「あなたの名前が呼べたなら」"SIR" 劇場鑑賞

下高井戸も逃したので、もう見れないかなと思ったのですが、厚木で見れました。サービスデーで観客五人。時期も悪いですが、厚木、大丈夫かな。正直、これはあきらめていて、「シークレット・スーパースター」と「ヒンディー・ミディアム」が見れたから、三部作コンプリートしなくてもよいやと思ってました。昼メロのような話と聞いてましたし。

で、実際見たら、よい意味で、抑制のきいた昼メロでした。大人の関係ですので、一線を越えたかどうかは観客の判断に委ねられています。

男性は、冒頭で婚約者から婚約破棄されたおぼっちゃん。兄の急死に伴ってアメリカ帰り。建設業の父の後を継ぐ修業をしているが、どうも甘いところがあるという。婚約破棄は相手から。相手が浮気。この男性が、お金を持っていて、やさしいところ以外、どうにも押しが弱くてダメで、これは女性から嫌われるタイプ、きもがられるタイプではないかと思いました。でも監督は女性。この映画の日本上映は文化村ル・シネマが皮きりで、昼メロ路線ということなので、ふんふんと思ってたのですが、危険な匂いがない男を持って来てしまったので、今の日本の、危険なイケメンに凡庸なJKがやさしくされる映画(に、予告を見ると見えるのですが、ちがうかもしれません。スーパーJKかもしれない)ばっかりの状況に、風穴を開けるどころか、返り討ちに遭ってしまったのかと思います。

インド、ムンバイ。ラトナは裕福なアシュヴィンに仕える住み込みの家政婦。近くて遠い二人の世界が交差した時――。

あなたの名前を呼べたなら - Wikipedia

Monsieur (film, 2018) — Wikipédia

インド映画で、せりふはヒンディー語と英語なのですが(あと、田舎はマラーティー語を話してるそうですが、違いがわからへんだ)フランスの基金の助成をおおいに受けていて、ウィキペディアも日本語とフランス語にリンクがないありさまです。クレジットもぜんぶ英語なのにフランス合作で、タイトルが英語で「サー」なのに、公式予告編はフランス語の「モンシェール」という。

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日本語版トレイラー。

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フランス語版トレイラー。

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英語版トレイラーはムンバイの映画フェスから。ヒンディー語のこの映画タイトルを探したのですが、見つかりませんでした。「旦那」とよく訳される、サーヒブがグーグル翻訳で出ますが、それだと意味が違って来るんだろうな。映画の中では、ムンバイなので、ナマスカールでなくナマステで、それで、「ナマステ、サー」とか挨拶してます。香港だったら「レイホウ、サー」上海だったら「ノンホウ、サー」になるんだろうか。「ニーハオ、サー」は想像出来ません。

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イタリア語吹き替え版トレイラー。インド人がベリッシモとかブオナセーラとか言って…はいませんでしたが、ラ・ヴィータとかチャオとかは言ってた。ナマステがチャオになってる。

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オランダ語版トレイラー。予告編はこんだけありますが、ウィキペディアは連携のないフランス語と日本語だけ。

接客業の方は、今度英語のお客が来た時、サンキュー、のあとに、サーをつけて反応を見ると面白いですよ。アメリカ人は戸惑ったり無視したりします(黒人含め)インド人はニヤッとして「ありがとう」とか日本語で返して来る。ミスタル、とか舌を巻くインド英語の真似でミスターを発音するとアレですが、これはスマート。

ヒロインは、19歳の時、持参金が要らないと相手に言われたので親が飛びついて嫁に行かせたら、相手が四ヶ月で死んでしまったという寡婦。こういう場合、インドでは、もしくはインドのその地方では、実家に帰らず婚家で穀潰しとなって、非常にいずらい、三杯目にはそっと出し、の、その後の長い人生を送らざるを得なくなるらしいのですが、口減らしのため、都会ですみこみメイドとして働けることになり、気兼ねせず暮せてラッキー、田舎の連中は仕送りさせて搾取することが出来てラッキー、の、Win-Win關係で、それで"Sir"との関係が接近してビミョーになって、という、お笑い漫画天国のような映画でした。

いちおう、裁縫の技術を学んで、一人立ちして自分で金を稼いで、対等の関係になって、それで、という女性的なテーマがあるので、単なる昼メロでは大義名分が立たない人もご満悦です。またこのヒロインが、すぐ身分を見破られるんですよね。着てるものが安いとすぐ分かるのだろうか。「パラサイト」では、半地下の家族は、共通に、ニオうという設定でしたが、ヒロインの場合、なんだろう。高級ブティックでは、客とみなされず、店員は警備員に、入ってこないようちゃんとみはっててちょうだい、と怒ります。直接会話ですらない。警備員のことをウォッチマンと呼ぶと知りました。マーベルコミックの映画化ではなく。

歯列矯正を受けてるかどうかで、インド人の貧富は或る程度分かるかな、とかねがね思っているのですが、さてどうでしょう。それで、笑い顔に差がつく。回りがみな歯並びが悪い環境では気にしないで笑うが、周りがみんな白くてピカピカの歯だと、大口開けて笑えなくなる。

おぼっちゃんにバーで話しかけてくる女は、まあ、本職なのかお小遣い目当てなのか、という感じの女性なんだと思いました。そうでないとバーにはいないだろうと。

ガネーシャのお祭りで、海浜都市ムンバイなので、ガネーシャを海に沈める場面があり、神様って、なんでも水辺だと沈めて清めるものなのかと思いました。「太陽がいっぱい」のイタリアの黒いマリア像とか、媽祖像とか、茅ヶ崎の、神輿で突入する浜降り祭とか、チベット東部の、なぜか漢族の治水の神様、二郎神君を川に沈めるお祭りとか。近所の不動明王も、洪水のとき上流から流れて来たのを拾ってまつったらしいです。

bunkamura時点のレビューで、同じ場面のはずなのに、カットによって人物の位置関係が入れ替わっていて、これが長編デビューの女性監督なので、予算の関係で撮りなおせなかったのかも知れないが、そういった、少々粗い点が気になるみたいな文章があったのですが、どこか分かりませんでした。私の目は節穴。

これで三部作がぜんぶ見れたので、よかったです。「幸福路のチー」は見れそうにない。今夜阿佐谷にいくつもりもないですし、そうなるとあとはもう宇都宮と高崎しかない。以上