『はじめてのラテン語』(講談社現代新書)読みかけ

ローズマリ・サトクリフのローマンブリテン小説を一冊読んで、蛮族兵士の多い辺境のローマ守備隊の話でしたので、なんとなく、ラテン語おもしろそう、と思い、そういえば一冊積ん読であったなと思い、取り出しました。春の朧月夜にぱらぱらめくろうかと。

はじめてのラテン語 (講談社現代新書)

はじめてのラテン語 (講談社現代新書)

  • 作者:大西 英文
  • 発売日: 1997/04/18
  • メディア: 新書
 

 カバーデザイン:中島英樹

 ラテン語は横書きなので、本書は横書きの、左開きの本です。

はじめてのラテン語 (講談社現代新書)

はじめてのラテン語 (講談社現代新書)

 

 言語の本ですので、それは何故そうなったか、なんて書いてないです。ただそうなった、それだけ。文法等等、なべてそういうもの。考えるな、感じるんだ。ローマの言葉なのにローマ語でなくラテン語なのは、ローマ発祥の地がシニョーリラツィオ周辺で、むかしはラティーナと呼ばれていて、それだからラテン語だそうです。ロムルスとレムスで、拡大して、パクスロマーナのローマ帝国になっても、ラテン語。のちにルーマニアからスペインまでロマンス諸語になっても(中核はフランス)ラテン語ラテン語。ラテンということばが残ったほかの例で、高校世界史だと、ラティフンディウムがすぐ思いつきます。

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で、ラテン語がイタリア語になるにつれて、キケロのはっちょんが、訛ってチチェローネ(Cicerone)になって、意味が「おしゃべりな案内人」になるとか、他の言語でもラテン語を読むとき、その言語に引き摺られてしまい、20世紀には、それを是正しようとする動きが澎湃と起こり、しかし例えばフランスでは、その動きへのカウンターとして、"Amis de la prononciation françcaise du latin"(ラテン語のフランス語式発音愛好者の会)が設立されたりもしたそうです。アミドゥラプロノンシアシオーンフランセーズデュラテン。こないだ読んだチップス先生の、キケロのくだりを思い出しました。チップス先生もラテン語教師。

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ラテン語に"w"という文字はないそうで、「ウ」は"v"か"u"であらわすとのこと。"u"は分かりますが、"v"は「ヴ」と読んでしまいそうで、そういう、発音面で、ラテン語はシロウトが齧っただけなのかそうでないのかが分かるそうです。森魚うがいが『ウィタ・セックスアリス』と書いたのはエラい! と作者はホメていて、"Quo vadis"がクォ・ヴァディスなのはスルーしています。聞き流すチカラ。

で、ラテン語は文章小文字から書いてもいいそうです。大文字小文字はうるさくない。"X"は英語ふうにザブングルとかの「ザ」と読むのではなく「クサ」と読むのだそうで、そうすると、シラクサとか、ソクラテスの女房で世界三大悪妻のひとりクサンチッペ(もうひとりはロポコワ。誰のパートナーだったか忘れました。もうひとりも忘れた)も"X"なのかなあと思いました。でもクサンチッペはローマ人でなくギリシャ人だし、シラクサギリシャの植民都市が起源だそうです。しかも"siracusa"だし。

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本書では、ラテン語が出来ると、"Vox populi vox dei."(民の声は神の声)「ウォークスポプリー、ウォークスディー」や、"Jacta est alea."(賽は投げられた)「ヤクタエストアーレア」なんかが英語に混ざっても分かるのでお得ですよとしています。一昨日初めてビヨンセのクレイジーインラブの歌詞読みながら歌聴きましたが、まー聞き取れない聞き取れない。黒人の速い英語にラテン語が混ざったら、とんでもないでしょうね。

そして本書は、毛沢東をけざわひがし、否、もうたくとうと読むより、マオツォトンと読むほうがカッコいいでしょ、でもカステラはカスティーリャと呼ばなくてもいいよ、カスティーリャをカステラとも呼ばんでええ、と書いてます。ビデオ買って。後半は分かりますが、前半は、漢字はその地域の読み方でよいという漢字文化圏特有の事情を無視してますので、ちがいます。孔子を江戸時代は「くじ」とも読んでいたが、現代ではコンフュシャス、否、「こうし」で統一されている、という話なら近いのかな。中華人民共和国も、孔子学院を「コンズがくいん」と嫁とは強制してないし。

ぱらぱら読みなのでとりあえずここまでです。あと、ラテン語は"k"のつく単語がふたつしかなくて、「ついたち」を意味する"Kalendae"「カレンダエ」と、スキピオハンニバルの戦い、象によるピレネー越えで有名なポエニ戦争でローマがほろぼしたカルタゴにしか使わないそうで、ぜんぜん関係ないですが、北京語に「キ」「ギ」の発音がないのを思い出しました。「チ」や「クイ」「カ」はあるが、「キ」はない。ロシア人は中国人をキタイスキーと呼んでいるのに(契丹から)変な話。ここまで。