吉田類の『酒は人の上に人を造らず』に出てくる坂崎重盛という人の『東京煮込み横丁評判記』に出てくる本。
装幀=吉田浩美・吉田篤弘 初出はオール讀物の平成十八年二月号、五月号、八月号、十一月号、平成十九年三月号、六月号
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アルフィーの人のオジさんが紹介してるのは神楽坂を描いた第二話で、なにげなく文房具屋の固有名詞などが並んでいるのが、あの店は文人御用達のオリジナル原稿用紙調達の店、あの店も、などなど、作者が省略した「説明」を、野暮を承知でまきちらして、どうでえ、ってなもんですので、それを全編やって、注釈付きで出したら、さぞすごいものになると思いますが、私もそうですが、もうウェブの上書きになれた世代以降の人は、それが出来ないと思います。
ここまでの情報でオワリ、が出来ない。絶えず書き足しや修正があってしかるものだと思ってしまう。だから電子版なら出来るかもしれないし、しかしそれが金になるとは、ビジネスモデル構築や旗振りやヒントや商才のまるでない私には、あんまし思えなかったりしますが、どうなんだろう。天安門から駆けあがって、GDP世界二位に達した中国とまるで無縁の世界に生き続ける私。
最初が吉祥寺で、次が神楽坂。その次は趣向を変えて金沢で、扱うアートも伝統芸能。次は神戸。次が一関。次がススキノ。いずれもジャズの匂いが漂う、固有名詞が多かったりそうでもなかったりの話です。街頭を歩き出す描写から始まる話が多い。
私はこういうのを読んで、「いいんだよなあ、これだよ」とか思わない人間なので、眠気でガクッとなりながら読了しましたが、こういう世界に息づく人たちがいるのは理解出来ます。何年か前に半村良の晩年の水商売もの読みましたが、あれと違って、村松版は動きや事件がないです。それが作家の味。
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以上