『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』読了

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

装画 北澤平祐
本文イラスト 畠山モグ
装幀 新潮社装幀室

読んだ図書館蔵書は帯ないですが、アマゾン画像が帯付で、そこから下記。


売れてます!
笑えます!
続々大増刷!1位!ただし、鳥部門(笑)
出張先は、火山にジャングル、無人島!?

初出「新潮45」2015年1月号〜2016年12月号

ほかの方のブログで知った本。

う〜ん、アマゾンレビューではたいそう好評価が続いてるのですが、う〜ん。
世界をマタにかけるオモシロ生物学者の本というと、はてブで知ったウルドの人のバッタの本とか、同じウルドの人が光文社で一発あてた本とか(未読)、高野秀行のエンタメノンフ書評で知ったウナギフィールドワークの本とかを思い出します。

2013-09-29
『孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生』 (フィールドの生物学)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20130929/1380415259
バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

アフリカにょろり旅 (講談社文庫)
アフリカにょろり旅 (講談社文庫)

アフリカにょろり旅 (講談社文庫)

昆虫学者や魚類学者に面白い人材がいるのだから、鳥類学者だって負けてはいられないわ、チョッちゃんがいくわよっ!ギョギョギョ〜ッ、高校はブラスバンド*1みたいなことだと思います。作者は実物が面白い人であるようで、それは、アマゾンレビューの、夏休み子ども電話相談室から来ますた、みたいなレビュー見ても分かります。で、この本は、小手先の文章の面白さは十分に横溢しているのですが、肝心の、「体験の面白さ」の描写力がイマイチ、否、イマ億な気がして、それが残念です。

例えば頁141で、カリマンタンの現地食堂でオーダーミスして定食五人前頼んでしまい、しかたなく暴食して食べきった、という話がありますが、いったい何を食べたのか、実はパダン料理みたいな、最初にばーっとところせましと料理を並べて、食べた分だけ支払う形式だった可能性はないのか、とか、それで、インドネシア料理は作者の口にあうそうですが、ジッサイどんな料理が出たのか、などが書かれていないので、東大理系の観察力はそんなものかと、世間に揶揄されたら困ると思いました。STAP細胞は、あります。後ろから無関係の選手にタックル。

また例えば頁189で、ハワイで、現地学生相手に英語で講義してなんとか終えると、学生が、じっつは私、日本語、はっなせ、まっすね〜、と言ってきた話も、どんな風体の学生だったのかとか、それでJDだとしたらナンパしたのかとか、いろいろ、自分を卑下してるようで、卑下してないな、客観的な描写力がアレだから、と思いました。

こうやって考えると、土屋賢二って、やっぱすんごいんだな、と分かります。あの破壊的な面白い文章は、他者の追随を許さない。さすが林真理子が発見した巨匠。

いろんな雑学から力をもらって文章に盛り込んでることは分かりますので、それで飾るだけでなく、体験の力、およびそれを分かりやすくかつ面白く書く力を磨くことは難しいかもしれませんが東大出なら出来ないはずがない、と信じて終わります。がんばってけさい。以上

*1:横浜の人だそうなので、余計な情報が音波で入る時があります