「工作 黒金星ブラック・ヴィーナスと呼ばれた男」(原題:공작)"The Spy Gone North" 劇場鑑賞

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https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/5/55/The_Spy_Gone_North_%28p2%29.jpg現実にゲップが出ていて、韓国映画はしばらくいいやという気持ちで、この映画が韓国映画梁山泊シネマートで高得点を叩き出していることは知っていたのですが、まあいいやと思ってました。しかし、シネマリンで思いがけずクムジャムンジャワパギョルを見て、洗われたというか、韓国映画の辟易する点にだけ拘泥していても仕方ないと、気持ちを新たにしました。でもそれだけですぐ何かを見に行くということはなく、下高井戸で黒沢清監督映画「前田敦子ウズベキスタンに置いてみたらガングロコギャルをケニアのマサイ族に預けた10年前の失敗番組より遥かに面白かった、彼女はガッツがあるから」をみんければならんの境地になって、ついでに見たです。

隣の老婆は寝てました。けっこう混んでたのですが、けっこう寝てたと思います。私は寝ませんでしたが。主演男優が、名刺管理ソフトのコマーシャルで「早く言ってよぉ」の人に似てるようになると私も思いました。(レビューを見ると、高花田の元なんとか親方に似てるとの声もあり)北朝鮮の相手方は梅沢富美男に似てると思いました。「チューハイは、レモンサワーとちがうのよ」北朝鮮の、ボンボンくさい赤い貴族くさい軍人は、なんちゅうか、日本の二世議員は、小泉孝太郎とか見ても、すごく謙虚で腰の低い、長老に気に入られるために屈することが出来る人材ばかりなので、あまり似てるキャラが思いつきませんでした。

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 イントロで、第二次世界大戦後の民族分断の悲劇についてハングルで滔々と語る部分の右側の地名が何故か英文で、北と南のコリア以外にも"JAPAN"があるがな、その上の海にもなんか書いたあるがな、というところで画面が切り替わってしまったので、帰宅後必死こいて探しまして、上の画像はその成果です。もう少し右まで劇場では映ってた気がしますし、字の色もちごてた気がするんですが、気がするだけかもしれません。トンヘの英語表記"EAST SEA"を書いてるくらいなら別にいいやと思いました。こういう点が韓国映画を観てて気になって、うんざりしたわけですが(だって左側の黄海はなんも書いてないじゃないですか、左側も"YELLOW SEA"って書けよ)私はフレッシュな気持ちなので、日本は日本海って書くだけなのでと前向きに考えています。

http://www.spotvnews.co.kr/?mod=news&act=articleView&idxno=222857

http://ph.spotvnews.co.kr/news/photo/201806/222857_270613_2659.jpg主戦場が1997年くらいまでの北京なのですが、赤い小型タクシー全盛のはずが三輪車ばっかだったり、この頃まだポピュラーでなかった刀削麺がデカデカ看板になってたりと、かなり違和感があり、エンドロール見ると、ムンジェインサンには習近平サンは北京使わしてくれなかったようで、オール台湾ロケでした。というか、嫌韓流ⅢだかⅡでは台湾人留学生が登場して、台湾がいかに韓国キライか滔々と力説してたのに、時代は変わりますね。乳房をまるだしにしたチマチョゴリの写真ばかり集めたサイトも台湾にあったのに。

安企部の人間がいちように北京をベイジンと呼んでいるので、あれ? 韓国も北京をベイジンと呼ぶようにしたのかしらと思いました。江沢民もジャンゼーミンと呼んでました。ミンは同じで、沢は知りませんが、江はハングルで読むなら、カンナムスタイルのカンですよね。ハングルで呼んでない。しかし後半テレビのニュースが流れる場面ではアナウンサーは北京をプッキョンとハングル読みしてたので、安企部はたぶんCIAとの意思疎通で、英語読み"BEIJING" "JIANGZEMIN"で呼称統一してるんだろうなと推測しました。

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工作 黒金星と呼ばれた男 - Wikipedia

タイトルの「工作」ですが、非常に日本的な漢字熟語の使い方だと思います。中国語だと「しごと」の意味しかないですから、工作。工作人員と書くと、仕事に従事する人。

お仕事です! - Wikipedia

お仕事です!(1) (ビッグコミックス)
 

 たぶんこの柴門ふみの漫画を漢語に訳すと、"工作嘛"になると思う。

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The Spy Gone North - Wikipedia

それで、黒金星も、邦題だとブラックヴィーナスとルビ振ってますが、どうしても中国製トカレフの「ヘイシン(黑星)」のあいだに「金」が入って「ヘイジンシン」って言葉があるような気になってしまう。映画の中では黒金星は一貫してハングル読みで、フックmソンと言ってます。ハングルにはf音はないので(現在は事実上若者は英語単語を使う際f音を発音している)、h音のフッ。

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北風 (2018年電影) - 维基百科,自由的百科全书

だもんで、香港や台湾ではこの映画は「お仕事」の意味の「工作」では公開せず、「北風」とかそんな名前で公開したようです。中国では公開されなかったんだろうな。映画の中で、ヤクソクとかショージキとか言ってるのは、別にこの映画でなくても韓国でよく言ってることで。

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誰も知らなかった南と北の裏の裏の裏

北に潜入した工作員の見た祖国の闇には、驚愕の真実が隠されていたー 

 北京がターミナルというのは、正男の髪切ってた理容師が北京在住の日本人だったことからも分かると思います。私も燕京号で天津行った時、同船に金日成総合大学の学生の在日コリアンがいて、上陸するまではそれなりに会話もしてたのですが、上陸したらすぐ迎えが来て、もうカーテンがビシーッって感じで、すぐどっか行っちゃいました。

この映画では「キタハラ」と言う名前の、總聯関連の華僑という、なんだか分からない北京在住の人がツテを探し求める主人公からむしりとろうと延々日本語で絡んでくるのですが、主人公がそのイルボンマルをぜんぶ理解出来る設定なのが不思議です。分かるのかそんな。彼が売りつけてくる北朝鮮グッズは、東京のマニア向けショップならともかく、北朝鮮の製品を所持しているだけで法に触れたりする韓国人には無理だと思う。それが分からないわけでもないでしょうに(私は分からず、延辺で買った北朝鮮グッズを韓国人に配って皆から突き返された)

平壌の外交車ナンバーが「☆ 360」だったとか、「ハンコをつきなさい」のハングルが「トジャンチクソ」で、トジャンってそういう意味だったんだ、と初めて分かったり、ソニーの録音機だ、と思ったり、このケータイはなんだ? ピッチ?と思ったり、ちょうどブラウン管から液晶への転換が始まった時期であることが、小道具の混在でよく分かる、と思ったりしました。メモはそれくらいかな。

本作の小麦とは違う話でしょうけれど、北朝鮮は、この時代イタリアから一定量輸入していたとかで、えらい人用のパスタのデュラム・セモリナだとか。それを教えてくれた人は、実家に無言電話がかかってくると言っていた。

そう、ヨンビョンですよ。ヨンビョンの描写。コッチェビということばがそのまま耳に聞こえましたが、子どもが人間の腕かなんかに齧りついてませんか。飢餓状態でこんなに死体の山があるんでしょうか。なんだこれ。シュリとかJSAのころは無邪気でよかったですよね。こんなに長期間統一されないとはガッカリにもほどがある。どのつらさげてかつての飢餓状態の再現映像作ったんでしょうか。慢性的な栄養失調で発育不良のまま中高年に達した北朝鮮人を韓国人が中国などで目の当たりにしてたのがまさにこの時代ですが、それで何がどうなったのか。サッカーの北朝鮮代表の立派な体格見るたび、途中で生育が止まったまま老いていった人たちを思い出してしまう時がありますよ。この頃、いちばん中国でそれを見る機会があったはずの韓国人って、徴兵逃れの留学生だったりで、しかも言語も留学費用も距離も違う欧米留学を選択せず、同胞のいる朝鮮族自治州とかでぬくぬくして、在日コリアンが食堂で日本語コミュニティのほうに行くと「イルボンサラムのほうに行くんじゃねーよ、イルボンマルしゃべってんじゃねーよ」と野次飛ばしたりとか。それから二十年経って、ムンジェインは何がしたいんだ? とりあえずそういう糾弾を日本人からはされたくないでしょうが。

当時延辺には閉鎖されたパチンコ屋がありまして、日本に出稼ぎに行った朝鮮族が中国にパチンコを広めようと目論んで、速攻公安に急襲されて完全封鎖でした。ほんま、コッチェビ豆満江越えて中国側に忍びこんで市場でアジュマがためいきつきながらタダ飯あげて、それを冷たい水コップでのみもってガツガツやってる一方で、そんなんばっかで。

この映画の、北京の北朝鮮国家経営レストラン、今では観光名所にもなってるので、映画のとおり、欧米人観光客が訪れてて、しかし過去はあからさまな隠れ蓑の場所で、本業諜報活動という、そのセットは非常によかったです。私は北京で行ったことはありませんが、前にも書きましたが、別の都市で行って、そこは寿司も握ってくれて、職人さんは、帰還船で帰国した帰国者で、帰国する前に寿司職人の修業をしていた人で、だから日本語も完璧に分かるが、まったくそんなそぶりを見せないと、かたわらの人に教えてもらいました。で、そこに韓国人のビジネス団体客が来て、日本食も出すと分かると、酔っぱらって、「ワサビもってこ~い」と、ワサビだけ私にも日本語なので理解出来るのですが、そんなようなことゆってました。

この映画は韓国のウヨサヨ闘争で北朝鮮が漁夫の利を得たりするとかそんなレベルでなく、ただ存続のレーゾンデートルを得るというなんだかなあ映画で、黒金星が国家保安法違反で逮捕された時期と釈放された時期がパククネ政権期とムンジェイン政権誕生期って言いたいんだろうなあ照合して確認はしないけど、と思います。南北モデルの合同広告の場面も、ヨンビョンの演出見た後では、砂を嚙むだけ。キムデジュンデートリャンが誕生した時は、私もすごく感動して興奮しましたし、この映画はそれを追体験させるので、胸が疼くのですが、でも飢餓の場面がなあ。どうしてそれで、性急な統一はすべきでないのまま二十年も経つのかなあ。

禁酒の誓いはどうでもいいですが(着地点を南北統一にすれば死ぬまで断酒出来たのに)金大中大統領誕生の瞬間、安企部の上司が飲むヤケ酒が、朴正煕が愛したシーバス・リーガルなのは、韓国人なら観てて皆気づいてニヤリとするポイントですが、日本人のボクが分かるなんてえらいなあ、自分で自分をほめてやりたい。

与党議員の北京訪問団のひとりが、ムンジェインにくりそつだと思ったのですが、そういうのも、韓国映画を遠ざけてる理由のひとつです。なんていうかなあ、シュリのころにカエレ。以上

【後報】

この映画の通りに南北半島情勢を読み解くと、ここ最近ひんぱんに北朝鮮が飛しょう体を飛ばすのは、韓国が何らかの意図のもとに将軍様(三代目だがクリスチャンではない)に札ビラ積んで依頼してるということになり、ただしそこでジーソミアがなくなることで日本にアタフタしてほしいのではないかと憶測すると、そこまで日本というファクターって半島にとって大きいの?と私としては首をかしげます。だいたい"GSOMIA"をジーソミアって読めないです。前半を「グソー」と読んでしまう。グソーミア。亡国のイージスに出てきたグソーでもいいし、ウチナー口の本来の意味のグソーでもいいですけど、そのグソーと焼酎のキンミヤもしくは醤油の亀甲宮がくっついて"GSOMIA" そのようにしか読めません。

(2019/10/3)