「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」(I, TONYA)劇場鑑賞

公式
http://tonya-movie.jp/
Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4,%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%A3_%E5%8F%B2%E4%B8%8A%E6%9C%80%E5%A4%A7%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%AB
海老名
下記が煽り文句。

彼女は世界中から愛され、一瞬にして世界中から憎まれた。

フィギュアスケート史上最大のスキャンダルの真実が明かされる!

別に、特に明かされるわけでもないかったです。天安門事件の映画で、生き残った人が何か後付けで云うが如し。
私はこの映画が観たかったので、見れてよかったです。私にとって、トーニャ・ハーディングはそれいっこの固有名詞でなく、トーニャ・ハーディングナンシー・ケリガン襲撃事件」という長文シラブルで覚えられているものですので、トーニャ・ハーディングナンシー・ケリガン襲撃事件」に至る彼女の人生を存分に堪能することが出来ました。
最初、取材に応じたふうにカメラに向かってべらべらさべる各人物を、ホンモノかと思ってしまいましたが、そこからして役者さんでした。デッドプールばりに、各人物しょっちゅうカメラのこちら側の私たちに語り掛けてきます。とくに社会的に人生を抹殺された瞬間のトーニャが、「世間」にスポイルみたいな字幕なのですが、台詞は"You"、オマエラとハッキリ言いながらこっちをそらさず見つめてきます。さいこうでした。
リレハンメルの演技も忠実に現実を模倣してますので、学ランのセイガクみたいなコスチュームで、両手を前で重ね合わせてぐっと握りしめているあのポーズ!当時も今と同じく「アイコラ」という技術が存在してまして、デジタルではなく、ハサミと糊でチョキチョキやるわけですが、それで彼女の握りしめた両手に鉄パイプを置くと、あら不思議、ちょうど中段の構えになるです。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/8f/Kendokas_en_garde.jpg/450px-Kendokas_en_garde.jpg
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E8%A1%8C%E3%81%AE%E6%A7%8B%E3%81%88
で、頭にトマホークよろしく、ブーツタイプのフィギュアスケートの靴を載せると、彼女の号泣した顔がいっそう映えて、世の中には血も涙もない諷刺アイコラを作る人がいるものだと思いました。白人タブロイドは容赦ない。あの頃はまだインターネットはありませんでしたから、あのアイコラ画像はネットにはないでしょうが、私がそれを見たのは、英会話教師とか、ワンナイドジャックみたいな、六本木の白人ホステスが接待する店のそのホステスさんとかが息抜きに当時読んでた適当雑誌、ジャパタイのその年の十大最低ニュース特集でしたので、ジャパタイのバックナンバー見れば見れると思います。それをこの映画で、ガツンと思い出しました。ちなみに、その雑誌の最低ニュースワーストワンは毎年デーブ・スペクター叩きで固定です。いまはもうああいう白人の人らーも、相当日本から中国に流れたんでしょうね。いいことだ。
でもこれは私の見方ですから、この映画、見なくてもいい人は見なくてもいいかもしれません。週刊文春の☆でも、ひとり低いですよね。支配する母親がダメな人、トラウマな人はスルーが吉かもしれない。ほかのレビューでも、捉われそうな人がダメ出ししてます。

文春オンライン 週刊文春シネマチャート 2018/05/15
ケリガン襲撃事件」の真相は? 「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」を採点!http://bunshun.jp/articles/-/7313

私の前の方の席に、がっしりした若い白人の女の子がひとりで見に来てましたが、川崎駅北口みたいな名前の母親の言葉の暴力にかなり痛めつけられてたみたいで、がっくり肩を落としてて、甘い甘いクレープ屋に鑑賞後並んでました。

トーニャ・ハーディングと言う名前は普通に北欧系の名前なので、酢漬けニシンでも食べて育った女の子かと思ったら、何度も結婚離婚する川崎駅北口ショッピングモールみたいな名前の母親の娘というだけで、特に北欧系の名前に意味はありませんでした。アメリカ人である、それだけ。ルーツとはもうとうに断絶している。で、なんで母親が、四度か五度の結婚で四人か五人か子どもいるはずなのに、彼女にだけいれこんでムチャクチャな支配をするのか、そこが分かりませんでした。あとこの母親の飲酒は、演出だと思います。このペースでのべつまくなしに飲んでるオバサンが、彼女が成長した時点で、まだ接客業でキリキリ働けるのか疑問でしたので。で、いい塩梅に彼女がひとりトモダチ感覚もってる義父がいて別れ、ひとりドアホウなステップブラザーが、「お義兄ちゃん…」と呼ばれるかと思ったらエロ行為には暴力で返されて(当たり前)ボコボコにされていて、それ以外家族は出ません。
トーニャのボーイフレンドというか旦那はDVの人なのですが(本人談では嫁がDV加害者だそう)、こっちは育ちとかいろいろ分かりませんでした。なんであのスパイエージェントとトモダチなのかも分かりませんし、高校をかろうじて卒業して福祉職という人生もさっぱり分かりませんでした。何か生育環境がアレでトーニャに魅かれたとかそういう説明がない。エンディングで、現在は車のセールスマンで妻は三人目とのことで、車のセールスが出来るのになんで児童養護施設職員?送迎職員?からキャリアをスタートさせたんだろうと不思議でした。
最近は、なんでも生育環境に原因を求めず、ストレスにも求めるそうなので、トーニャが殴り合いになるよう仕向けたのか、そういうナオンなのかとも思いましたが、それはないというふうに監督等製作側は思ってる気がします。
トーニャ、オリンピック選手なのに、溶接も出来てフォークリフトも運転出来て、朝の六時から働いて、アルベールヒルで四位だったのでスポンサーがつかなかった、というくだりに、そんなにアメリカの、「メダルがとれなかった」アスリートの境遇はヒドいのかとびっくりしました。それで家族と殴り合いでしょう、まさにアメリカの現実を代表する選手。

アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」比較映像ナタリー

映画観て、なんでBGMシカゴ使ったんだろうと思いましたが、こうして予告動画見ると、シカゴばっかなので、せっかくお金はたいてシカゴ使ったのだから、使い倒そうとしたのかなーと思いました。そもそもこの企画、実在する人物たちが、いかほどの金額要求したのか考えるだにおそろしい。それを払ってなおペイするだけの興行収入をあげなきゃいけないわけですから、監督とプロデューサーはギャンブラーだと思います。
レディースデーだったのか、平日午後一回きりの上映にしては、三十人以上入ってました。私は本当はこれレイトショーで観たかったのですが、レイトショーは最初の週だけでしたので、いそいで次の週に見たです。

パティ・ケイクとどっちを観ようか迷ったのですが、金のかかってるほうの映画を観ました。母親がどっちも酒浸りと言う点では共通してるですが、パティ・ケイクは「いい話」で終わりそうでしたし。日本のインディペンデント映画と台湾ニューシネマばっか最近見てたので、たまにはゴージャスな映画が観たかったということです。シカゴばんばんBGMで使えるような映画。この後も、二時間四十分くらいありそうな、原田泰造の「ミッドナイト・バス」見るかもしれないしだし。なんか新潟と三条の距離無視してるとかたんなる「たらし」の映画だろうとかいうレビューも読みましたが…

ナンシー・ケリガンは、動かしづらかったのか、ぜんぜん出ません。トーニャ同様ビッチでけっこう気が合うとかで、だから正反対とか好対照とかライバルとかではなく、ストーリーに乏しいから出ない。
ジュニア選手権かな? 一位スルヤ・ボナリー、二位陳露、三位佐藤さんというくだりで、ひっさしぶりにスルヤ・ボナリーの名前が聞けて、よかったです。

スルヤ・ボナリー Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AB%E3%83%A4%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%BC

黒人のフィギュア進出は彼女を以て嚆矢としますが、あとが続いてない気がします。テニスのウィリアムズ姉妹のほうにみんな続いたのか。とまれ、ボナリーといい、トーニャといい、この時代は、なんかジェンダー的に、フィギュアに新しい風が吹いてたと思います。金妍兒がなー、まおにはあまり罪はないと思いますが、金妍兒が、幼生のまま成熟するアジアンビューティーを存分に魅せつけて、ペド、ペド、ペドの時代になったのが間違いだったのではないかと。それならオリエンタルよりコーカソイドだっぺ、ということで秋田犬ザギトワ。こんな流れだと、溶接とフォークリフトの運転が出来るトーニャみたいな骨太のフィギュア選手の出番がないようで、実に残念です。以上

【後報】
アイコラを見たのは、ジャパタイでなく、トーキョージャーナルではなかったかと。謹んで訂正します。

TOKYO JOURNAL Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AB
公式
http://www.tokyojournal.com/
(2018/5/22)