いについて言及しており、
  確かにそのとおりなのですが、高槻だか寝屋川の男女中一事件の例など、
  どの性も決して無防備ではいられないと思っています。備えあるべし。
 (現代だからとかでなく、実はむかしから。ポテンシャルの多寡のみ)
『なぞ』W・デ・ラ・メア 紀田順一郎
"The Riddele" by Walter de la Mare
 ⇒ピクニック・アット・ハンギング・ロックかっ、と思いました。
  それはそれとして、個人の方の翻訳リストサイトは凄いなと思います。
☆ここで、出版時のホットな話題、社会思想社倒産、
 現代教養文庫絶版について触れ、下記マーロン・ブランドの映画が、
 下記小説の承前であることに独力で気づいた経験を書いています。

*2
ねじの回転 (新潮文庫)

ねじの回転 (新潮文庫)

『変種第二号』フィリップ・K・ディック 友枝康子訳
"Second Variety" by Philip K. Dick
 ⇒これは面白かった。戦争ものだからでしょうか。
 「遊星よりの物体X」は未見ですが、「からの」は見てるので、
  それを思い出しました。後半、もう見え見えで、
  隠す必要もなくなって来てる段階で、登場人物が負傷から、
  朦朧として、気づけなくなってる展開は、
 「志村〜、うしろ、うしろ」だと思いました。
  私はハガキ出したことありませんが、出せば即当たるらしく、
  ただ、演場は埼玉県が非常に多かった記憶があり、
  で、土曜夜八時生放送でしたので、
  終わった後神奈川まで帰るのが大変だったろうです。
  子どもの夜間外出に今より厳しい時代でした。ファミレスないし。
  行ってた子どもとおうちと行かない子どもとおうちの差異について、
  ふと考えたりします。
  電車では㍉なので、クルマで、運転者がいないとダメなので、
  マイカーはまあ、前提なんですが。
『くじ』シャーリー・ジャクスン 深町 眞理子訳
"The Lottery" by Shirley Jackson
 ⇒正直、よく分かりませんでした。
  英文のWikipediaに、この小説が引き起こしたショック反応についても、
  書かれてるのですが、それを読んでもよく分からない。

  The Lottery Wikipedia
  https://en.wikipedia.org/wiki/The_Lottery

  アメリカ人の伝統的な共同体の多くはキリスト教を信仰しているはずなので、
  下記を日曜日とか読んでるだろうので、それでそんなことするってえのは、
  いってえぜんてえどういう了見なんでえ、と思ったので。

  罪の女 姦通の女 Wikipedia  
  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BD%AA%E3%81%AE%E5%A5%B3#.E5.A7.A6.E9.80.9A.E3.81.AE.E5.A5.B3
  英語で聖書を読もう!
  ヨハネによる福音書第8章
  A Woman Caught in Adultery
  http://www5f.biglobe.ne.jp/~jesus/John/John_08.htm
  Bible Hub John 8:7
  http://biblehub.com/john/8-7.htm

『パラダイス・モーテルにて』ジョイス・キャロル・オーツ 小尾芙佐
"At the Paradise Motel, Sparks, Nevada" by Joyce Carol Oates
 ⇒ほかとはちがう作品。なぜ編者がこれを採ったのか、推測するのもよいかも。
  私は、作中女性と同じタイプの女性と、作者のタイプの女性との、
  距離感をぼんやり考えました。ヘタな同情してムカつかれて、
  便所呼び出しくらってリンチされてびしょ濡れ経験とか、学級委員タイプだと、
  ときどきあるんじゃいかなと思うので。で、とがってた奴が野に放たれて、
  凶暴性が社会との摩擦を経て研磨されて角がとれてまるくなって、
  弱くなって助けを求めて、みたいなときを見たのか、あったのか、等々。

以上。バニッシュした記事を翌日復旧です。