「選挙に出たい」“我要参选”「我要參選」(英題:"I want to run for office")劇場鑑賞

新宿の銭湯スタンプラリーの折、よく東中野ポレポレで上映中のこの映画のポスターを見かけまして、しかし上映館がぜんぜんなくて、世界最大のチャイナタウンを擁する横浜でかろうじて上映して終わり、みたいな感じでしたので、シネマリンでメンズデーに見てきました。ほかの用事とバッティングしてたのですが、こっちをとりました。是非は後世が判断します。

f:id:stantsiya_iriya:20190116073712j:plain

四谷

我要参选 (豆瓣)

シネマリンは高校生がお安く見れますので、マーラータン屋でダベってる中華学校の学生さんに見てほしいのだろうなと思いました。でもそういうことはあまりない。この映画で唯一感心した主人公のセリフが、一世はダメ、日本語が出来るようになって日本の習慣や日本の考え方に染まる二世三世ならいい、それでは日本は何も変わらないじゃないか、なのですが、映画を観に行き、それに対して思考のおつきあいをするかどうか。

f:id:stantsiya_iriya:20190116073713j:plain

四谷

ドキュメンタリー映画『選挙に出たい』公式サイト

リー・シャムという人は名前は聞いたことがあるのですが、歌舞伎町は巨大社会なので、あまり知ろうと思ったことがなかったです。こないだ私が「変わってない」とこの日記で書いたのぞき部屋を、この人もこの映画の中で「変わってない」と言ってて笑いました。私が言ったのは店の場所(が変わってない)ですが、彼は店内の看板にまで言及していた。外観は変わったのだが、店内の看板には二十年前のがそのままあるんだとか。外国人観光客が来だした頃は、どの店が安全でどの店がボッタか中国語で教えてくれる拉皮条导游人がいなかったので、百メートル先の店まで案内するだけで千円、五千円の謝礼がもらえたそうです。いい話だ。その話もその後の話も知りませんでしたが、ニューズウィークに連載してるんですね。その副編集長が助っ人になってますが、副編集長としてはあくまで取材の一環というかたちで(副業禁止?)参謀とか片腕のつもりではなさそうで、それも選挙活動を行うにあたって、主人公の限界というか敗因のひとつだと思います。黒子に徹して李小牧を演出する人物がいなかった。あと組織票まとめ。監督がやればよかったのかというと、どうもこの監督は、プロフィールの「苦労知らずで日本で嫌な目にあったこともない」、確かに下積み経験なさそうな人で、それだけに高慢と偏見というか、陰口や皮肉は馬耳東風というか倍返しするタイプではないか、小皇帝ならぬ小西太后というか小武則天とでもいうような人物かもしれぬ、と声だけ聞いて思いました。河北の人間はなんか言い方がキツい。日本語もキツい。保定や石家庄は人が荒れてる。監督の日本語音波は、ヘイトっぽい場面でしか出ませんので、「中国人は帰れ」「何故ですか」のやりとりが"温柔体贴"だったらそらヘンタイだわといわれるかもしれません。話を戻すと、孤独な主人公は"没有朋友的人"なのか。知心朋友の参謀が必要だです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/stantsiya_iriya/20181217/20181217214651.jpg

中井

せっかく、小牧の北京語読みは本来シャオムーなのに、それが聞き取れない日本人が「シャム」と訛って呼んだからシャム、シャムシェイドみたいでいいじゃん、みたくクセのあるペンネームにして特色出してたのに、帰化名が「こまき」と訓読みになってるのはいささか残念でした。李忠成がチュンソンからただなりになったのに習ったみたいな。音読みの「しょうぼく」だと洒落っ気がなかったのかもしれません。シャム猫のシャムは「暹羅」と書くそうなので、李暹羅でり・しゃむと読ませればよかったのに。あるいはキラキラ風に「沙夢」とかなんかそんな漢字を当ててみるとか。ホストたちに相談すればなんか漢字あててくれると思います。「り」になったのに、選挙管理人かなんかに「リー」と伸ばされて呼ばれてるのが乾いた笑いを誘います。ユミリはゆうみり。

从歌舞伎町的案内人,到作家和参政,这位华人在日本纵横黑白黄三道从未失手 | OTTAWAZINE NEWS

 https://ottawazine.com/wp-content/uploads/2018/05/%E5%B1%8F%E5%B9%95%E5%BF%AB%E7%85%A7-2018-05-18-%E4%B8%8A%E5%8D%889.46.04.png最初この話聞いた時は、議員年金がおいしいから(という古いガセを吹きこまれたから)かなと思いましたが、なりゆきとしては、海江田万里とたまたま知り合って、民主政治方面に吸い寄せられたということだとか。映画で、日本国籍取ったおばさんが「両国の架け橋になってほしい」「今まで日本の選挙には関心も行く気もなかったけど、華人が出るなら投票に行きます」と言っていたのはよかったなと。そして、そういう声はまだ芽生えたばかりなのですが、「ほんとに日本のために働いてくれるのか、本国のために動くんじゃないか、どういう目的なんだ」という猜疑の声はもうわりと映画で拾われていて、決してとっぴな意見ではないように映画では作られています。

この映画、音声は北京語もばんばん出てきますので、ぜんぶ日本語と英語の字幕がついていて、セリフだとてにをはがヘンだったりなんだりが日本語字幕で修正されてるのはご愛嬌だとしても、英語字幕が、なんかおかしくて、逐語訳でなく、中文のスクリプトから英訳したんじゃいかみたいな、ちょっと飛んでる文章です。映画字幕の経験とか関係ないところで作られた英文のような。例えば、ヤクザは"YAKUZA"で英語圏の人間なら通じると思うのですが、字幕だとギャングスターになっています。これは一度"流氓"、"黑社会"などの単語に訳されたのを英語に起こしてるからではないかと思うです。

mainichi.jp

中华人民共和国公民籍はチャンと捨てたくだりが、映画の始めのほうで描かれています。れんほうを意識してるんだなと。日本の国籍法は他重国籍を禁じていますが、実際にほかの国の国籍を抜ける(放棄する)かどうかは本人とその国によりますから、日本の主権が及ぶところではない。本人の良心を信じるのみですし、ブラジルのように、国民の国籍離脱を禁じている国の人が日本国籍取ったら、そりゃ二重国籍になるしかない。ブラジル籍抜けないんだもの。そういう国の人に日本国籍取るなとは言えないですよね。韓国籍の人が日本国籍取った後、韓国籍どうしてるか、大山倍達講談社の伝記冒頭で民団の人の談話が載ってるのは今でも覚えてます。

で、最初の方は民主党と明記してるのに、後半「某党」と字幕が出るのがなんだかなあでした。2015年の選挙ということでしたが、民主なんだか希望なんだかわけわからんの時代でははなかったと思うのですが。

f:id:stantsiya_iriya:20190122013341j:plain

f:id:stantsiya_iriya:20190122013342j:plain

f:id:stantsiya_iriya:20190122013343j:plain

f:id:stantsiya_iriya:20190122013344j:plain

この、売国奴というか、まぁ「漢奸」"汉奸"だと思いますが、そのせりふを言われる場面はこの映画にはありません。主人公のモノローグだけです。たまたまうまいことカメラ回せなかったのか(撮影以外の場所や時間の出来事なのか)、相手の肖像権使用許諾がとれなかったのか。よしりん民主党関係者も映ってるんですが、ここは残念。なので、在日中国人社会で言われたのか、湖南省長沙に帰国して文革で父が打倒された当時を回想する場面がありますが、その旅で現地で言われたのかは分かりません。

毎日新聞はこのように力の入った記事を載せてますが、あさっしんぶんは、映画の中でしゃむさんが「アエラに、私は歌舞伎町の毛沢東になるという記事が載った」と言ってたりするので、週刊朝日でアリバイ記事が書かれたのみ。ヘイトにアツい神奈川新聞が取り上げてるかと思いましたが、新宿は神奈川県ではないからか、未。

 で、映画館に貼られていた、この映画の取り上げ方について書かれたほかの記事で、それでも主人公は自分が選挙に出れる日本という国の、システムなのか自由なのかを評価しています。感謝してたかもしれない。罵倒はされても、人治による法や規則の横道で自身の出来が塞がれるということはない。自分は中国では選挙に出るなんてことは生涯出来なかったろう。それを読んで思い出したのが、民主化途上の韓国の時、韓国人が日本の選挙公報でUFO党やざつみ…見て、日本は選挙なめてるのかなぜ大事にしないのかせっかく手に入れた権利だろう?粗略にあつかっちゃダメだと言ってた件。世紀がかわったのち、再度中共の人に言われてるなと思いました。投票率は下がるばかりですから、そりゃね。

しかし、映画では、そこは半分しか語られていません。選挙に立候補できるしその自分に投票も出来る、日本はいいという部分しかない。返す刀で、では中国ではどうか、という部分の描写はありません。上記の売国奴云々の個所と併せて、中国国内上映向けに自主ナントカというか、吟味されてしまっていると感じました。監督の立ち位置なのか。

監督の名前は、ホロンバイル出身の同姓同名女優さんがいるので、そっちのほうが多く検索結果で出ます。

邢菲(中国内地女演员)_百度百科

Sina Visitor System

監督の名前「けいひ」は邢菲の日本語音読みですが、「邢」という漢字は狄とか薛とか耿とかと同様、日本語の音読みで読んでもそもそも馴染みがない漢字而して苗字に使う字ですので、「けいひと申します」「へー中国語ではそういうんですか~」なんて言い返されてしまう苗字のひとつだと思います。始皇帝暗殺の人かと思いましたが、あちらは荊軻で、アルドゥオパンでなくツァオズトウ。

『おおざとへん』と『こざとへん』の違いてなんですか? - 『... - Yahoo!知恵袋

よこしまの「邪」と空目られて、百人の日本人に逢ったら百人ともが「じゃさんこんにちは」と言ってくるのにイラッとして、ケイヒと名乗らずシンフェイと名乗るようになっても仕方ないわけで、こらえてつかあさいとしかいえません。☆飞。けいひ翼徳。

早大のどこかのゼミかサークルが、落選後の街頭演説にカメラ回してる場面が収められていて、最初これを入れる意味が分かりませんでしたが、ノーキャプションで中国人が見たら、中国の大学は噴青、共青團で黨に一元支配されてますので(だから紅衛兵天安門事件の主導者も、党内上層のヘゲモニー争いの道具として使われたと明確に言うことが出来る)日本の同様の組織の同様のカツドウかと、ミスディレクションするだろうなと思いました。私が思ったのはそれくらいですが、ほかにもそういう部分があるかもしれない。

www.youtube.com

ヤフーの☆の多さは盛ってるからかもとも思っていますが、スーツでマタ広げて座ってタバコ吸いもってトークするやせた中国人とか、今はかなり絶滅危惧種だと思います。日本で大陸の潮流から離れて、ガラパゴス的に取り残された。あと、髪の量もスチールと実画面で違うかもしれませんが、街頭等ではすぐ分かることです。日本人の元嫁さん一人とその息子さんは出てきますが、ほかの中国人の元嫁と現在の嫁さんは出ません。中国の人はやはり顔バレに用心深いのか。あるいは、最初のと二人目はもう消息不明なのか。最初のは来日前の深圳時代に別れたそうで、二人目は、たぶん在留ビザの絡みで、主人公から老華僑なのか(老華僑はまずそのへんのシンライダを相手にしませんが。自分をたいせつにする。見合い結婚だろうし)日本人なのか他の国の人なのか知りませんが、そっちに行ったように回想されています。あいまいな言い方ですが。息子さんの中検の話とか中国人の彼女を作るとしたらどこで知り合えばいいかという話とかを入れる監督は意地が悪いと思いました。親父の中国語はケーブルテレビの中央電視台なんかと違いすぎるとか、そういうサマツな理由を漢語の学習に熱心でない言い訳にする場面とかあったら面白かったのですが、そういうことを言う青年ではないのかな。

で、主人公に、新聞記事のように、くってかかる人が、「日本人は平和を愛する人々なんだ」と繰り返し大声で言ってますが、これ、日中戦争の最前線河北省出身の監督としては、棍棒で頭をぶん殴られたような、延髄切りで脳震盪起こしたような衝撃だったのではないかと。マジですかと。どの口が言ってるんですかと。実体験はなくとも、河北省ならかなり濃厚に周囲の抗日戦争の記憶、体験談には事欠かないだろうので。プロパガンダ教育だけで日本人は残虐だと言ってるわけでもなさそうな土地柄、河北。そこいくと主人公の湖南省は、打通作戦でよろよろの中年の補充兵が竹槍持って行軍してたような土地なので、精強な古参兵がワンサといる河北的体験はないと思います。駒田信二がスパイ容疑で捕まったのは湖南省からさらに奥地の貴州。でも映画のなかで、監督が戦中の残虐行為等をべらべらさべって「平和を愛するならどして」みたく言い返す場面はありません。同様に、日本側が、それを否定したり、戦争を始めた動機について、やむにやまれぬ、自衛のための、など、彼らの主張をする場面もありません。それを流したら、国内(日本国内でなく中国国内)上映禁止になってもおかしくないのかな。炎上はまぬかれえないでしょう。羅剛事件。どこまでになるか自主的に判断したのか。あるいは、街頭でちょこちょこ言い合いするだけなので、そこまで日本側も喋らなかったか。あるいは、映画の本筋からそれると判断して切ったか。

そこまで考えると、日本国籍とった華人は、投票同様、観に来るかもしれないですけど、在日の中国公民が見に来て面白いかは分からないなと思いました。中文字幕版もあるんでしょうけれど、どういうふうにセリフが訳されてるのか。主人公が北京語で、ラーピーティアオが政治家になるとかどうよ、とか、いっぱい夢を喋ったり、現在の四度目の結婚までのすべての別離について語る場面とか、それまでえらくてかっこよかった父親が文革で監獄送りになってそれから尊敬出来なくなったと語る場面とか、そういうものにフォーカスして観たい映画だと思いました。日本語だとどうだろう。民主党関係者と口論する場面は地が出てます。まーこんな人だろうと。さすがアルバイトで秘書を雇う党、党側もこんな感じだったんだなと思いました。以上