『鳩の撃退法』(上)(下)読了

 これもほかの方のブログで知って、知らない作家でしたので、読んでみようと読んだ本。読んだのは単行本。装画 hatu  装幀 山田満明 下巻巻末に引用文献一覧 初出/「きらら」2011年8月号~2014年7月号(全36回)

鳩の撃退法 上

鳩の撃退法 上

 
鳩の撃退法 下

鳩の撃退法 下

 
鳩の撃退法 下

鳩の撃退法 下

 
鳩の撃退法 上

鳩の撃退法 上

 

 43文字×18行で上下巻ともに476ページか477ページの本なんて読むのに何時間かかるのかなあと、胃がもたれそうでしたが、さくっと読めました。

佐藤正午 - Wikipedia

長崎の人間が北大選ぶ時点で、もう遊んでやろう的な人生の野望を感じました。国文科で中退で。どこかで、ハルキ・ムラカミと並び称されるくらい作中におけるチャンネーの扱いがどうのこうのと読んだ気がしますが、その文章が出て来ません。小説の主人公は直木賞を三回獲った小説家ですが、作者はこの次の小説で直木賞とれて、そのタイミングでこれ文庫化したそうです。文庫解説は糸井重里

www.1101.com

佐藤正午『鳩の撃退法』小学館文庫 | 小説丸

もともとの掲載誌は「きらら」という雑誌ですが、ウェブ上では「小説丸」(軍事雑誌と紛らわしいタイトルと思うのは私だけです、あだち充の公式キャラクターがいる)と統合してるそうなので、それでこの小説の特設ページは、小説丸のほうにあります。

きらら | 雑誌 | 小学館

www.shosetsu-maru.com

世界のハルキ・ムラカミは作中のMMKぶりやエロ描写に比べて本人の顔写真が素敵ですが(棒 この人も相当枯れてるので、作中では女子大生やら会社を乗り回すやり手不動産会社女性社長と人生を謳歌しまくるのですが、この貌でホントそんなもてんのかとやっかみました。が、下記、直木賞作出した岩波のサイトに載ってる若い頃の写真だとほんとにもてそうです。

佐藤正午 小説家の四季 | web岩波

最初は緊張感があるんですが、途中から、作者がラクしてしまい、主人公を追い込まなくなったので、それで弛緩した感があります。実際の事件をモデルにしてませんと過剰なくらい言ってるんですが、実際のそんな事件を思い出せないです。世田谷弁護士一家じゃないみたいですし。バーの経営者一家失踪事件て、なんだろう。

「ほえ」「ほえ」「ぬまもと」「ぬもとです」の主人公が、裏通りの倉田健次郎と会話する場面は、堂場瞬一なら書けるだろうけれど、書けるなら堂場瞬一並みの多作作家になれてるよな、と思う通り、迂回、回避のあげく主人公をぬるま湯につからせてしまったので、緊張感がなくなって、それで小説がツマラ以下略

最初の、零落したたらしが、デリの運転手やってるという設定はよかったと思います。合法化される前の話か後の話か知りませんが、くるま転がす仕事の中では、いちばん身元証明とかもろもろがうるさくないそうなので。北大ということで、東直己のススキノ探偵シリーズで、映画にもなった作品に出てくる、北大崩れのポン引き思い出しました。それだから冒頭いきなりボコられるのも臨場感あってそれなりに分かったのですが、なんだろうなあ。

商人宿に逗留して原稿書くあたりで、なんだこの西村賢太の出来損ないみたいな貧乏自慢は、と思い、その後東京中野で衣食住が保証され、金銭面の不安もなくなって、しかしセックス面で魅力的な女性キャラが激減して、そのあたりで、上巻で人妻と年下やりおのセックスシーンを延々描いたその出会いのくだりが、作家が上巻依存していた女子大生の友人に手を出すくだりのミラー構成だったと分かり、しかしそれで魔術的リアリズムが深まるということが全然ないんですね。冒頭あった緊張感は、さいごまで戻らない。現実に存在しえないドーナツチェーンの店員あっちゃんみたいな色気も消失して枯れたまま。鳩の謎も解明されませんが、作者がどう関わったかという、ぜんぜん興味持てない独自のこだわりだけ縷々語られます。ブログみたい。その質問は受けつけない。

上巻頁349、「手まぜ」という言葉は「手遊び」「手慰み」の意味だとあります。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

まりこさんとセックルした代償も分からない。その後出てこないので。

この小説は小説家が主人公で、花沢健吾アイアムアヒーローみたいなもんだと思ったのですが、どちらも小学館か。羽田圭介のゾンビ小説もそんなんだった気がしますがどうでしょうか。出来れば小説家主人公でない話からこの人の本を読めればよかったのですが、まあそういうわけにもいかずと。この人の本をまた読むかは未定です。もっと若い時に書かれた、若い主人公が女性といちゃつく話なら読めそうにも思います。この話は後半、新規登場女性はジェンダーフリーですが、それ以前に知り合った見えない女性の比重が増して、やっぱしたらしだからでしょうが、こんなに女性に気にかけてもらっていいな、と思えます。この公務員志望のベビーシッターの今後の男運が心配。以上