1966年創文社より刊行が最初の版とのこと。装幀…中垣信夫 解説…三宅修
町田市立国際版画美術館の畦地梅太郎展を見て、『山の眼玉』を読んで、これもついでに借りて読みました。版画の山男シリーズには、こどもたちとのカットが多数あるのですが、本書には、成長した大人の息子たちと家族で山行する話が縷々含まれていて、こういうことかと思い至りました。へー、いいなーと。そういうの、ちょっと三浦雄一郎以外で考えたことなかったです。
女性にすぐ目が行く記述が多く、それを額面通り取ると、晩年の金子光晴のようなエロジジイとしかとられかねないので、現在だともう少し枯れた感じを前面に押し出したほうがよいと思いました。山小屋で、若い女性と相部屋で一晩過ごす場面は、実は私もむかしドミトリーで似たような経験をしているので、非常にいきぐるしい、あの一夜を思い出しました。
歳をとってからの登山というふうに書いた話が多く(文中でイニシャルになってる同行者が、解説でばらされたりしてます)ので、最後の話の下記がじんと来たりします。
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わたしはその電車に乗るのだった。改札口をはいるとき、若い駅員がわたしの大きなリュックを見て、また来年も来て下さいといった。山の入口の駅員の心がまえが、なんだか暖かくわたしの胸に伝わる気がした。わたしはうれしかった。
以上