諸星大二郎のオリオンラジオの夜の解題に、オリオンラジオは本書収録の歌からのインスパイアとあったので、読みました。その歌は頁197。
日経新聞社から出てますが、初出はポプラビーチというポプラ社のウェブマガジンに、2007年から2010年までの連載だそう。
小説家の方も、歌人の方も、存じ上げませんでしたが、直木賞作家と、出口王仁三郎歌集なんてものを編纂された方だとか。
カバーイラストレーション諸星大二郎で、ブックデザインは鈴木成一デザイン室。正直、モロ☆マニアの中でも、書籍カバーイラストまで収集してる人なら知ってた本なのでしょうが、私はそこまで手を広げてないので、知りませんでした。それをやりだすと、宮城谷酒見だよ(;´д`)トホホの『陋巷に在り』を揃えるところからせんければならず、私はこの時期のモロ☆絵、太公望とかの頃だと思うのですが、池袋時代とでもいいましょうか、横腹に肉のついた女性ヌード(今なら美魔女とでもいうのでしょうか)などが、少々苦手で、それで宮城谷のそれも未読でした。いや宮城谷でなく酒見だよ泣き虫弱虫所轄孔明。
そうしてイラストまでアンテナ張ってると、近刊では講談社学術文庫の土偶の本まで買わんならんという。
話を戻すと、本書は数ページのショートショートと、見開き短歌の繰り返しで構成されており、リレーというわけでもないのでしょうが、それぞれ前の歌や小説の影響の跡が見られたりします。小説部分だけ切り出して下記別途刊行されている由。朱川サンのウィキペディアに、小説部分の本の収録作品一覧が記載されていて、ぜんぶ入っていることが分かります。
短歌部分は、コウモリ傘とミシンが手術台で出逢えばそれでいい、みたいな、意外性の組み合わせと、ユーモア、はかなさ、さびしさ、残酷さなどのエンドレスで、実名がちょろちょろ出るのが特色だと思いました。頁数記しませんが、ざっと思い返しても、リア・ディゾン、マチャアキ、ジャッキー、野口五郎、つのだじろう、トキワ荘(弐回)etc.
小説部分も、時事ネタっぽいタイトルとしては、アル・ゴアでお馴染み、『不都合な真実』(頁34)『不都合な真実Z』(頁238)などがあります。頁125に、夫の言うことよりみのもんたの言うことを信じるミセス、という形容があり、私はむかし、みのもんたがもんた&ブラザーズでダンシングオールナイトを歌っていたと思い込んでいたのですが、それを思い出しました。
頁13の小説で、夜光虫が出て来るのですが、夜光虫って刺さなかったっけ、と思い検索しましたが、夜光虫にも海ホタルにもそういう記述は見つかりませんでした。森瑤子のエッセー『ジンは心を酔わせるの』にも、マレーシアの高級リゾートビーチで一面の夜光虫の海を泳ぐ場面があり、刺すものではないんだと納得していています。
小説はほとんど(全部?)一人称で、それが男性だったり女性だったり若かったり若くなかったりするのですが、すぐ終わる話でそれの繰り返しは、対応するのにやや戸惑います。どの小説も、最後の壱行で、とってつけたように「ハズし」ているので、余韻が残りそうで残らないのが特徴です。ワザとやってるんじゃいか。
頁328
流すな、と脊髄反射的に思った歌をあげておきます。五七五七七でなく六七六八七なのですが、短歌もまた私はよく分からないので、何とも言えません。以上