「判決、ふたつの希望」(アラビア語題名:"قضية رقم ٢٣"‎)(仏語題名:"L'insulte" ⇒英語題名:"The Insult")劇場鑑賞

もめごともなかなからちがあきませんし、おまわりさんも木で鼻を括ったようだったり断片的な説明ばかりだったりで、八方ふさがりの閉塞感が徐々に増してましたので、それで、息抜きになるかなと思って観た映画。

ポスター
ふたりの男のささいな口論が国を揺るがす法廷争いに――。人間の尊厳をかけ、彼らが見つけた新たな一歩に世界が震えた感動作

新百合ヶ丘で夜二十時上映。仕事明けで、清川村等に連れて行ってもらった後、銭湯に行ってから行ったのですが、二時間前だと当たり前ですが人影もまばらで、アルテリオの最終上映はシューマンバーブックで体験してまして、それくらいの入りかなと思ったら、上映直前にはわらわらいろんな人が来て、まあまあ埋ってました。メンズデーです。

私にしては珍しく寝ませんでした。明けの日で、夜まで午睡も取らなかったのに、奇跡かな。それだけテンポがよく、なかだるみしなかったのだと。雨樋取り付けた瞬間叩き割る場面とか最高でした。エナジードリンクも飲んでませんので、やはりあれはプラシーボなのだと確信しました。でもまた飲むと思いますけど。

アルテリオメールニュースのあらすじ
レバノンの首都ベイルートキリスト教徒のトニーとパレスチ
ナ難民のヤーセルの間に起きた口論が、やがて国家を揺るがす
裁判に発展する。18もの宗派がひしめくモザイク国家レバノン
で展開する手に汗握る傑作法廷劇。ふたりの男のプライドを
かけた争いの行方は…。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/1/18/The_Insult_%28film%29.jpg老パレスチニアンの現場監督が非常にシブくて、クリント・イーストウッドのようなオサーンでした。トミー・リー・ジョーンズというよりはイーストウッドだと思う。寡黙な感じもあってた。彼は世が世なら大した建築工科関係の高等教育を受けたインテリなのですが、レフュージなので、トミー・リー・ジョーンズが「時代がどうあれ、現場で働く」とBOSSのコピーで言ってた反対で、「時代がこんなやさけ、現場で働くんにゃ」な人です。手抜きがキライ。部下の人望信望が厚い。裁判の進行に伴って、風評被害を恐れる金主の意向で集団不法就労先の土木建築会社をレイオフ开除されますが、その後、反イスラエル旋風の逆風の中、金主の議員が彼を徹底擁護しま、とインタビューで発言する場面があるので、首は再度つながったのではないかと。あと、若い世代の縁故を頼ってノルウェーエクソダスする手もあるようでした、彼は。
極右のキリスト教徒は1970年生まれで46歳ってことで、なんでやねん今年四十八やろと思いましたが、2017年公開で、制作中の2016年は46歳ということなのかと思い直しました。その年で若いヨメが最初の子を出産て、遅すぎないかと思いましたが、やっぱ持参金とか作る関係で男は晩婚な社会なのかな〜とも思いました。パレスチニアンのクリント・イーストウッドも嫁さんけっこう年の差ありそう。でも、確かイーストウッドのほうは、嫁さん異教徒なので、アラブの大義見合い結婚ではなく、恋愛結婚だったはず。で、これを観る日本人は、あちらは内戦で若い時は兵士やってるから結婚が遅くなるのかしら、と、第二次大戦直後の日本と状況を重ね合わせて観るかというと、もうそんな世代はおらへんやろ〜という。戦後日本でも、下記の社会などは男は晩婚女は早婚と漫画では描かれてました。

2017-08-01『カルト村で生まれました。』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170801/1501570288
2017-08-12『さよなら、カルト村。 思春期から村を出るまで』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170812/1502484380
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/ar/d/d0/The_Insult_poster_araby.jpgそういえば、老パレスチニアンと耶蘇極右の共通点として、中国製は質が悪いとはっきり言っている点もあげられます。"BOSCH"が、エスのない"BOCH"なので中国製のニセモノだッ、とか。

あと、キャストで、自動車工場の若い衆で、やっぱ極右の、オッス、オラ以下略が、笑い飯の、脱ぐのNGな方の人(墨由来だと勝手に思ってるんですが、違ってたらすいません)仏教に詳しくないほうの人に似てました。

ウィキペディア日本語版でこの映画の言語を見ると、アラビア語レバノン方言とあり、キリスト教イスラム教、宗教に関わらずアラビア語であることが分かり、宗教の違いさえなければみんな違いはないのだから仲良く暮らせるのではないか、やっぱ宗教はアヘンだッ!!と思う人がいるや否や… さらに言うと、パレスチナレバノン人という民族の違いも、どっちもアラビア語なんやから同じやん、違うとかいいなや、と思うと、なだ いなだが現われて『民族という名の宗教』(岩波新書)をあなたのハートにお届けするという… この映画の最初のほうで、壁に書かれたアラファト議長が映って、アラファト議長ひさしぶりに見ました。アラファトは議長、カダフィカーネルですが大佐の意味ではなかったとか。リナックスカーネルくらいの意味だったとか。

この映画、民族対立以外でも、法廷映画なので、個人のプライバシーを「勝つために」ばんばん暴いていき、若妻が過去に二回流産してるのと今回の早産の因果関係を医師の証人に尋問する被告側弁護士がやはり女性で、非常に悩ましい顔をして、しかし依頼人の利益のためサクッと非情に訊いてゆくシーンが印象的でした。この映画の女性はいちおうぜんぶキリスト教徒という設定なので(老パレスチニアンの嫁含む)ヘジャブを被った女性がモブシーンにしかいないのは、レバノン政教分離の回教国だから、という理由ではないと思います。キリスト教徒だから而已。でも法廷での原告被告がネクタイしめたスーツ姿なのは、欧化したイスラム世界であるレバノンだからと思います。

私はレバノンに行ったことはなく、レバノンをリバノンとはっちょんする人は往々にしてヨルダンをジョルダンとはっちょんする、という認識がある程度です。ベイルートはかつて東洋中東のパリと呼ばれていたと、何かで読みました。色川大吉ユーラシア大陸思索行』だったかな。その破壊と復興が、街の俯瞰の場面からでもある程度伺えます。日本人でも、シゲノブさんという方のように、ベカー高原で訓練積みながら、レバノンベイルートで出産とか育児とかしてた人もいるわけですが、あれはちょっと普遍ではないオルタナな滞在だと思います。 

となりの席の人がさいご泣いてました。そこまで感極まったんですね。日本車はあまりない気がしましたが、どうでしょうか。

チラシの各界著名人のコメント見ると、ラジオ・コバニに続いて久米宏がいたり、町山智浩の感想「これはレバノン版『スリー・ビルボード』だ!」にニヤリとしたり、赤ペン瀧川という知らない人が、「あと、この邦題、素晴らしいな!」と書いていて、確かに、原題そのままだとのびしろがないなと思いました。

insultの意味・使い方 - 英和辞典 Weblio辞書
https://ejje.weblio.jp/content/insult

http://longride.jp/insult/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%A4%E6%B1%BA%E3%80%81%E3%81%B5%E3%81%9F%E3%81%A4%E3%81%AE%E5%B8%8C%E6%9C%9B
https://ar.wikipedia.org/wiki/%D9%82%D8%B6%D9%8A%D8%A9_%D8%B1%D9%82%D9%85_23
ほかの方のブログ http://d.hatena.ne.jp/SPYBOY/20180924/1537760665


映画ではピンヒールのチャンネーとかも歩いてますが、監督も暫く住んでその後逃げ出してますし、やっぱベイルートは住む人を選ぶと。美しいのですが、うん。以上

【後報】
しかし、最初の侮辱の言葉は、生い立ちのトラウマもあるでしょうが、そんなにひどい言葉なのかと。

発音は、なんとなく合ってるように思います。この単語でいいのかなと。


(2018/10/19)