『ホテルジューシー』 (角川文庫) 読了

ホテルジューシー (角川文庫)

ホテルジューシー (角川文庫)

カバーデザイン/石川絢士(the GARDEN)
あとがき、文庫版あとがき有
解説 藤田香織
たぶん野生時代連載

作者の小説をふたつ読んで、ほかのも読みたくなり借りた本。
和菓子のアンがデパ地下、切れない糸が商店街クリーニング店。
私がこの作家を讀もうと思ったきっかけの、他の方のブログの紹介本、
ワーホリが宅配業なのかな? 作者はお仕事ミステリーが好きなようで、
それで、これは沖縄ものと聞いていたので、すぐ「ジューシー」は、
池上永一がエッセーで、ジューシーフーチバーを作ろう、
なんて書いているあのジューシー、ポロというか、ピラウというか、
ビリヤニというか、炊き込みご飯というか、混ぜごはんというか、
かやくごはんというか、その「ジューシー」だと分かったのですが、
それだと、表紙の英文が"Hotel Juicy"ではイカンだろうと思いました。
主人公は、ラブホか連れ込みか逆さくらげ♨かと、最初訝しみます。

https://kotobank.jp/word/%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC-526809
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC
https://en.wikipedia.org/wiki/Zosui#J.C5.ABsh.C4.AB

これまで読んだ二作と異なり、作者がラブワゴンやらなんやらに、
かなりチビシー視線を向けていることが分る、けっこう洒落んならん展開、
結末が待ってたりしました。沖縄ヤクザにガラさらわれてそのまま、
彼のその後の行方はようとしてしれない、とか。一部ほのぼのミステリーじゃない。

石垣のリゾートホテルバイトで学生生活最後の長期休暇を埋めようと目論んだ、
「長女」キャラの主人公が、よく分からない地元人間関係の要請で、
那覇の半分ビジホ、半分船で到着すると客引きが連れてくような宿、
に異動となり、未経験でよくこんな事務職と接客あっというまに習熟するなあ、
という感じでテキパキバリバリ仕事をこなして、探偵役のオッサンが、
謎解きをします。私も有能な人材だったら、西表でキビ刈り終わった時、
自動的に石垣のタバコ摘み紹介してもらえたのかなあ、なんて。
「そうと早くに知ってたら紹介出来たんだけどね〜、もう埋っちゃって」
という返事を、この感想書くまで信じてました。あれはただのフォローだったのかも。

地元民も出ますが、私が思うに、沖縄の人を描くという点においては、
池上永一や、芸人でない方の又吉など、人材がいらっしゃいますので、
あえて、沖縄の内地人社会にポイントを置いて、描いた気がします。

頁128
「だって一番混んでるときって、わけのわからない店にも観光客が入ってくるからさあ」
「はい?」
「だからあ、街が混んでるとさ、観光客が広い範囲でうろうろするでしょ? それでもって、探検気分でうちみたいな店にも入ってきちゃう人がいるんだよ」
 まがりなりにも店なんだから、「入ってきちゃう」という言い方はいかがなものか。
「ほとんどは入り口から覗いて帰っちゃうんだけどさ、中には臆さないタイプの観光客や放浪志向の若者とかもいて、語りかけてくるわけ」
 そういうの、嫌じゃない? というオーナー代理の言葉に私は黙って眉間に皺を寄せた。

国際通りも、内地人の土産物屋が内地人の観光客を相手にし、
内地人の観光客を内地人のナンパ師がナンパする。
その次は、ハンビーマーケットで、このフリマ、私は知りませんでしたが、
人種のるつぼみたいな場所ながら、この話でスポットが当たってるのは、
ナイチャーのスーベニア売りつけ屋。

昼の写真だと何も想像出来ませんでした。

頁174
「夜型社会、なんですかね」
 ドクターペッパー片手のオーナー代理が軽くうなずく。
「こっち、暑いからさ。朝からお店やさんごっこやってたら、倒れちゃうでしょ」
 言われて見れば確かに。強烈な日射しを避けるには、陽が落ちてからの方がいいのかもしれない。
「それに暑いと食べ物はすぐ腐る。だから揚げ物が多いんだよ。ファストフードも、それで馴染みやすかったのかもね。ポーク玉子に使われてるスパムは、缶詰だから長持ちするってことで愛されてると思うし」
「そういうことだったんですか」
 気候で読み解けば、沖縄のアメリカナイズされた嗜好も簡単に理解することができた。

キビ刈りの食堂にもこの小説の比嘉さんみたいな人がいましたが、
ナイチャーの出稼ぎ向けに仕入れが気をきかして持ってきたサンマを初めて見て、
一匹を半分にぶったぎっていいと考えず、長すぎてグリルで焼けんと思い、
迷わず一本そのまま油に落として素揚げにしてました。
あと、仕出し弁当のギョーザが、必ず揚げギョーザだったです。
その次は、夢を追いかけて脱OLで沖縄に来た女性と、夢とはまたとは違うけど、
沖縄に来て屋台やってる男性。

頁261
「俺はね、こっちに骨を埋める覚悟で来てるんだ。だから手続きや近所づきあいも、面倒だけどやってる。中にはあんまり嬉しくないつきあいもあるけど、地元に溶け込むためには必要悪みたいなもんだね」
「すごいですね」
「でも、暮してくってそういうことだろう? 旅行じゃないんだから、甘い上澄みだけ味わっているわけにはいかないっていうか」

これまで読んだ作者の小説からは、この後の裏切りは想像出来なかったです。
花村萬月🌕が、あの人もわけもなくちょくちょく那覇に行ってたらしいのですが、
沖縄プーソーの女性についてエッセー書いていて、それは内地人女性ではなかったです。

こんな調子で連作が進んでいくからか、はたまた、ある個所で、
旅行口コミサイトの口コミについて、従業員側の視点から、バッサリ切ってるからか、
Yahoo!知恵袋に本書について下記質問があり、常識的回答がついたものの、
タイトル検索で常時上位にあります。だから私もすぐ見つけた。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1342827253

あとこの作品で書かれてない内地絡みって、なんだろう。
「なんでこっちは泡盛ばっかなんだ、清酒ないのか清酒は」
と酔って怒鳴るおっちゃんが日頃芋焼酎ばっか飲んでる九州人だった、とか、
キノコにまつわるあれこれとか、ですかね。ステーキは、私は、
沖縄では安いのしか食ったことないので、薄かったです。残念閔子騫

頁271で、オーナー代理と隣の南海旅行社の人が、「晩安」「晩安」と挨拶する場面。
やっぱり下記を思い出しました。早く見たいなあ。


最後に、料理の引用します。これ食べてみたいです。小説のほうのやつ。

頁67
 一体、私は何を食べてるんだろう。どんぶりの中を観察すると、下から順にポーク野菜炒め、トンカツ、野菜炒めの卵とじとなっている。しかも一番下の野菜炒めにも豚の三枚肉がふんだんに使われているから、三段重ねのお肉攻撃だ。
(ていうか普通、重ねないよね?)

クックパッドもそうでしたが、普通そこまで重ねないみたいです。
知らない料理でしたので、検索しました。

沖縄ちゃんぽん | お酒にピッタリ!おすすめレシピ | サッポロビール
http://www.sapporobeer.jp/recipe/0000000888/index.html
【後報】
思い出しましたが、この小説に出てこない沖縄内地人として、
サーファーがいます。
あと、コールセンター勤務のオキナワン出して欲しかった。
(同日)