『北京の自転車おじさん』読了

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沢野ひとし - Wikipedia

沢野ひとし中国三部作完結編『中国銀河鉄道の旅』が2019年2月7日に刊行されたと、中国書専門書店メールニュースで偶然読み、そもそもこの、あやしい探検隊だか何だかの人が中国旅行のエッセーを書いていたと初めて知り、銀河鉄道もその前書『北京食堂の夕暮れ』も手近な図書館には蔵書がなく、シリーズ最初のこれだけ蔵書があったので借りました。本の補修は専門技術を有する司書や職員に頼むべきで、素人が本にセロテープ貼ったりしてはイケマセン。

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 二冊目と三冊目は装丁も中国書籍を意識してる感があり、二冊目は純然たる中国旅行エッセー集、三冊目は還暦を過ぎてから中国語を学びだした筆者の恋の顛末記も収録とのことで、ゲツのような酷どんべいがお相手で、生島治郎のようにケツの毛まで抜かれてたらどうしようと余計なお節介を焼いたりはしませんが、一冊目の本書は、中国絡みは表題作のみ、しかも夢のなかの中国で、現実の中国ではなく、あとはほかの旅行、パリ滞在記が多いです。パリもまたダイ・シージエとか、中国人居ますけど、そういう話でもなく。

装丁 南伸坊 

装画・本文イラスト 沢野ひとし

 読んだのは初版。

初出は本の雑誌2003年4月~2005年9月号とほか三つ。

左は裏表紙。2005年に人民服に布靴のじいさんがいるかと思いました。しかも、中山服の上着ははおるだけにして、下はラクダ色のセーターで、河のほとりで読書とか、ないだろ~と。お茶を飲むフタ付きの湯呑、魔法瓶が傍にあって、ヒマワリの種のかすが散らばっているなら分からないでもないです。

巴里へは森有正を持ってって読むとか、好きな画家は茂田井武であるとか書いています。

森有正 - Wikipedia

茂田井武 - Wikipedia

頁18、「ジュスイ、コントン」の意味が分からないので検索しました。 

Je suis content pour vous.というのはどういう意味でしょうか? - 直訳... - Yahoo!知恵袋

je suis content の発音: je suis content の フランス語 の発音

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頁126

 指定席に座ると、前の青年がヘッドホンステレオをシャカシャカ鳴らし、ガムを嚙みつつ両足を投げ出して、まことに態度がでかい。しかし外人恐怖症の私は身を固くして、何も注意することはできなかった。

 私も似たような体験したことありますが、その時の青年たちは、持参したライターで前の座席に火をつけてめらめらと燃やし始め、その後、別の席のビジネスマンが、ぱたんと読んでいた本を閉じて彼らのもとに立ち寄って、顔を近づけて目線を同じにして大声で、"Excuse me, I don't want to listen!!"とどなって音楽を止めさせていました。

左は中表紙。中国の三輪バイク。で、表紙が中国の自転車用レインポンチョ。いずれも現在のものではないような気がします。

本書の後半は、パリで日本人旅行者にお金をたかって生きる邦人女性が登場し、なんとなく、これ、狭い日本人社会だと、誰なのか特定出来ちゃうんじゃないかと思い、それでこの後旅行先がアジアにシフトするのかもしれないと思ったりもしました。

作者はゆうれいが見える人だそうで、頁29など、ぜんぶその話です。

頁151で、日帰り旅行をすすめていて、「温泉は体に悪い」などと天下の暴論を述べているのですが、真意は下記かと。

頁155

 人はなぜ旅に出るのか――と問えば、見聞をひろめるという答えが圧倒的に多いだろう。私にとって旅は長いこと妻からの逃亡であった。

 昼酒を飲み、花見をして温泉につかるというのが理想の旅の姿であったが、温泉旅館の階段の暗がりに棲みついている妖怪の吐息を聞いてからは、外で泊まる体力がめっきりなくなった。

 日帰りで早朝出立夜帰宅なら、たいがいどんな飛行機も列車もとれるそうですが、往路はともかく、復路はちょっと無理と思います。LCCならなおのこと。作者は日帰り旅行の例として、直島旅行をここで書いています。

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簡単に読めるかと思ったのですが、並行して読んでいた山崎洋子『花園の迷宮』のほうが先に読み終わりました。意外となんぶつだった。以上