『コンビニ外国人』(新潮新書)読了

 書評で好評でしたし、私も、なんでこないなっとんのやろと思い、知りたいので借りました。

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なんでこんなに多いの? 実は世界第5位の外国人労働者流入大国! そのカラクリと彼らの本音。

作者の名前は、アンド検索で「右翼」が出たので、流石新潮と思ったら、私の空目で、アンド検索は「左翼」でした。

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コンビニ外国人(新潮新書)

コンビニ外国人(新潮新書)

 
コンビニ外国人 (新潮新書)

コンビニ外国人 (新潮新書)

 

コンビニ人間も未読で、アマゾンの商品検索で「コンビニ外国人」と正確に打ち込んだのにコンビニ外国人より上位にコンビニ人間が来ました。

コンビニ人間

コンビニ人間

 

頁9 コンビニで五年近く働いた経験のある親日東大院生ベトナム人の声

「いま日本には外国人が増えて困るという人もいますが、東京オリンピックが終わったらどんどん減っていくと思います」

 そう考える理由を教えてくれた。

ソウルオリンピック(一九八八年)以降の八大会(夏季)で、開催国の成長率が前年と比べて上昇したのはアトランタオリンピック(一九九六年)だけです。アトランタ大会を開催したアメリカは、大会後にIT革命が起こって経済成長を牽引したといわれています。しかし、いまの日本にそのような起爆剤は見込めません。ですから、おそらく東京オリンピックの後は、日本は不況になります。しかも、日銀の超低金利もオリンピック後には上昇する見込みで、企業の資金調達も困難になると思います。同時に日本はすでに労働人口も減り続けているので、本来は外国人の労働力をうまく使わないと経済成長できませんが、外国人はきっと増えません。なぜなら日本は外国人労働者の受け入れ制度が整っていませんし、多くの外国人が『日本は不況だから稼ぐのは難しい』『人手不足で残業が多くなるのはイヤだ』と考えるからです。そうなるとより多くの労働力が減って、日本の経済はますます傾いていくでしょう」

まー私は、早期リストラとかと同じで、いてほしいと思う人はいなくなって、なんでこんなんおんねんこわいやろと思うような人ばっかしになる、という未来のほうかなと思っています。みんないなくなるということはない。ここ数年私がニューカマーの中国人に訊きたくてウズウズしてる質問は、「中国経済がここまで騰飛した今、それ以前に来日してそのまま日本にいる自分は負け組だと思う?」です。戦後の東南アジア華僑の中では、華僑排斥のあったビルマ華僑が負け組と言われた話を下敷きにして考えてマス。で、その質問に、日本人よりはマシですよ、と答えられて、ののしりあいになったりして。(本書頁89では、戸口の問題で中国大都市での良い仕事につけない層が日本へ流入という、百年一日の例が語られ、変わらないですぅと思いました。中国人のカラードに対する偏見も)(頁128には、本国や欧米でなく日本に来てしまった中国人エリート向け予備校の東大京早慶合格実績が挙げられてますが、それより、授業がオール中国語なのが面白かったです。入試はぜんぶ中国語で受けられるのかと)

頁35で、特別永住権保持者が多数のはずの在日コリアンの人口数がこの二十年で二十万人も減少している、との数字に、帰化して見えなくなっているのでは、とアサハカに考えましたが、作者の読みでは、日本社会の少子高齢化と並行して、在日コリアン社会も同じ人口カーブをえがいているのだ、とのことです。まーそういえば、在日親族からの仕送りが途絶えて困窮する北朝鮮の人、という話は聞いてる気もします。在日親族の若い世代が負担の重さに耐えかねてバックレるケースより、在日親族が死に絶えて仕送りが途絶えるケースが多いとすると。

頁38、琉球朝日放送ベトナム国営放送合作ドラマ。

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頁57の韓国の外国人労働力呼び込み制度の紹介は、昨年秋のテレビ等のほうが詳しかったと思います。その後どんどんブラッシュアップされて、日本に欠けている点だけがクローズアップされていったのか。その次のページでドイツのガストアルバイターが紹介されていて、下記映画が紹介されています。

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おじいちゃんの里帰り - Wikipedia

Almanya – Willkommen in Deutschland – Wikipedia

前世紀ですが、独逸人と結婚した邦人女性への就労支援の話を本人から聞いて、手厚いなーと思ったことがあります。本人も、ドイツ人にはこの話すると反感を持つ人もいるから、あまり話すなと主人から言われていると言ってました。ドイツは有名ですが、フランスだって東欧からの労働力に頼ってきたわけなので、そこも紹介してほしい、と言い出すとキリがないなと。この本は日本のコンビニ外国人についての本です。

私がかねてから不思議に思っているのが、学習が難しいはずの日本語を、コンビニ外国人たちはみなかなり流暢に話していること。いつのまに教え方のメソッドやナレッジが飛躍的に進歩したのだろうと。みんながみんな「選挙に出たい」の女性監督のような、それほど…な日本語だったら、こんな急速に広まらなかったと思います。私が中国人にN4とかN2とか訊くと、三秒でHSK何級なのか聞き返されて逆襲されるので、聞けないよーと。

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 もうひとつ不思議だったのが、3K仕事などリスキーな仕事、アングラな仕事、非正規労働なところに吹き寄せられず、コンビニという、大企業であり、査証も源泉徴収もしっかりしてそうなところにババーンと外国人労働者が進出してきた、そのパラダイムシフト。どこで、彼らは戦力になるという、先入観や偏見を乗り越えた観念が醸造されたのか。裏方としての弁当や総菜作りの現場、工場労働でなく、フロントの接客業務へ。これがパラダイムシフトでなくてなんであろうと。すき家もそうですけど、決断したフロンティアの人たちって、どんなんだったんだか知りたいです。仕事の流儀なんだかプロジェクトエックスなんだか知りませんが、あれば教えてほしい。

外国人は信用出来ない、がブレイクスルー出来たのであれば、コンビニの無人化だってブレイクスルー出来るはずだ、と、私がネトウヨなら言うかというと、ネトウヨの人はあまりそういうこと言わない気がします。何故かは分かりませんが。

頁25に、語学留学で決められた時間をオーバーしているが(本書によると、日本のその時間は、アメリカイギリスのゼロ、カナダフランスの週20時間、韓国の、半年待て、より好条件という)(韓国の部分が私はよく飲みこめませんでした。頁21。誤記なのかな)コンビニ深夜勤で月手取り二十万弱という若者のケースを読んで、私より手取り上だな~、ボーナス入れてトントンかしら、と思いました。でも彼は介護保険とかどうなんだろう。その辺がまさに、本書を読んでも読まなくても、安倍政権がやっきになって法整備して網の目広げて税収増やそうとしてるゆえんかと思いました。逆進税といわれようと消費税上げるのも同じ理由かと。働く人から徴収し隊。

そのくらいもらえてもコンビニには日本人が求人に応募してこないと本書には書いてあります。カラオケのほうが楽だという声も紹介してあるのですが(著者の息子さん)実際はどうか私は知りません。どっちも働いたことないので。で、外国人向けにコンビニ斡旋業があるかというと、むかしは日本語学校と直結してたケースもあったらしいが、今はもう各自自由にネットなどから直接店舗に応募して採用なんだとか。それでこんだけ増えるんだからたいしたものです。取材したコンビニ外国人の中には、長く働いてる自分は例外的な存在で、同国人でもやっぱよくやめるよ、理由は知らんけど、という声もあります。

上のドイツ映画の最後は、マックス・フリッシュというスイスの小説家のことばで、本書も頁62でそれを効果的に引用しています。

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日本語学校のひどいところは第五章。もっと深く掘り下げるとコンビニエントではなくなってしまうのでしょう。呼び屋とか搾取とかも、本書だけでは…という感じ。法改正と絡んだ議論は置いといて、こういう実態を取材しました、という。

読了して思ったのは、コンビニはそれだけ人がいないんだ、ということ。コンビニないと困るかというと、イートインが出来た時は画期的だと思ったし、今でもトイレのあるコンビニは重宝しますが、逆に言えばトイレのないコンビニは、なくてもいいやと。イートインも、コーヒー飲みたきゃ喫茶店に行くか、立ち飲みするので、いいです別に。ATMは手数料のかからない銀行本体のにその時間に行くし(でもみずほ銀行なのでミニストップなら手数料掛からないのでミニストップは行きます)あーあと、チケット発券などでは必要です。これは必要ですね。むかしはコンビニなんかなかったし、なくても別に困らなかったが、今はなくてはならないものになった、というほどの存在感は感じないのですが、それが雇用確保につながっているかというと、店長のオーバーワークと外国人労働力によってかろうじて支えられるレベルにまでなってしまうと、じゃー、それってほんと必要なの?という話にまでなるかなと。チャイナフリーとか、電力ゼロで生活するのと同じように、コンビニレス生活試みたら、ドラッグストアがあるので、楽に成功すると思うので、そうなるとユーチューバーも誰もやらないだろうと思いました。ニフティポータルもやらないだろう。

深夜ひと気のない街に明かりがついてて中に人がいる安心感。でも私、ほとんど深夜出歩かないという。

人がいないとこれだけパラダイムシフトもブレイクスルーもするよと。あと廃業もするんだろうなと思います。農業を鑑みると。コンビニで働いて結婚出産子育てとか聞いたことがないけど、フランチャイズのオーナーとしても、養えるものだろうか。昔の乾物屋みたいなイメージで。そういう話がバンバン出てきたら、また変わると思います。そういう知人が、むかしいたようないなかったような。以上