「性奴隷」というキーワードを堂々と出したページの超拡大コピーが、某書店コミックコーナーレジ前に貼ってあったので、それでとりあえず海外翻訳版でも同様なのか確かめただけの感想です。
讀んだのは一巻が九刷。帯の累計70万部。二巻が七刷。帯の累計50万部。装幀者の名前は何故か見つけられず。右のポスター、写真を撮ったらテカっています。恐縮です。①巻②巻の帯が、これと同じ絵で、ポスターは帯のコスプレということです。
GAL × コスプレイヤー
この2人、同一人物!?
超人気コスプレイヤー伊織もえが海夢に変身!!
その着せ替え人形ビスク・ドールは恋をする
コミックス最新④巻 10.25 ON SALE 福田晋一
この被写体になったモデルさんの画像を検索したら、胸を強調した写真が多くありました。自分で考えてテーブルの上に胸を置いてクリームソーダの写真とか撮ってるんですかね。事務所強要…などと冗談を言う前に事務所所属なのかどうかも知りません。個人的に参謀、軍師孔明がいるのかいないのかも知らない。要するに、コスプレというのはそういうことかと思うのですが、乱暴な結論かもしれません。
この漫画の表紙も徐々に胸を強調してってるので、それなら宣材も胸を強調すれば女性から厳しい目を向けられるかもしれないし、向けられないかもしれない。どちらかになると思いました。
その着せ替え人形は恋をする - ヤングガンガン -SQUARE ENIX-
ウィキペディアには日本語以外はフランス語と、なぜかブルトン語があります。中韓は勿論、英語もありません。
https://www.kana.fr/produit/sexy-cosplay-doll/
仏語版はアマゾンの洋書では出ませんでした。紀伊國屋の洋書で出た。一巻が25 octobre 2019刊行で、二巻が出たばっかの6 dècembre 2019。三巻は20 mars 2020刊行予定だそうです。 marsは三月でよいのかグーグル翻訳にかけました。
男子高校生の名前が「新菜」と書いて、「あらな」とは読まず、「わかな」と読む。女子高校生の名前は「海夢」と書いて「かいむ」と読まず、「まりん」と読む。本当にキラキラ✨ネームは分からない。「まりん」のどこに「夢」があるのか。梅図かずおの漫画なら333から飛び移るのに。『わたしは真悟』は後半、佐渡島など、工作員による拉致を暗喩した描写が目立った気がしました。でも、いつもの私の記憶違いかもしれないです。
書店レジ横に貼ってあったページ。横線は私が引きました。二巻頁74。一巻二巻同時発売で、一巻巻末の次巻広告もこの見開きです。性奴隷という単語で話題作りをしようとしたわけでもないでしょうし、またその必要もないと思います。
あたしちゃんと…性奴隷雫たんになれてる…?
はい! 喜多川さんは立派な性奴隷雫たんです!
英語版やほかの言語はないようで、見つかった仏語版だけ。「よつばと!」は世界13か国語に訳されてますが、この漫画はとりあえずフラ語から。
世界中に響く「すっげーおもしろかった!!」13の言語を越えて伝わる、日本のなにか。 - Stantsiya_Iriya
性奴隷をグーグル翻訳で仏語にすると、"ESCLAVE SEXUELLE"で、原書と同じ頁に、その単語がちゃんと書いてあります。
J'Ai VRAiMENT PLI DEVENiR... ...SHiZUKU, L'ESCLAVE SEXUELLE?
OUi!TU FAiS UNE MAGNiFiQUE ESCLAVE SEXUELLE, KiTAGAWA!
フランス語がルビを振る慣習のない言語かどうか知りませんが、「雫たん性奴隷」と書いてあるように読めます。フランスに、さん付けに相当する習慣はなさそうで、しかし、"MARiN"でなくファミリーネームの"KiTAGAWA"で呼んでいるのはフランス語的にはヘンな気もします。でも同級生をファミリーネームで呼ぶと、ジャポンコミックっぽい響きになるのでウケるとか、そういう翻訳上のお約束なのかなあと勝手に推察しました。
ここは過激な単語とピュアな登場人物の心の動きのミスマッチを楽しむ場面ですので、重箱の隅をつついて目くじら立てるなと、邦人なら思うと思います。フランス人がどう思うかは知らない。
一巻頁59が当該単語初登場。
以前も『らんま1/2』のフランス語版とか見せてもらったことがあるのですが、こんなに活字が小さかった覚えがないです。判型は同じB6版なので、とても読みにくい。上の見開きですら字が小さいので、普通のコマのセリフがもっと字が小さいのは、頭では理解出来るのですが、これでいいのか。目が疲れそう。
一巻頁61にも当該単語が出ます。書き文字は、消さずに、横にさらにアルファベットの字をつけてるんですね。
一巻頁65で、主人公はヒロインに、こういったゲームはプレイヤーに年齢制限があるだろうと尋ねるのですが、聞いてないフリをされます。18禁のゲームのコスプレを18歳以下がするケースって、現実にはあるものなんですかね。そしてそれは主催者側としてはどうなのか。二巻のあとがきで、取材したコスプレイベントの規定に反したストーリー展開(体調不良の際スタッフを呼ばない)なので、作中にそのイベント名を出してないとあります。なるほどと思いました。うまいこと言う。
二巻頁176を見ると、ヒロインは母親を早くになくし、父親と二人暮らしだったが、高校入学と同時期に父親は単身赴任とあります。特にそれと彼女の凌辱エロゲ好きとの関連は語られませんが、別に。それより同二巻頁168など、主人公のいとこの女性のデッサンがちょくちょく狂ってる感じが気になります。
一巻の頁119などは、ほんとうに気を許さないとこういうふうにはならないだろうので、主人公よかったですねと思いました。でもキモオタでないのに教室ではいつもひとりとか、なかなかありえないので、そこはやはりフィクションだと思います。新入社員や新しいバイトの人間がいつもひとりだったりする場合、うちとけたほうがいいので、誰かがほぐそうと話しかけると、えてして彼の性格上の欠点がすぐ分かったりします。ファッションについて、伝統工芸の人間がこんな女性の被服に詳しいものかとクエスチョンマークがつくのも、ご愛嬌だと思います。男所帯だし、普通は分からないと思います。ストーリーの潤滑な進行のためリアリティーが犠牲になった。ご都合主義と言い切ってしまってはアレなので、ご愛嬌ということにします。
一巻の裏表紙。
二巻の裏表紙。原書はここでも、冒頭の単語を書いているのですが、仏語版の二巻は、一巻と同じ文句に変更してます。本文では"ESCLAVE SEXUELLE"を堂々と書いているのですが、裏表紙にまでは書かなかった。
なんとなくね、日本鬼子を「ひのもとおにこ」と呼ぶみたいな日本の遊びが、実際どこまで通用するのか、結局面白がってる相手はごく少数で、閉じた遊びではないのかみたいなところに関心があったので、翻訳をちらっと見たですが、もういいと思います。三巻四巻も原書は大人買いというかまあ買ってあるのですが、ビニルもはがしておらず、仏語版をこれ以上買う気もありません。某書店のレジ前の拡大コピーにしてやられたと思うだけです。以上
【後報】
英語版のウィキペディアが出来ていて、英語版は、今年四月刊行開始予定とのことでした。
My Dress-Up Darling - Wikipedia
マイドレスアップダーリン、という英題のほうが、原題より愛がある気がします。でもこれだと、ヒロインが複数に増えてからの展開(三巻以降)をどうするのか。キリスト教は一夫一妻なのに。日本もですが。
(2020/2/4)
【後報】
フランス文学の学究の徒(大学講師)の人にこの本送ったら、翻訳について感想をもらい、書いてよしとのことでした。
(1)
「性奴隷」
「esclave sexuelle(=sex slave)」
そのままな点に関して特になし。
(2)
『聖ヌルヌル女学園 お嬢様は恥辱倶楽部 ハレンチミラクルライフ2』
『Sexy Miracle Life 2 - L'Accademie pour filles la Vierge fidele et Les
demoiselles du Club de masochisme』
「ヌルヌル」という擬音は、翻訳をあきらめているのではないかとのこと。「恥辱」がマゾヒズムになり、「聖」は"St."でよいのにと私は思ってましたが、「The Academy for Girls the Faithful Virgin」貞節な処女の女学校なんだとか。後者は気付きませんでした。
(3)
ここからはまったく私は気づけません。
「マジで可愛すぎて しんどい!!」→「Elle est top choupi, je meure !!」
<以下感想の原文>
「可愛い」の類はフランス語でも口語では山ほどあります(はやりすたりも多い)。
辞書的にはふつう「mignon(=cute)」あたりだけど、ここで使われている「choupi」は標準の辞書には載っていないんじゃないかな。
「しんどい」の「je meure(=I'm dying)」は、まあこんなところでしょうか。
でも「死にそう」と「しんどい」はちょっと区別したい。
確かに、「死ぬほど疲れた」"累死我了"のような表現と、ここの「しんどい」は違うので、「重い」「ヘビー」"heavy", "厉害"のように訳した方がいいかなと、私もこの意見を聞いて思いました。
(4)
「布団 敷きっぱ ウケる」→「Ton lit est tout defait, trop marrant !」
<以下感想の原文>
「ベッドがすっかり乱れている」という意の訳になっていて、「起きてから畳まずに敷きっぱなし」という意味になっていません。
おそらく布団を毎日敷いたり畳んだりするという習慣がないからかも。
まあこれは翻訳の限界というよりも、註を増やせばいくらでもなんとかなる範囲ではありますが。
「ウケる」の「trop marrant」は「面白すぎる」の意なので、英語だと「too funny」くらいか。
いまどきの口調だと「ウケるんですけど」などといいそうだけど、「…ですけど」のようなニュアンスはほぼ無くなってしまうだろうね。
ここを読んで、仏訳した人も、布団をたたむという習慣について、認識がないのかもしれないなと思いました。昨日、私も改めて、日本と中国の布団のたたみ方のちがいについて話したばかり。「ウケる」は"笑死我"かな?
(2020/2/12)