『満月と近鉄』"A full moon and Kintetsu Railway"(角川文庫)読了

 カバーイラスト/中島梨絵 カバーデザイン/坂詰佳苗

満月と近鉄 (角川文庫)

満月と近鉄 (角川文庫)

 

 はてなブログのトップページに、森美登美彦(吉田講堂的奇縁なのか、この人ははてなブログを持っている)の下記ブログが出ていた時があり、それでなんとなく読んでみた本です。

tomio.hatenablog.com

図書館で著者名検索すると、星海社版『ランボー 怒りの改新』が出て、鯨統一郎というか田中啓文というかなタイトルだったので、それは借りずにこっちを書店で買ったのですが、同じ本の改題文庫化でした。ウェブに公開済の、作者と森美登美彦の対談が文庫化にあたってサンビストラックとして収められていますが、よく分かりません。対談の司会は星海社の平林緑萌という編集者で、この編集者が、コミケに出店したプロ作家主体の文芸同人誌に掲載された、プロデビュー前の著者の作品に目をつけ、かきくどいて書き下ろし作品も含めて活字出版したそうです。さすが『サトコとナダ』を出したメフィストの某の出版社。コミケで売れそうなまんが同人作家に声をかける大手出版社編集というルーティンワークが、文芸でも蠢動したということかなと思いました。

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「を」生んだ、でなく、「が」生んだ、となってるあたりが、やっぱり鯨統一郎というか田中啓文というか。ヨコジュンへのオマージュではないと思います。ラストに秀吉が「説明は、ない」とのたまうオチでもなし。先に仁木英之の解説から読み始めてしまい、解説に登場する、藤木TDCの随筆に出て来そうな殺伐とした西大寺のスナックのオネーサンが、冒頭の青春ジュブナイル小説ではJK不思議ちゃんの森ガールとして「サン、ソナタは山で生㌔」とかやってるので、時の流れの残酷さに目頭が熱くなってしまいました。うそ。

解説で僕僕先生が原稿しかない状態で野に埋もれた覆面作家を発掘するくだりを読みながら、この展開は何かで読んだぞとあやしみ、つい最近、6月5日発売のビッグコミックオリジナル中森明夫が書いた素九鬼子発見秘話そのまんまやんか、なあ、ヒー、と思いました。中森明夫が見えない援護射撃書いたのか。見えない大学本舗は浅羽通明

素九鬼子 - Wikipedia

由起しげ子 - Wikipedia

 明石家さんまの関西弁は奈良弁で、オーソドックスな大阪弁とは違うとよく言われますが、おおかたの関東人同様、私もそう言われてもまったくぴんと来ません。和歌山の関西弁のように、「ら」と「だ」の区別がつかないとか、三重の関西弁のように、名古屋文化圏なのに関西弁とか、そういうのなら分かる気もするのですが、さんまの関西弁というだけで、それと漫才師の関西弁はちがうけれど、どこがどうと言われると、なあ、ヒー、分かりません。そんなことを、最初の鹿せんべい小説読みながら考えました。近畿キッズの関西弁も大阪弁と違う奈良弁なんだろうか、そうだとしても、この小説の登場人物のせりふ同様、違いは分からないよ、と。ヒー、分からないんだ。ヒー。

その次の『ランボー 怒りの改新』は、西島大介ディエンビエンフーでも読んだのかと少し思いました。西島大介も、私の模造記憶のなかでは京都っぽい漫画家のイメージなのですが、今検索すると、東京出身で広島在住だそうで、京都関係なかった。ランボーなのにカーツ大佐が出てくるところがミソだと思います。

私は『湯殿山麓呪い村』を『生駒山麓呪い村』と間違えて覚えていて、後半の二つの話はそんな感じでした。『満月と近鉄』も『満月と献血』と言い間違える時があります。ヒー、ほんまかそれ。さらにいうと『高野聖』が『生駒聖』になった感じ。佐伯さんという女性も、いろいろ担わされて大変だなあと。サエキけんぞうとは関係ないんでしょうが、主人公は、鹿にされてしまうところをあやうく難を逃れたのかもしれない。

帯の後ろは、カナブン、否カドブンの告知。

笑い飯・西田幸治さんがハマった! 謎多き作家の異色短篇集『満月と近鉄』「著者のイケてない臭にシンパシーを感じました」 | 「レビュー(本・小説)」 | カドブン

www.kadokawa.co.jp

作者が平野啓一郎でも綿矢りさでもいいと思いました。奈良の中高一貫校は分からないです。初芝橋本は、和歌山か。

以上