『 燕のはさみ 2巻 』(ハルタコミックス) 読了

燕のはさみ 2巻 (ハルタコミックス)

燕のはさみ 2巻 (ハルタコミックス)

以下後報。
【後報】
その辺にあったマンガ。

装丁:黒木 香 +ベイブリッジ・スタジオ
担当:広井 優
初出 ハルタ45,47,48,50,51,53,55号
アンケートハガキとポストカード入り。


優雅な儀式のように
速く、正確に、美しく。技術を磨くために奮闘する女理髪師・白井燕。目的はただひとつ、英国大使の理髪師の座!
大正床屋ガールの細腕繁盛記。
技を競い合う気高き理髪師たち
銀座の少女理髪師・燕の前に政治家や華族を顧客に持ち、“理髪師の帝王”と名高い水島が現われる――。
それぞれの信念がぶつかり合う、第二巻

英国大使御用達の理髪師というものは、マンガの中ではまだそれほど明確に本人の目標にはなっていないです。
近所の、所謂下町のガキが大人になって当時の児童労働であるところの丁稚奉公に赴く話、青山陸軍歩兵第三連隊を贔屓筋にする話、帯にも出てくる当時の一線級の理髪師たちの勉強会に与する話、ライバルマダム・レオナが田舎では本名カメ子だという黒歴史の話(江青だったら山東時代の恥を知る者はぬっころしてたろうに)、父親の上海時代の話などです。

日本の剃刀と西洋剃刀は違うそうですが(頁97)、中国の剃刀は、さてどちらでしょうと思いました。

Yahoo!知恵袋 2014/01/01
洋剃刀は肌あれして和カミソリはどうして肌荒れしないのです...
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10118734950

頁34上のコマの絵はいいと思いました。<ここからえらそうな上から指摘>模写から始めた人なのか、角度によって、誰をほうふつとさせるかが全然違ったりして、温度差が一定でないうらみはあります。もう少し全角度自分の絵の顔になればよいじゃいかと。<ここまでえらそうな上から指摘>

定番としてイケズなセンパイが出ますが、男社会なのでイケズも男性で、読者に過度に不快感を与えずに青年が腐女子をイビる描写やエピソードをこしらえるのも難しいものだと思いました。どうしてもヌルくなる。

頁182、明治三七年の上海に電信電話があったのか分かりませんでしたが、検索したら岩倉使節団がグラハムベルがどうこうで、明治中期の日本にもう電話はあったそうなので、上海にもあっただろうと。

デイリーポータルZ ロマンの木曜日 2016年3月10日
もっと知りたい、昔の電話
http://portal.nifty.com/kiji/160310195890_1.htm

通信技術の進歩普及とドラマティックの兼ね合いで、致命的なミスがありながらものがたりとしての抒情を優先させた例として、オルフェウスの窓第三部で、ロシア革命云々のロシアで、ラジオを聴いていたらドイツ時代の学友イサークのピアノ演奏がオーストリアから流れてきた、みたいな話があり、著者がそこに手描きで、ラジオ放送開始以前なのにこんなエピソード書いたけど後悔はしていないと書いていたことを思い出します。

以上
(2018/10/1)