読んだのは単行本。装画・挿絵 西加奈子 ブックデザイン 鈴木成一デザイン室
上の版元公式サイト、なかなか凝ってるとシロウトの私は思うのですが、そうでもないっすよフツーっすよでしょうか。
映画を観たので読んだジドーブンガク。作者の小説は、こないだブッコフで売るマンガの計算して貰ってるあいだに、『漁港の肉子ちゃん』ぱらぱらめくったくらいです。この小説もそうですが、女性がなべて肉付きがいいことになっている。そこが、映画と違いますね。逆に、映画で栄養が満ち足りてた転校生が、原作では唯一両腕をバンザイのかたちにもちゃげられた宇宙人グレイ似に描かれてます。
読みながら、映画「ピッチ・パーフェクト」シリーズの、下記韓国系女優さんも、映画内でパスポートの出生地がエリア51になっていたなあと思い出しました。
みなさんふくよかですので、映画を観て、この浮気相手の遊ばれてる若い女、バッグは絶対コーチだとか、そういうことは原作読んでまったく思いませんでした。土下座は原作もします。
表紙と背表紙が連結してる愉快な装幀。映画では類くんと君付けされる類くんが、原作では呼び捨てです。一個うえなんですが。ドノもデブという設定。ミライという、映画に登場しないヘンテコ老人が登場します。旅館の小間使いの老人も、「ペリカン」という洒落た綽名です。主人公まく子も終盤太る。でもそこまでは、セリフのいっこいっこが、もう映画で表現されたそのまんまが脳内でフラッシュバックしてしまい、映画の完璧さを再認識するだけでした。「私も11歳。ということは、私たちは同じ年齢のこども?」(頁11)なんてセリフ、よく考えついたものだし、よくそれを映画で可視化したと思う。でもこの場面映画では白いひらひらの服でしたが、原作では、緑に紫がちょっと混じった、モンスターが吐くゲロみたいな色のシャツとジーンズという格好です。
頁212で、夢精したパンツを父親と洗濯して干す場面で、母親が、干すとこまでが洗濯だからねと言ってから、違うわ、たたむとこまでが洗濯だからね、と言い直す場面がよかったです。これ、映画にあったかなあ。ないかも。けだし名言。タンスにしまうとこまでが洗濯。タンスがなければクローゼットにしまえばよいじゃない。オホホ。
映画公式サイトに登場する折り鶴が、どうやら原作者自身の手になるイラストらしいと、本書各所にちりばめられたイラストで分かったのですが、でも原作にも折り鶴出ないです。しいていうと、旅館住み込みの、実家北海道だが帰らない連絡もとらない老女が倒れるシーンでしょうか。鶴は出ませんが、読みながら皆回復祈願をするでしょうから。
頁48
「カルピスってなんであんなに美味しいの?」「一番かっこういい生きものって何?」「お金持ちって何円持ってたらそうなの?」
コズエの質問はすごくくだらなかった。そんなこと本当に聞きたいのかと疑うようなくだらなさだったけれど、ぼくはひとつひとつ、丁寧に答えた。もちろん、出来るだけ低い声で。
「カルピスだから。」
「コウモリだな。」
「百万円だ。」
作者はカギカッコ閉じるの前に、句点を置くタイプのようです。小学校の作文だとそう習うのに、どうして社会に出ると、カギカッコ閉じるで文章が終わってることは分かるので、わざわざマル書いて重複しなくてもいい、という、むかしの文選工の工数減のための理屈を採用するようになるのだろう。以上