『 ゴールデンカムイ 20 』(ヤングジャンプコミックス) 読了

 ヤンジャン2019年13~17号,、20号〜23号、25号、26号まで「好評連載」されたものを収録。19巻の途中で元号から西暦へ華麗なるこよみ変更してますので、この巻は西暦表記です。Cover design takashi suenaga  カバー外すと「フフト」というニヴフの魚の皮で作った服を着たアシパ。 

ゴールデンカムイ 20 (ヤングジャンプコミックス)

ゴールデンカムイ 20 (ヤングジャンプコミックス)

 

 カバー折文句
カント オワ ヤク サ ノ アランケ シネ カ イサ
【天から役目なしに降ろされた物はひとつもない】

 この巻は第七師団のアイヌ人兵士が登場し、盲目のガンマン都丹庵士と死闘を繰り広げるので、その辺検索してみると、モデルの実在アイヌ人兵士とかさくさく出ます。八甲田山死の行軍捜索に出動したアイヌ人部隊のひとりで、有古というあまり一般的でない苗字で、しかしアイヌ名はイポテと書かれてるので、誰しも検索したくなると思います。結果、似た名前の実在兵士は出るのですが、同じ苗字ではなく、同じ苗字も出ますが、現存してなさそうという個人のブログの考察が読めます。洞窟での戦いや、アヴァランチ心理戦など、この期に及んで新キャラ大活躍。

主人公の杉元一行は、ロシア領サハリンで北海道帰還を画策するも、尾形の負傷をどうしようというところで、日露戦争帰りのロシア人医師が、捨てキャラなのに、読者をあっといわせるストーリーのケレンの都合上、光り輝いてます。

それからナゾのニヴフの民話。オシリに目を描くなんて初めて聞きました。女性が性器を毛むくじゃらの口に見立ててオバケに見せ、「食べちゃうぞ~」と云うとオバケが逃げる日本の民話は聞いたことあります。

この漫画もドクタースランプ以降の漫画ですので、登場人物の衣服は着た切りのアイコン衣装というわけにもいかず、縷々着替えたり髪形替えたりするのですが、不死身の杉元だけは第三部の丈太郎気取りでなかなか服装が変わらず、この巻で初めて(? 忘れてるかも)帽子をニヴフの魚の皮の帽子にします。なかなかお似合い。ただ、こういう獣系の帽子って、内地に持って帰ると、湿気の関係で、急に匂い出すんですよね。なめしが悪いのかもしれないけれど、乾燥した現地ではにおわないのだから、やはり湿度の関係ではないかと睨んでいます。

それから、鯉登少尉のヤンチャ時代の回想が書かれます。明治時代の誘拐捜査という、推理小説のノリ。薩摩弁はなに言ってっか分かんないのですが、特に訳はつきません。薩摩弁監修が巻末の参考・協力一覧に加わっています。流れで理解しろという。「がられもはん」だけカッコがついて、意味が書いてあります。"没人管我"

頁162

兄さんよな息子んなれじ申し訳あいもはん 

頁163

アタイは生まれっこんかったもんち考っくいやんせ

尾形と鯉登が仲悪いのは前にも伏線で出てましたが、21世紀のまんがって、それが登場人物たちの運命まで左右してしまうんですね。現実を反映。ウマが合わない同士で組織は作れない。

尾形が鯉登を侮蔑して使う「ボンボン」のロシア語"барчонок"は、語形変化してることもあり、かなりネットを賑わしたことが現時点での検索でも分かりました。中国語だと、"秧子"でしょうか、"令郎"でしょうか。"笨公子"、"傻公子"くらい直球でないと私は分かりません。

以上